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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生したところで何がありますか

作者: 村本鹿波

勢いで書きました。転生物ははっきり言うと物によって好き嫌い別れます。

 私はこういうものだ。と言った所で誰も何もわからない。この時名刺なり学生証を提示すれば社会的地位が証明されることは間違いないが現在私はそれらを持ち合わせていない。故に私が何者であるか証明できない。敢えて言うなら証明の必要性は皆無なのであっても困る。性別ぐらい判断つくだろうが申した所でさして意味の無いことなのでこれもカット。


 年齢はさほど高くない。けれども低すぎる訳でもない。そこら辺はまあ適当に二十歳前後としよう。


 仕事か、それは覚えていない。忘れたっていいだろ。もう関係ないのだから。


 さて、お気づきの方もいるだろう。いやなに、タイトルで既にお察しではないか。私は死んだ。とりあえず死んだ。ひとまず死んだ。つまるところ死んだのだ。やり残したことは沢山あった。後悔も沢山ある。だがまあ、それなりに楽しく、苦しく、悲しく喜劇な人生を送ったと思う。事実は小説よりも奇なり。私の人生は私のとってはとても可笑しく、飽くことのないものだった。それは断言する。他人からはつまらないものと思われるかもしれないがそんなもの知るか。私の人生だ。私にだけ価値があればいい。


 ここまで私が語ってきたがこれはほんの自己紹介。走馬灯か何か分からないが私は今白亜の空間に居る。

 つまり今までのは


「独り言でそれを誰もいない空間で堂々と言う図だったわけだ。」


 死んだ。たしかに死んだはず。まさかのここは死後の世界なのか。死んでからも意識があるとか何かの拷問か。スパッと終わらせてくれスパッと。死ぬまではいくら苦しんでも構わない。だがその後は別だ。とっとと死にたい。死んでるけど。死んだらそこまで大往生かしょっぱい死に方だろうが人生を歩んだことに違いない。


「どなたかいませんかー? 居ないならここで喉かきむしって死んでもいいですかー? 死んでますけどー。」


 大きな声で呼びかけるが返事はない。それはそうか。仕方ない。私は喉に指をかけた。そして爪を立て喉を引っ掻く。


「……これでも特にないか。よし。」


 私はそれからどんどん力を込めた。少しずつ血が滲み始める。痛い。痛いけどこれで死ねたらと掻きむしる。血が喉をつたるのが分かる。いい感じと笑う。


「あともう少しだな……」

「何がもう少しだ。阿呆。ここまでの奴見たことないわ。」


 ようやくか、きっと家主、いや空間主が来てくれると私の勘が告げていた。やっと人が来たかと思うと目の前に椅子に座る豪華絢爛な人間がいた。男か女かは脳が考えてくれなかった。


「自殺とか狂ってる。こんな綺麗な場所で自殺とかないわ。して、お前ここがどこか分かるか?」

「いえ、さっぱり。興味ないので。」


 小馬鹿にするような表情で訊ねてきたので正直に答える。焦りも困惑もない私の様子に少しばかりムスッとするがすぐに余裕の表情へとなる。


「ふふふ、聞いて驚くが良い。ここは神域。神々が作り、神々が住まう場所。とてもではないが人間が来ることが叶わない場所だ。どうだ凄いだろ。」


 ドヤ顔でこちらを見下しながら言いのける、えーと、この人の発言からすると神でいいのか。自称神? いや、自称もしてないな神様(仮)略してカミカでいいか。


「カミカ。」

「そうだ私は神だ──ちょっと待て、お前のイントネーションちょっと可笑しくないか?」

「いえ、そんなことありませんよカミカ様。」

「貴様ちょっと殴らせろ。なんだ私は神だが、カミカでは無い。どういう経緯でその名に落ち着いたか(つまび)らかにせよ。」


 あれ、なんでわかったのか。それにしても本当に神だったのか。一体どこの宗教、もしくは神話の神だろうか。どの神であっても碌でもないがそこは大事ではない。


「カミカ様。どうして私は神域にいるのですか?」

「突然真面目な顔になりおって。もうカミカで良い。どうしてお前がここに居るかだな、それはだな──」

「それは──」


 ニヤリと笑う。嫌な予感がする。


「お前を転生させようと思ってな。」


 転生。それはつまり別の人間になるということか。転生、輪廻。こいつ仏教か!? 阿羅漢(あらかん)なのか!? 仏教には委細詳しくないので適当に言っておく! 南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)南無妙法蓮華経なむみょうほうれんげきょう諸行無常(しょぎょうむじょう)一切衆生悉有仏性いっさいしゅじょうしつうぶっしょう只管打坐(しかんだざ)悪霊退散(あくりょうたいさん)


