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初戦闘!

「さて。問題はどの敵と戦うか…」


 スピリッド入手のために敵と戦うことにしたのはいいけど、現在は見つけた敵は3種類。

 

 猪と熊とゴリラ。


「一番怖くないのは…猪かな」


 熊とゴリラは面と向かうのも怖いけれど、猪は小さい分まだマシだ。

 それでも私が見た猪は、ずいぶん獰猛そうだったけど。


「でも最初の敵だし、勝てるはず!」


 危険度が一番低いステージで、しかも最初に遭遇した敵。

 つまり、この世界で一番弱い敵のはずなんだ。


 ここで苦戦していたら先が思いやられる。

 攻撃は身体が勝手に動いてくれるから…冷静に戦えば絶対に勝てる!



 自分を鼓舞して、猪を発見したところまで戻る。

 途中の罠はマップに表示されているので避けることは容易だった。

 そうして歩くこと約数十分。


「…いた」

「ブルルルル」


 ゆっくりと木陰に隠れて様子を窺う。


 最初は後ろから奇襲して少しでも有利な状況にしたい。

 だから後ろを向いているときにこっそり近づいたのだけど…


「ブル!!」

「え!?」


 草を踏む音に反応したのか、まだ攻撃するには遠い距離で気取られてしまう。

 逃げるか!?そのまま攻撃するのか?


 咄嗟の判断が出来ずに身動きが取れなくない。

 その間に猪は助走をつけて突進してきた。


「やばっ!ローリング!×!×!」


 野生動物が襲ってくる恐怖で回避を選択するが…

 回避するのが早すぎた。


 猪はまだ向かってきていないのにローリングをしてしまい、まるで意味がなかった。

 猪はしっかり軌道修正して、私のローリング終わりに身体をぶつけてくる。


「がふっ…」


 出っ張った猪の鼻がお腹にぶつかる。

 固い!バッドで殴られたような衝撃を受け、受け身も取れずに後方に飛ばされる。


「いったぁぁ…」


 予想以上の衝撃に起き上がることができない。

 HPは半分近く削られていた。もう一度まともに攻撃を受けたらゲームオーバーになる。


 安全地帯エアポケットまで逃げたいけど、猪は完全に私のことを敵意満々で睨んでいる。

 やすやすと逃がしてくれそうもない。


 そしてまた助走をつけて突進を敢行してくる!


「今度こそ…ローリング!…がふ」


 どうにか立ち上がり、さっきよりは猪を引き付けてからローリングをすることが出来た。

 しかし、やはり近づかれるのは怖く、無意識に早めのローリングになってしまう。


 優秀な猪はしっかり軌道修正をしてまた私に身体をぶつけてくる。


 当然同様に体力の半分を削られ…




 ~死亡を確認。データからキューブで再生します~


 機械的なアナウンサーが頭の中に響き、キューブの目の前で復活する。


「うぅ~…やっぱこわぁ…」


 突進してくる猪を思い出して地面にへたり込む。


 大きさは熊やゴリラに比べて小さい。

 けど、敵意を向けられながら突進されると冷静ではいられなくなるのだ。


「あと、ローリングのタイミングがシビアだなぁ」


 ちょっとでも早めにローリングしてしまうと、猪はしっかり軌道修正してくるのだ。


 突進攻撃を回避するには、ギリギリまで引きつけないとダメらしい。

 つまり、襲ってくる恐怖に耐えなくてはいけない。


「痛かったけど、次は戦える気がする」


 猪も怖い。けど、チュートリアルの巨大ロボットのほうがずっとずっと怖かった。

 アレに比べたら、自分よりも小さい猪が向かってくるのはまだマシだ。


 ローリングのタイミングさえ合えば勝機は十分にあると思う。


「よし。次こそは…!」


 気持ちを整理して猪が居た場所に再び向かう。




 森も最初は木の根っこや岩が邪魔で歩きづらかったけど、何時間も歩き続ける内に慣れてきた。


「身体に疲労感が無いのは嬉しい誤算だね」


 現実世界なら、慣れない森を歩き倒せば疲れもするだろう。

 私は絶対、筋肉痛になる自信がある。


 けどここはゲームの世界だからか、疲れは特に感じない。

 ゲームに「疲労度」のようなステータスが無くてよかった。


「…いた」


 さっきと全く同じ場所で鼻息荒く徘徊している猪。

 よし。ローリングを訓練する気持ちで戦おう。


「これはローリング練習。怖くない怖くない!」

「ブルルルル!!」


 草むらから飛び出し、猪に発見される。


 猪は私を見つけるなりすぐに後ろ脚で助走をつけ、突進をしてくる。

 三回目ともなれば思考する余裕も出てくる。


「引きつけて…今だ!」

「!!」


 十分に猪を待ってから横にローリングする。猪は私を横切って後方に走り続ける。

 よっし!成功した!


 そのまま猪は木にぶつかるまで走り、倒れる。


「おお!?ラッキー!これってもしかして攻撃チャンス!?」


 猪はピクピクと動いているだけで起き上がる様子はない。

 危険は少ないと判断して、急いで近づき攻撃を加える。


「□攻撃、□、□!おりゃああああ!!」

「ブルルル!!!」


 必死に攻撃する。


 木にぶつかった時点で半分近く体力を失っていた猪の体力は更にみるみる減っていき、そのままついに倒すことに成功する。


「おっしゃああ!!」


 猪が消え、ふよふよと魂?のようなものが私の身体に吸い込まれていく。

 もしかして今のがスピリッドなのだろうか?


