ギルド
「今日はこれぐらいにしとくか」
俺がこのゲームを初めてから約三ヶ月が過ぎた。
【フリーライフ】の人気は発売当初と変わらず、大人気である。
そんなこんなでおれは今日、一日中ずっとモンスターを狩っていた。
最近ではレベルもかなり上がり、ステータスも結構上がってきている。
一つ言いたいことがあるとすれば────
「やっぱりソロ狩りしてると寂しくなるな…………」
ずっと一人なので喋らないし、そもそも常識がわからん。
それに俺には農業魔法があるが、防御面がゴミなので、一緒に冒険できる仲間がほしい。
という事で、
「ギルドに入ろう!」
前にパーティーに入ろうとして全てのプレイヤーから断られたトラウマはこの際忘れよう。
今回はギルドである。
パーティーの様に断られるということはないだろう。
…………ないと信じたい。
ギルド掲示板だっけ? 色々な募集が張ってあるのか?
「仲間を見つけるためにギルド入ろうとしても、入り方がわかんない……。 仲間に聞こうにも聞けない……か…………」
どうしようか? いっそのこと自分でギルドを作るっていう手もあるんだが…………それは俺が働いていて不定期ログインだからあんまりしない方がいいんだよな……。
そもそも仲間集めるのに自分がいなかったら元もこもないしな……。
「適当に掲示板見てみるか」
まずは、これは面白そうだな……。
俺は掲示板に張ってある紙の一枚をみる。
【ギルド:今日のふりかけ】か……。
ゲームのギルドらしい名前だ。
…………って、良く見たらこのギルド、戦闘系職業限定じゃねーか!
しかも見た感じ何処のギルドも農民はお断りだな……。
何だよこれ? 【ギルド:農断ギルド】? 完全に農民って嫌われているんだな…………。
っと、これは?
【ギルド:ヴァルキリー
誰でも歓迎! 初心者ギルド
農民でもokです。 気軽にギルドホームにお越し下さい。】
こ、これは凄い……。
最終的にこのギルドだけしか農民の受け入れはなかった。
皆、酷すぎるだろ!
と、とりあえずこのギルドのギルドマスターに連絡してみるか……。
『すいません、ギルドの広告を見たんですが本当に農民でもギルドに入っても良いんですか?』
ピコンッ!
メッセージが早くも来た。
えっと…………
『もしかして農民の方でしょうか? 最近の『フリーライフ』での職業差別が有っているなか、良くご無事でしたwww。
早速で何ですが、ギルドに入るための面接をしたいので都合の良い日を教えてもらってもよろしいですか?』
おっふ……これはこれは短い時間でかなりの量の返事が来たよ…………。
どうしようか? 今からでも良いのかな?
聞いてみれば良いか。
『すいませんが今からでもいいですか?』
ピコンッ!
やっぱりこの人早すぎるだろ!
『わかりました! それでは私たちのギルドホームにてお待ちしております!』
あれ? ギルドホームって何処にあるんだ?
ピコンッ!
『すいません! ギルドホームの場所を伝えておりませんでした!場所はギルド街のB地区、1番通りです。 何かありましたらどうぞ遠慮なくチャットで質問下さい!』
……
…………
このゲームを始めて、初めて人の暖かさを実感した。
ギルマスが男でも女でもいい……結婚したい性格No1だな……。
っと、早く行った方がいいな。 もう待ってくれているだろうし。
俺はギルドホームがあるギルド街へ進むのであった。
…………
……………………。
いや、それ以外何か言うことってあるか? 無いな。
近場でお土産でも買っておくか……。
いや、魔草とかで良いかもしれない。
まぁ、ギルドの在庫には大量に入っているとは思うけど、持っていかないよりはましだろう…………。
────☆────
「どこだ? ここ……」
勢いづけて来たは良いものの、完全に道に迷ってしまった。
ギルド街には入ってこれたのだが、そっから先……確かB地区が何処かわからない。
こうなったら恥も承知でギルマスに連絡してみるか……。
『すいません、完全に道に迷いました。 B地区の行き方が分からないのですがどうやったら行けますか?』
ピコンッ!
『道が分からないのなら、迎えに行きますよ! 何か周りに大きい建物とかありますか?』
なんともありがたい提案である。
しかし見るからに高い建物なんて無いんだよなここ……。
『御願い出来ますか? それと高い建物とかはないです。
建物の高さは大体全部同じです。』
ピコンッ!
『了解です! 丁度近くにギルドのメンバーがいるので向かわせます!』
『何から何までありがとう御座います』
「何か買って食っておこう……」
さっきから何も食ってないしなぁ。
「これ下さい」
「はいよ!」
俺は近くの屋台でレッドコッコの唐揚げを買い、食べていく。
いやー、旨い! これならいくらでも食べれるなぁ。
「同じ名前だから嫌な予感はしていたけど……」
そう聞こえ、すぐに後ろを振り返る。
そこにはため息を着く女性キャラクター、あの日俺を助けてくれた少女がたっていた。
「ギルマスめ、わかっていて送ったのか? だとしたら後で殺してやる! 大体このギル────」
「あ、あのぉ~」
「何か?」
め、目に殺気がこもっている。
通りすがりが次々に離れていく。 それほど彼女は殺気を放っていた。
「それじゃあ、行こうか……」
彼女の言葉が優しくなったかと思うと、最高の笑顔を見せてくれた。
「あ、は────」
返事をしようとしたところで俺の意識は途絶えた。