「私は怨霊ではない! 元怨霊とかすごーくめちゃ高い位とかでもないから五位以上とかそんなんじゃないからな、藤原の一族や百人一首とか読んでないからな!!」

「まさか……すべて口に出てましたか。」

「バッチリとな。」


 そりゃ失敬。今度は口に出さないよう気をつける。


「一応言っておくがおよそお前ら人間が知っている神ではない。人間の認識外。外なる神とも違う。まあ、つまりお前にとっては知らない神と思え。印度(いんど)とか関係ないからな。そこだけは間違えるな。」

「はーい。カミカ様。それで転生と言うと別の人間になるということですか。すみませんがやはり仏教ですかね。」

「だから違うと言ってるだろ! はあ、なんだ転生と言っても記憶がある状態、お前の今の精神そのまま別の世界のこれから産まれてくる生命に移すだけよ。どうだ、簡単に言えば二度目の人生。それもちょっとしたアドバンテージ付きだ。」


 ふむ。そうか強くてニューゲームか。周回ゲーでレベルや装備を引き継ぐものか。いや、それよりも質が悪いな。


「最悪ですね。なんですかそれ。人生を冒涜していることこの上ないですね。」

「ほう。」

「ああ、すみません口に出ていました。」

「いや、お前今自分の意思でハッキリと言っただろ。」

「それは気の所為です。──まあ、神という高尚なナニかが人の命を弄んだところで私がどうにか出来ることではないのでそうしたいならそうしてください。」


 神なんかに叶うものか。神とはそういうものだろう。


「なんだお前嬉しくないのか。実はだな今世のお前はものすごく徳を積んでいてな──」

「徳なんて積んだところで人生詰んでるでどうでもいいです。あと、私は宗教家ではないので。」

「間違いでお前を殺してしまってそのお詫びで──」

「間違いだとしても殺したなら殺したで堂々としてください。そもそも神なんですからそれが法でもあるかのように尊大に、ほら。カミカ様。」


おだてるように手を叩く。神様、仏様、カミカ様。プチッと蟻ん子を潰すように人間潰してこそ上位の存在ですぞ!


「……お前つまらん。」


 頬含まらせてカミカ様がそっぽを向いてしまった。あのほっぺつつきたいな。死んでるから何してもいいだろ。どうせ死ぬんだし。

 思い切りカミカ様の頬を指でグリグリと押す。


「いたたたた! お前馬鹿!? シンプルに痛かったんだけど! 私とお前初対面! 分かる!?」

「イエス、マム! サー!」

「お前の上官になった覚えない! あとせめてどっちかの性別にしろ! はあ、はあ、ほんとなんなんだこいつ。」


 なんだと言われてもただの死人(しびと)ですが。


「お前第二の人生を送りたくないのか? 今の知識がそのままそっくり持ち越せるんだぞ。やり残したこと沢山できるんだぞ。」


 どこか疲れた面持ちで語るカミカ様からは(いささ)か荘厳さが消えていた。


「お前のせいだ。」


 それはすみません。

 しかし、転生を拒むことはそれほどおかしいことだろうか。


「今まで転生は何度かさせてきたが大概喜んでいたが。なかにはこちらの手違いとギフトを申し出る者もいて愉快だった。──まあ、思い通りにはさせないが。」


 そこで神が顔を歪めた。心底楽しそうでなにより。


「多かれ少なかれ皆喜んでいたがどうして拒む?」


 それは心の底から不思議そうな顔だった。

 いや、まあそれは簡単だ。


「人生一度切りだからこそ良いんですよ。なんですか二度目って。願い下げですよ。もしこれで転生してみてください。また次の人生でも転生できるからとか高を括りますよ。そうなってしまたら人生台無し。前の最初の人生すらも価値が消えてしまう。」

「ふーん、それで?」

「私は自分の人生心残り、後悔沢山ありますがそれすらも私の人生。その後悔の分だけ私が生きた証拠なのですから。ま、死んだらそこでおしまいなのでどうでもいいことですけど。いつか私を覚えているその人が死ぬまでは私は存在していますし。その覚えている人を無碍にしたくありませんし、生きて生きて生き抜いて死ぬって最高じゃないですか。」

「…………そうか。満足した。」

「──!」


 びっくりした。突然オカマバーに居る母性が溢れ出ているオカマの笑顔を浮かべてきた。くぅ、これは反則だ。


「……お前、せめて聖母とかしろ。」

「いや、そうしたいのは山々なんですけど如何せん聖母は見たことないので──はっ! 私オカマバーに行ったことあるのか。だってその表現が出てきたってことはそうだよな。」