 メニュー画面を開いて確認してみる。


「やった!20Sに増えてる!」


 ずっと0Sだった画面が20Sに上がっていた。

 どうやら猪を倒して得られるスピリッドは20のようだ。


「よしよし!…そういえば、レベルを上げるのに必要なスピリッドはどれくらいなんだろう?」


 すっかり確認し忘れていた。

 安全地帯エアポケットまで戻り、キューブで確認する。


「どれどれ?」


 レベル上げ画面に入ると、レベル1→レベル2までの必要Sは100Sと表示されている。


「100s…猪5体倒せばいいのね」


 5体なら比較的楽に倒せる気がする。

 これでレベルを上げるビジョンが見えてきた。


 思わず頬が緩む。


「むふふ。また同じ場所に現れるのかな?よくわからないけど」


 ゲームだから、時間経過とかで倒した敵が復活したりしないのかな?

 検証のためにも、少し時間を置いてから先程倒した猪のところに戻ることにしよう。


「あと、他の場所の猪の出現ポイントも調べておこう」


 安全地帯エアポケットに到着するまでに何度か猪に遭遇している。

 場所を知っておいて損はないだろう。



 戦えることが分かったから、やるべきことがたくさん増えたね。


 時間制限はなさそうだし、生存重視で着実にこなそう。

 まずは時間経過で復活するかの検証。




「…おお。いるいる」


 あれから安全地帯エアポケットでしばらく休憩してから、猪ポイントに移動した。

 すると、3回目も同じところで猪は徘徊していた。


「これはやっぱり、すぐに復活するのかな?」


 3回目だし、その可能性は高い。

 とりあえずさっくり倒すことに成功する。ローリングのタイミングもばっちり掴むことができた。


「やっぱり私って、ゲームの才能ありそうだよね。もう猪になら負ける気しないよ!」


 猪の突進攻撃は回避に成功すると、そのまま木にぶつかるまで走り続ける仕様みたいだ。


 そのからくりが分かったおかげか、もう怖くはない。


「よーし。今日は猪狩りじゃー!」


 ひたすら猪を倒して、スピリッドを溜められるだけ溜めよう。

 時間は掛かるけど、面倒だとは思わない。


 むしろローリスクでスピリッドを回収できるのだから嬉しいくらいだ。


 猪が復活するまで近くの木陰で待機することにする。


「どれくらいで復活するのか、時間でも計ってみようかな」


 スマホは無いから心の中で秒数を数えることにする。

 正確ではないけど、指針にはなるだろう。




 しかし、いつまで待っても猪が復活することはなかった。

 カウントも桁が増えてからようやく疑問が浮かび上がる。


「999、1000、1001…あれ?こんなに掛ったっけ?」


 倒してから15分以上は経過したけど、猪は出現しなかった。


「もしかして、近くにいたら復活しない…とか?」


 あり得るかもしれない。

 今までは倒してから安全地帯エアポケットまで戻っていた。


 もしかしたらエアポケットに入ることで、敵がリセットされる?


「前回との違いってそれくらいだよね?」


 確かめてみる必要はありそうだ。

 ということで、一度エアポケットに帰り、すぐに引き返す。


 すると…


「いた」


 いつもと同じ場所で猪は我が物顔でのっしのっしと歩いている。

 どうやらエアポケットに入ることが敵に復活する条件の可能性が出てきた。


「うん。なるほどね。まずはさくっと倒しちゃいますか!」

「ブルルオォ!?」


 飛び出して猪を倒す。



 猪の突進→ローリング回避→木にぶつかる→倒れた猪を攻撃 


 もはや作業に近い。問題なく倒すことに成功する。


「将来は猟師になる選択肢もあるかもね。私なら」


 これがホントの森ガール。


「おっと。そんなくだらないことを考えている暇はない!」


 60S稼げたのだ。あと2回猪を倒せばレベルアップ!

 それからはエアポケットと猪エリアを往復する作業に徹する。





 時間がどれくらいかかっているかはわからない。

 けど、着実にスピリッドが増えていくことにニヤニヤが止まらない。


「ふっふっふ。つい10回も繰り返してしまった」


 メニュー画面には200Sの文字が表示されている。

 レベルを1つ上げるのに100Sかかるから、3レベルまで上げることができるだろう。


 ルンルン気分でエアポケットに引き返す。


 白い霧の中に入り、キューブの前でレベルアップの画面を開こうとする。

 すると、エアポケットの中に人間が入ってきた。


 森に入ってから初めて見る意思疎通が出来そうな相手を見て、まさか人がいるとは思っていなかったため心臓が止まりそうになる。


「え!?」

 ジャッカス「だ、誰か助けてくれ!!仲間が罠にかかっちまったんだ!」



 安全地帯エアポケットには敵は入ってこれない。


 後々わかることになるが…これがホムンクルスを創ったマッド博士に次ぐ、2人目のNPCノンプレイヤーキャラクターだった。


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