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NPC 極悪非道ジャッカス登場!

 ジャッカス「助けてくれ!仲間が死にそうなんだ!」


 レベル上げをしようとした時、安全地帯エアポケットの中に人間が入ってきた。


 30歳くらいで、オールバックで目が細く、強面の男性。

 森の…迷彩服?を着込み、手には剣と盾を持っている。


 この森に来て、初めて出会う人間に嬉しくなる。

 普段なら知らない、ましてや男の人に自分から話しかけるような真似はしないのだが、つい声をかけてしまった。確かめたいこともあったし。


「あの!もしかしてあなたもこの世界でゲームをやらされているんですか!?」

 ジャッカス「おお!お前もリッターか!?頼む!仲間を助けてくれ!」



 ~助けに向かいますか? はい/いいえ ~



 機械的な音声が聞こえてくる。

 その声を聴いた途端、興奮が冷める。

 

 助けに行くのに選択肢がある…?

 …これゲームのキャラクターか!


「なぁーんだ…喜んで損した~」


 やっぱり私のように、ゲームの世界に送り込まれた人はいないのかな…

 お姉ちゃんが来てくれると心強いんだけど…


 おっと。そんなことよりも助けるか助けないか…



 正直気は進まない。

 なんせまだ私はレベル1だし、自分のことだけで精一杯だ。誰かの面倒は見切れない。


 けど…助けなかったら悪いこととか起きないのかな?

 ゲームでいいえを選択するって…ダメな気がする。


 とりあえずもう少しだけ話を聞いてみたい。


「あの…もう少し詳しくお話を聞きたいんですけど…罠に掛かったんですか?それとも襲われているんですか?」

 ジャッカス「おお!お前もリッターか!?頼む!仲間を助けてくれないか!?」



 ~助けに向かいますか? はい/いいえ ~



 う~ん。

 はい。かいいえで答えないと先に進めないのか…


「最初だし…はいにしておこうかな」

 ジャッカス「本当か!?助かる!ついてきてくれ!」


 はいを選択した途端、笑顔で安全地帯を出ていく男の人。

 ああ!もう行動が早いよ!


 仕方なくレベル上げを中断して追いかけることにする。


 ジャッカス「いきなりこんなことを頼んですまなかったな。自己紹介がまだだった。俺の名はジャッカスだ」

「はぁ。沙羅です。よろしくお願いします」

 ジャッカス「この森では見ない顔だな。新人か?俺が先輩として色々教えてやろう」

「はぁ…」


 ジャッカスの後ろを走りながら、彼の身の上話を聞く。

 いや、私は何も聞いてないのに勝手に話してくるんだよ?


 ジャッカス「俺も昔は名の知れたリッターでな。多くの魂を狩って稼いでいたんだ」

 ジャッカス「だが、魂の数が減って、今では5つの魂しか現存していない。しかもその5つは、俺の手に余るほど強力な魂ときたもんだ」

 ジャッカス「その代わりにイディアっつうわけわからん世界が出来たおかげで、、まだ多少はスピリッドを稼ぐことは出来ているけどな」

 ジャッカス「稼ぎも微々たるもので、そろそろ廃業しようか迷っているところさ」

 ジャッカス「俺の仲間もどんどんリッターを辞めているよ」

「………」


 めっちゃしゃべるやん。こやつ。

 よくいる、急に自分のこと語り出すタイプの人か。


 別に一言も聞きたいなんて言ってないのだけど。

 でも、ジャッカスの身の上話で、少しこのゲームの世界観を知ることが出来た。



 現在のリッターという職業人は、5つのどれかの世界イディアで自分に勝てそうな相手を選んで倒し、スピリッドを貯めて生計を立てているのかな?


 つまり、このジャッカス以外にもたくさんゲームキャラクターがいるのかもしれない。




 それからもジャッカスの自分語りを聞き流しながら走り続け、ついに私の入ったことのないエリアまで来てしまった。


 マップで位置確認すると、ちょうど最西端まで移動していた。

 まだ遠いのかな?


「あのーまだですか?」

 ジャッカス「この先で仲間が罠に引っかかってしまったんだ。悪いが見てきてくれないか?」

「え…私が行くの!?」


 ちょうど私が質問したとき、目的地に到着したようだ。

 ジャッカスが森の茂みを指差す。

 その先にいるってことかな?


 まぁゲームだからプレイヤーの私が行くことになるのはわかるけどさぁ。

 自分の仲間がピンチなら、ジャッカスが先に様子を見るのが普通じゃない?



 しかしジャッカスは指を指したまま動かなくなってしまったので、仕方なく私が様子を見る羽目になる。


 草をかき分け、中の様子を確認する。


 しかしその先には何もなかった。

 開けた空間があるだけだ。


「あれ?誰もいないけど…」


 ジャッカス場所間違ってない?

 そう思い、後ろを振り返ろうとしたその時…


 お尻を蹴られる。


「はあ!?」

 ジャッカス「悪いな」


 咄嗟のことに、受け身も取れず前倒しになってしまう。

 

 しかも、その先の地面が突然崩れ落ちる。


 落とし穴だ。


「はああああああああ!?」

 ジャッカス「はっはっはっは!」


 ジャッカスの笑い声が上から聞こえてくる。


 そのまま訳が分からないまま私はゲームオーバーになった。






 ~死亡を確認。データからキューブで再生します~




「…意味が分からないんだけど」


 目が覚めると安全地帯エアポケットまで戻っていた。ジャッカスの姿はどこにもない。

 …どうしてこうなった?


 流れを整理してみよう。



 まず、仲間がピンチだから助けてくれとジャッカスに頼まれた。

 ↓

 いいえを選択すると悪いことが起きそうだから助けることにした。

 ↓

 ジャッカスと仲間のもとに向かう。

 ↓

 到着したが、仲間の姿はなく、なぜかジャッカスに落とし穴へと蹴落とされる。

 ↓

 ゲームオーバー。


「うん。整理しても理由がわからない」


 意味不明すぎるし、そもそも情報が少ない。


「んー…ジャッカスの身の上話がヒントになっているのかな?ちゃんと話聞いておけばよかった…」


 うろ覚えだけど…リッターは魂を狩りづらくなって廃業するかもしれない。そんな話だったかな?


「でも私が狙われる理由なんてないよね…」


 うん。考えてもよくわからない。

 とりあえずさっきのことは保留にして、今後ジャッカスが出てきたら、かなり警戒する。

 それくらいしか対策が無いし、気持ちを切り替えよう。


「とりあえず、さっき頼みごとをされたせいで出来なかったレベル上げをしちゃおう」


 200Sまで貯めたかからレベル3まで上げられる。

 そう考えてキューブのレベルアップ画面を開くと、信じられない文字が目に入る。


「嘘!?0S!?」


 200Sあったはずが、なぜか0Sになっていて、レベル上げが出来ない。

 ちょっと待って…?ジャッカスの頼みごとを聞く直前にはちゃんとあった。つまり…


「ジャッカスの狙いって、私のスピリッドだったの!?」


 そう考えるとつじつまが合う!

 仲間がいなかったのは最初から私をゲームオーバーにしてスピリッドを奪う目的だったから!?


「つまり騙されたってこと!?…悔しいいいいい!!」


 私のせっせと猪を倒していた時間を返せーーー!!


 初めてのイベントは最悪だった。

 私は消えたジャッカスのことを絶対に許さない。今度会ったらしばく。そう決意した。


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