 衝撃の事実に驚きを隠せない。これはガールズバーにも行ったことあるのだろうか…………ないみたいですね。何も思い浮かばない。


「そんなことどうでも良い! お前のせいで私が厚塗り化粧のオバケと思われたらどうしてくれる! こんな短い話の間ぐらいかっこよく居させないか!」

「その発言とてもかっこ悪いですが最近はそういうのでさえある界隈では人気なのでもっと出していきましょう。」


 私は全くそそらないが。そもそも同性か異性か分からないんだ。私はどっちも恋愛対象になり得るがそれは今は関係ない話だが、性別というよりどういうポジションなのかはハッキリして欲しいってポジション神か、カミカか。


「しかし、転生を断るとなるとお前このまま死ぬが良いのか。」

「別に。それにさっきまで喉かきむしってましたし。いや、死んだってわかると心もスッキリと自殺が簡単に行きますね!」

「……そんなこと笑顔で言わんでくれ、頼む。」

「早いところ死にたいんです! こんな所でぐだぐだしたくないんです! 鉤爪とかありません!? それで喉やるんで。」

「どうして喉に拘るの、お前?! いや、目を瞑れそしたらこの空間から出てお前は死ぬ。」


 呆れ果てた顔に少しふざけすぎたかと反省はしないが悪かったと謝ろう。心の中で。


「いや、口と行動で示せ! はあ……本当になんなんだ。ほら、さっさと目を瞑れ。そしたら死ぬからさっさとどっか行け。もう腹いっぱいだ。お前の答えにも行動にも。」


 しっしと手であっちにいけと払われてしまう。なんとも冷たい人だ。しかし、死に方を教えてくれたのだ感謝──いや、こいつがここに連れてこなければ死んでたんだ。感謝は無しだ。


 目を閉じる。だんだんと意識が暗くなる。ああ、これが死ぬということか。眠くなる。枕が欲しい。


「──ほれ、枕ぐらいはやろう。今眠るがいい人の子よ。お前の人生良いものだった。これからが楽しみだ。」


 まて、私は転生しないんだぞこれからなんてあってたまるか。あ、この枕低反発だ。嫌い。羽毛。


「ええい! 我儘なやつだな! 蕎麦殻枕で寝てろ!」


 蕎麦殻いい匂いと硬さ……おやすみなさい、すやあ。


「やっと寝たか。さあ、帰るがよい。お前の死へと向う輝かしい命の煌めき私は楽しみにしているぞ。」


 最後のカミカ様の言葉は私には届かなかった。届かなくても良かったなと聞こえても居ないはずの私は静かに笑みを作った。





「────はあ! 今何時!」


 がばっと体を起こして時計を見る。時刻は六時といつもと変わらない時刻だった。なんだ同じか。仕方ない起きますか。


 ベッドから下りると体を伸ばす。

 何か面白い夢を見ていた気がするけど思い出せない。夢なんて思い出せないのが殆どだがなんだか楽しくて不愉快な夢だったような。あと、なんだか蕎麦が食べたい。夜にでもオカマバーで蕎麦でも食べようか。


「ん〜! 今日も頑張りますか!」


 予定も出来たことですし無為で無価値な最高な人生の一日を今日も最高に楽しみますか!





 神域でカミカは一人笑っていた。


「あの子はこの世界で誰よりも人生を楽しんだ子。だからほかの世界でも楽しんでほしかったがそれは神の身勝手か。あの子はこの世界だから、初めての世界でただ一つの世界だから楽しんでいたのだ。ああ、無限の知識があると言うのにそんなことも分からないとは。まあ、これからも転生はさせるけど。あれは、あれで人間の愚かさや強欲さ、幼稚な一面が沢山見れて愉しいからなあ。」


 おや、誰かが死んだみたいだ。丁度いい。こいつを手違いで殺したことにして幼子の体に移し意思疎通の出来ない苦しみを味わせるか。ギフトは無しでいいだろう。言葉も通じない。さあ、お前はどう人生を楽しむ、苦しむ、悲しむ、怒る。それが出来なくなった時それがお前の死と知るが良い。お前が死んだ所で神は気にしない。さあ、どうする。お前はするか、しないか。どちらの選択も私好みだ。


 神は笑う。そこに同情も罪悪感もない。ただのお遊びに過ぎないのだ。皆さんも神様にはお気をつけを。

読んでいただきありがとうございます。

仏教用語の時代が偏っていたり有名どころしかしか使用していないのは知識の乏しさの表れです。

途中の怨霊の下りは知っている人は知っているものかと思いますが位何位からかは正直忘れてしまいました。後日確認しておきます。

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