3. 屋敷
アルとアロが生まれて2年が経った頃、私はようやく自分の住んでいる屋敷の中を把握した。どこかへ行くときは必ずニコラと一緒ではあるが、階段も誰の手も借りずに登れるようになった。
何をするにしても誰かの手を借りなければいけなかったこの小さな体が歯痒くて、申し訳なくて、だから少しでも早くできるようになろうと、なるべくできることは自分で行うように務めた。世話係のニコラには仕事を奪ってしまっているようで申し訳ないが、今では彼女も私のことを見守ってくれるようになった。
しかし、ルゥは違った。
私が自分で何かを頑張っていると何故かいつのまにかルゥが現れて、たちまちそれを片付けてしまう。
一度ならず何度か「自分でできるようなりたいから私にやらせて下さい」とお願いしたことがあったのだがそうすると少し悲しそうに、「私と一緒が嫌なのか?」と聞いてくるので今ではもう諦めている。手伝ってあげると言いながらきっと私とスキンシップをとりたいだけなのだろう。
この屋敷の中で私の一番のお気に入りはラチュリアの樹がある中庭だった。ラチュリアは桜に良く似た美しい花で私は懐かしさを感じるこの美しい木が大好きだった。ラチュリアの樹下にはベンチがあり、そこで本を読んでもらうのが私のお気に入りだった。他にも色とりどりの花が植えられていてとても綺麗だった。そして私がその場所がが好きな理由はもう一つあった。
以前から私には時節部屋に浮かぶほんわりとした光が見えていた。時にはピンク色の、時には緑色のそれらは私以外の人にはどうやら見えていないようだった。そしてそれらの光が一番多いのがこの中庭だった。見ているととても安心するそれらの光が私は大好きだった。
ある時私はその中庭で1人になる機会があった。その日もニコラに本を読んでもらっていたのだがニコラの母が倒れたとの知らせが入り、王都に行かなければいけなかったからだ。
代わりの者を呼んでくると言っていたのだがたまには1人でいたかったのでそうお願いした。
「私は大丈夫だからニコラは早くお母様のところへ行ってあげて。私はここで本を読んでいるから、代わりの方は私が中庭から戻ってからにしてくれないかな?一人で本を読んでいたいの。」
そんな訳で1人で中庭でのんびりしていたらいつもはふわふわと浮かんでいるだけだった光の玉が私の方へ集まってきた。
何となしに手を出してみると1番大きく、強く輝いていた琥珀色の光が手のひらにのった。
「こんにちは琥珀さん。今日もとってもいい天気ね。」
何となしに話しかけてみたら、その瞬間光の玉が小さな妖精に変わった。