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第12話 力の無い者

「……そういえば奈々、食費大丈夫か?」


「え?」


 俺は2人と帰路を辿りながらふと頭に浮かんだ疑問について訊いてみる。


「その、奈々に費やした食費、幾らだ?」


「あ……これくらい」


 奈々は俺に手の平をかざし、食費に費やした桁数を表す。

 指が5本全て伸びている。つまりは5桁、最低でも1万円は恐らく使ったのだろう。


「……頑張って返します」


「い、いいんだよ。まだ私今月の分のお金あるから」


「いやいや万超えの額消費させたら罪悪感10倍だ。流石に返すって」


「いやいいよ。隼人君だって治療してたんだし仕方がないよ」


「大丈夫だ。学生保険あるから金が入る。そこから返す」


「で、でもそのお金は」


 そう俺達が言い合っていると、


「はやと! なな! お腹空いた!」


 先頭を歩いていた水音が俺達に食事を要求してきた。


「あ、ってもう昼か。うっ、また食費が」


 もうそろそろバイトやんなきゃか? そうでもしないと金がもたないぞ。

 奈々への返済、食費、もうこれ死ぬかもな。


「ああもう! 後だ後だ! このまま買い物行こう」


 俺が面倒くさい事は後で考えると決めた時だった。


「水音、それじゃあ何がいい?」


「お肉! お肉が……」


 水音の動きが止まる。

 そして表情をガラッと変え、辺りを見回しだす。


「み、水音?」


 一体何を……待てよ、確か前にもこんな事が。


「水音ちゃん一体どうしたの?」


 奈々が心配をする。

 しかし俺の耳には奈々の言葉は入ってきていなかった。


 何かに反応しているんだ。

 何だ? モンスターもうやったぞ。それ以外に何が。


 その瞬間、


「くる!」


 水音の叫びと同時に、俺達の背後に衝撃が走った。


「なっ⁉︎」


 振り返ると、そこにはぐちゃぐちゃになった自動車と思わしきものがあった。


 いや、飛んできたのか?


「また!」


 俺は空を見上げる。

 その空には何台もの自動車が飛んでおり、落下してきていた。


 周りの人達は悲鳴を上げながらその場から逃げ去ろうとする。

 しかし当然間に合う筈がない。


「まずい、避けられない! クッ」


 俺は落ちてくる瞬間目を瞑り、死を覚悟する。

 だが落ちてきた車はギリギリ俺に当たらずに真横に落ちる。


「な、何なんだよ……2人とも無事か?」


「うん。水音ちゃんも何とか」


「そうか……ッ⁉︎」


 しかし、周りは無事ではなかった。


 落ちてきた車に脚を潰された人や、下敷きになった人、怯える人。既に大混乱になっていた。


「……嘘だろ」


「隼人君!」


 奈々が俺を呼ぶ。


「いい? 今すぐここから逃げて、出来るだけ遠くに」


「は? 何言ってんだよ。奈々お前は?」


「多分今のは、モンスターの仕業だよ。これ以上被害が出る前に食い止めないと」


「な、何言ってんだよ。1人でか?」


「応援は呼ぶけど、それまで時間を稼ぐ」


「時間稼ぐって……俺も行く」


「ダメ! 隼人君は逃げて! このレベルは尋常じゃない!」


「なら尚更1人なんてダメだ!」


 俺は大声で叫ぶ。


「無茶だ。戦力は多い方がいいだろ。俺だってモンスターとやり合えたんだ。今度だって」


「図に乗らないで! あの時は運が良かっただけで、戦闘訓練も戦闘経験も積んでいない隼人君が来ても」


「けど! もう、もう俺は、何も失いたくないんだ! 奈々まで失いたくない!」


 奈々は俺の言葉に口を噛み締め、手の平を強く握りしめる。


「俺は死なない! だから俺も行かせてくれ!」


「……」


 沈黙が訪れる。そして、奈々は口を開く。


「足手まといだよ」


「え?」


 俺はこの言葉を言われた瞬間、声が出なくなった。


「セイヴァーじゃない隼人駅にもし来られたら、それこそ私が死ぬ可能性が高くなる。隼人君の身勝手な行動で、人が死ぬ。だから邪魔しないで。なんの力も、持っていない、隼人君は、ただの足手まとい。来ないで。私を殺さないで」


 反論が出来なかった。


 足手まとい、その言葉が俺の頭の中でループする。


「……じゃあね。早く逃げて」


 奈々そう言い残し、魔力によって上がっている身体能力で飛び上がっていった。


「……なんだよ。それ」


 俺は拳を握りしめる。

 怒っているのだ。

 奈々ではなく、自分に怒りの矛先を向ける。


「力が無いから、足手まとい……」


 地面に座り込み、膝をつく。


「……力があれば……力さえ、あれば……なんで、俺には……なんにも無いんだ」


 悲鳴が聞こえる中、俺だけが静かに絶望していた。

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