#1
"今日、ぼくの妹が生まれる。"
3歳になり、貴族の嫡男として家庭教師による授業が始まった頃、お母様のお腹はとても大きくなっていた。
出産の日も近いと言う。
ぼくには妹が産まれるらしかった。
自分より幼い子を今まで見たことがなかったから、妹というのがどんなものなのか全く想像がつかなかった。
出産に間に合うようにと、お父様が普段より1ヶ月早く帰ってきたその日、妹は待ち構えていたように生まれた。
屋敷の中が慌ただしい。
お父様とぼくは同じ部屋で待っていたのだが、いつになくお父様が少しそわそわした様子で外を眺めている。
すると、お母様の部屋にいたはずの使用人が慌ただしく部屋に入ってきた。
「旦那様お話があります」
「生まれたのか?」
「はい、しかしお嬢様は非常に呼吸が浅く一時の予断も許さない状況でございます。ルシウス様と共に急ぎこちらへ」
その言葉にお父様とぼくはお母様の部屋へ向かった。
お母様は泣いていた。
その腕の中には生まれたばかりの小さな小さなぼくの妹がいた。しかし呼吸はとても浅く、段々とその回数も少なくなっていき、最後には呼吸をしなくなった。
お母様もお父様も使用人たちもみんな泣いていた。
ぼくは目の前の動かないそれが、とても怖くて、怖くて目が離せなかった。
すると、それから段々と淡い光が漏れ出してきて、その光が一段と明るくなった時、止まったはずの心臓がまた動き出した。
医師がすぐさま妹の容態を確認する、
「問題ありません、呼吸も正常です。…眠っているようです。」
お母様もお父様もみんな泣いていた。
しかし、先程と違いみんなの表情は明るくなっていた。
それでもぼくだけはあの光景が忘れられなくて、笑うことなんてできなかった。
"今日ぼくの妹が生まれた。"