ワイバーン
「「エクストラスキルゥゥウウ!!!!」」
「は、はい……」
話が終わった後、二人して黙ったかと思うと急に声を大にして叫んだ。
「ハープちゃんの『勇者』でもビックリしたけど…………」
なるほど…………ハープさんの職業は『勇者』でしたか……。 道理で強いわけだ……。
…………。 ……………………。
「は、はい…………」
「返事しなくて良いから……」
だって変な間が開いたんだもん! 怖いじゃん!?
「それにしても、いのかわさん」
「な、なんでしょうか…………?」
ギルマスがいつもと違う顔をしてこちらを見てくる。
いつもと違う…………真剣な顔だ。
「このことはギルドメンバー、いや、私たちだけの秘密だ」
「わ、わかった…………。 で、でもなんでだ?」
「エクストラスキルというのは発見が難しく、最悪個人だけしか手に入らないユニークの可能性がある。 その場合PK推奨であるこのゲームでは立場が危うくなったりしてしまうんだ」
「なるほど…………、それじゃあハープさんも……」
俺の場合職業が『農民』なので嫉妬もそこまで無いだろうが、元々職業が『勇者』となるとそうは行かないだろう。
「そういうこと。 まぁ、私がそんなことは気にしない人だからハープちゃんはこのギルドに入ってくれたんですけど…………」
ギルマスは嬉しそうに笑う。
「まぁ、このギルドはプレイヤーから疎外されているプレイヤーを保護しているんだよ。 このギルドのギルド方針を言っていなかったね……このギルドの方針は『自由』だ。 このゲームの名前と同じく『free』だ!」
「それにしてもギルド加入は強請でしたけど!?」
「それはそれ、これはこれだ。 それでは────」
なんか無理やり別の話に持っていかれたぞ?
「ドラゴンでも狩って見ようか?」
「ドラゴン?」
「ギルマス……ついに頭逝かれましたか? ドラゴンなんて最弱種でも『勇者』二人分の戦力が必要だと言われているんですよ!?」
「知っていますよ、そのぐらい」
「なら!」
「だからこそ、いのかわさんの実力がわかるんじゃないかな?」
ギルマスはライオン的思考なんだな……。
「それに……いのかわさんが慌てふためく所を見れるからね……」
いや、ライオンなんて可愛いもんじゃなかった。
鬼か悪魔的思考だ!
「それじゃあ……早く逝こうか?」
「漢字が違う気がするのは俺だけか?」
まぁ、いくんだけどさ。 今までは戦ってきたモンスターは全て一撃で倒せている。 多分大丈夫だろう。
────なんて思っていた…………。
「何だよこれぇぇぇえええ!」
「あなた、少しは落ち着いて…………。 確かに全長30メートルはあるかも知れないけどあれはドラゴン種のなかでも最弱のワイバーンよ!」
「ハープちゃん、そんなこと言っているけど今、現在進行形で喰われそうになってぇぇえギャァァアアア!」
ギルマスさんがワイバーンのネコパンチならぬドラゴンパンチで吹き飛ぶ。
「ギルマス!」
俺が叫んで安否を確認する。
「だ、大丈夫……私こう見えても防御力高めのキャラですから!」
そう言えばギルマスの職業ってまだわかっていんだよな……。
この戦いが終わってからでも聞いて────
「GYAAAAAAAAAA!!!!」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
クソがっ! これでも食らえ!
俺は魔草の種をワイバーンに投げる。
今だ!
ありったけの魔力を種に流し込む。
今までだったらここで倒れてくれるが……
「やっぱり無理か?」
相手のHPを見てみると1ダメージも入っていない。
「なぜダメージが入らないんだ? おかしい……いつもならここで倒せているはずだ何がいけなかったんだ?」
実際俺はこのスキルの条件が未だいまいち分かっていない。
だとしたらどんな条件が────
「危ない!」
え?
俺は気付いたら空を飛んでいた。
「あ、れ……?」
でも、まぁ確かに……戦闘中考え事とか……普通しないよな…………。
俺は初めてこのゲームで死んでしまった。