ギルドマスター
「それで? 何で彼を気絶させてギルドに連れてきたのかな?」
「…………」
「何か言ったらどうかな?」
「…………」
「…………はぁ、わかったよ。 もう何も言わなくて良いから……。 その人起きたら謝らなきゃいけないよ?」
「目が覚める前に帰るから大丈夫」
「悪気は?」
「無い!」
「そんなに言い切ることなのかい?」
「それじゃあ、私はこれで……」
「あ、あぁー、うん。 もういいか……。 ありがとうね、ここまでつれてきてくれて。 ……って、もう行ってしまったか……。 それにしても残念だな……。 せっかく来てくれたは良いんだけど……、このギルド────」
─────「ここは?」
目が覚めたら俺は何処かの建物の中にいた。
「ここは【ギルド:ヴァルキリー】のギルドホームだよ」
俺の目の前にはアニメでよく見るような古典的な御嬢様の格好をした女の子がいた。
腰まである髪の毛、長いまつげ、綺麗な大和撫子を体現した様な人が俺の前にたっていた。
「申し遅れました。 私はヴァルキリーのギルドマスターをしています、名前は【華蘭】と言います。 っと言っても皆私のことギルマスって呼んでますけど……」
「分かりました……、それじゃあ、面接の方を始めてもらっても────」
「すいませんでした!!!」
俺の言葉はいきなり遮られ、謝罪の言葉が飛んできた。 …………意味わからん…………。
「すいません、このギルド……【女性専用】ギルドなんです! 最初に性別の確認をしていなかった私の不注意です! 本当にすいませんでした!」
「あ、そ、そんなに謝らないで下さい」
自分のなかではそんなに重く考えていなかったものだけに、罪悪感が半端じゃない。
「自分もこのゲーム始めてまだ日が浅いですし、会社で働いているから時間も限られた条件の中でしか出来ませんでした。 だからプレイヤーとはあまり話さなかったので今回は人の暖かさに触れることが出来て嬉しかったです」
「そう言っていただくとありがたいです……」
ギルマスは嬉しそうな顔で納得してくれた。
「……そう言えば、いのかわさん」
「あ、はい。 何ですか?」
「ハープさんとは前からお知り合いでしたか?」
「え? ハープさんって誰ですか?」
このゲームを初めてからフレンドリストに一人も名前がない俺に、知り合いがいるとか……絶対にないから……。
「君をここまで送っ──拉致ってきた人のことだよ」
「へぇ、あの人ハープさんって言うんですね~」
「やっぱり知っていたんだな? それじゃあもうあの子と喋ったんだよね?」
「あ、はい……」
口が悪い! っというか、かなり強烈な毒舌だ。
まるで俺の会社の後輩である。
「あのさ、これからもあの子と仲良くして貰っても良いかな? その変わりと言ってもなんだけどこのギルドに入っても良いからさぁ~」
「え!? ギルドに入って良いんですか!?」
女性限定ギルドってそんな簡単に男の侵入許すのかよ!
「おうともさ!」
胸を張って、胸元を腕でドンと叩く。
残念ながら彼女の胸はそんなに大きくないのだか……。
「っていうか嫌ですよ? このギルドに入るの」
「何でですか?」
「いや、女だらけのギルドに入りませんよ!」
「こういっちゃ何だけど、このギルド、そこそこ美人揃いだよ?」
「なおさらだよ! 考えがおじさんだよ!」
最初のイメージが崩壊していく。
「ゲシュタルト崩壊ですか?」
「俺の考えを読まないでください! あと、難しい言葉使ってますけど使い方間違ってますし」
「まぁ、いいです。 あなたのことは大体分かりました」
「は、はぁ、何がどうわかったのか怖いので聞きませんが、も違っていることは断言できます!」
この人頭おかしいだろ!
「まぁまぁ、そんなことより今日から宜しくね、いのかわさん」
「え? それってどういう──」
「殺れ……」
ま、たか……よっ…………。
俺の目の前は一気に暗くなった。
────「いやぁ、一回言ってみたかったんだよねぇー」
「ギルマス、彼のギルドの入団手続き済U」
彼女はギルド、ヴァルキリーのサブマスターである。
「さったん、宜しくね」
そう言って、ギルドマスターはその部屋を後にした。