ありがとう
「新人君遅いよぉ!」
「す、すいません!」
今日俺はギルドマスターである華蘭さんと一緒に狩りをすることとなった。昨日気絶させられたあと、勝手に体を動かしてギルドの入団手続きにサインしてしまった、させられたらしい。
「何でこんなに遅れたのかな?」
遅れた、と言っても20分ぐらいである。 っが、しっかり謝った方がいいだろう。
「リアルで仕事がちょっと延びちゃって……すいません…………」
「まぁ、全然起こってないけどね!」
「え?」
「ただ単に君をからかいたかっただけだから」
そうですか、そうですか……俺はギルマスのおもちゃですか……。
「まぁ、狩り場に行きながら話そうか?」
「あ、はい……」
俺達は狩り場に向かった。 今回どこの狩り場に行くかは聞いていない。
「…………」
…………それで……………
「ハープさんは何をしに?」
ずっと俺とギルマスの後ろを静かについてきている。
静かすぎて存在忘れかけてたよ!?
「あなたと二人っきりだとギルマスが可愛そうだったからです。 別に二人が羨……いえ、何でもないです。 死んでください、農民風情が……」
「辛辣すぎない!?」
「まぁまぁ、ハープちゃんも悪気はないから」
「そうよ」
「絶対悪気はあるだろ!」
もういいや、こんな調子でツッコミ続けたら狩り場に着く前に疲れきってしまいそうだ…………。
「着きました!」
ギルマスがそう叫ぶとそこは俺が見慣れた場所だった。
【ゴブリンの森】──ゴブリンが大量出現する森である。
普通だったら初心者がスライム狩りを終えて次の獲物とする格好の狩り場である。
俺が魔草の種で実験していたときにずっとここにいたのでここではもうレベルは上がらなくなった。
「今までレベル上げが出来なかったっと思うからその分、今日から地獄のレベリングだよー!」
「すいません」
「何かな、ハープちゃん? 君には物足りない相手だとは思うけど付いてきてしまったからには戦闘に参加してもらうよ?」
「元からそのつもりですが彼は────」
「良いから良いから!」
ギルマスは聞く耳を持っていない……。
なんか忘れているような……。 何だったっけ……?
とても重要なことだったと思うんだけど…………。
「あ!」
「ど、どうしたの、いのかわさん!? もしかして私の可愛さに気付いてしまった?」
「いや、そんなどうでも良いことじゃなくて…………」
「ど、どうでも……いい?」
ギルマスはショックを受けたらしく、地面に膝から崩れ落ちた。
そんなことは今は無視して…………
「ハープさん……」
「なによ……」
ハープさんは覚えていないかもしれない。
でも言わなきゃいけないことがあるんだ。
「前にオークの緊急クエストがあったとき助けてくれてありがとう。 前から言おうと思っていたんだけどなかなか会えなくて……」
あぁ、いざ感謝の気持ちを伝えようと思うと、ゲームの中でも、どもってしまうんだな……。
「ありが──」
「そんなにありがとう、ありがとう言うなよ! う、うるさい……」
顔を真っ赤にしてハープさんが怒ってきた。
「照れちゃって……」
ギルマスがハープさんをからかう。
「うるさい! 違います!」
剣を抜いて振り回してきた。
「ご、ごめんね、ハープちゃん!! だから剣しまってぇぇえ!」
自業自得というかなんと言うか……。
「まぁ…………、どういたしまして………………」
「え? 何だって?」
「何でもないです!」
何をいっているのかわからなかったが、怒っていないことはハッキリわかった。
「あと、すいません……レベルなんですけどここではもう上がらないんですけど……」
「え? でも農民ってスライムを倒すのが限界の最弱食ですよね?」
「あぁ……」
俺は農民ライフが始まってからのいきさつを事細かに話していった。
やっとハープさんにありがとうを言えたよ……