表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界指揮官生活。  作者: 谷澤御嶽
46/56

第四五話 マスコミの反撃⁉ です!

『主張――野党は正しい政治の最後の砦だ――


 連合王国議会下院総選挙の公示からまもなく二週間が経つ。各政党の各候補者は連合王国全土をくまなく巡り、その主張を有権者に訴えかけている。言論により国の代表者を定め、国の舵取りを任せることこそが民主主義の根幹であり、我々は今まさにこれを体験しているのである。有権者は、候補者各自の主張に丁寧に耳を傾けて、国家と人民のための政治を行う候補者を選ばなければならない。


 ところで、今回の総選挙では新しい政党が登場した。彼の政党は、既存の政党を批判しつつ、自己こそが我が国を正しい方向へ導けると豪語し、人民から一定の支持を集めているとのことである。


 政治に新しい風が吹くことは歓迎すべきことであるし、有権者にとっても選択肢が増えることは喜ばしいことであろう。この点に批判すべき点は存在しない。


 ただし、彼らの主張には耳を疑う点が幾つもある。我らが掲げる高邁なる社会主義への、聞くに堪えない騒音の如き罵詈雑言には敢えて触れないでおくにしても、彼らの主張は、良識ある人民においてはその良識を疑わざるを得ないものがある。例えば、我が党を始めとする責任ある野党の意義深い活動に何ら目を向けずに、これをこともあろうに無能と罵り、我々を侮辱したことは、国民の代表たる政党として全く看過できないものである。この他にも彼らは下劣極まりない言葉を多く用いた主張を展開するのであるが、記載する意味はないだろう。


 彼の政党が仮に政権を奪取したとすれば、それは我が国の政治史において致命的な汚点となることは間違いなく、我が国の政治・経済を間違いなく破壊し尽くす危険な状況が顕現するのである。このような政党の国政進出、更には政権獲得を許容しても良いのか、良識ある有権者は熟考せねばならないだろう。


(人民新報 1631年5月7日)』




『社説――国民運動、新しさを前面に押し出すが――

 

 今年の下院総選挙は、今までとは違う風が吹いている。


 その風の中心にいるのは、なんといっても統一レグリア国民運動であろう。国民運動は、今回の選挙直前に急遽結党され、あまり長くない選挙期間であるのにも関わらず、精力的に選挙運動を展開し、国民からの少なくない支持を得るに至っている。先日行われた総選挙の投票先に関する世論調査では、野党第一党である労働党を抑え、国民運動が16.2%の回答を得た。与党である保守党の22.9%には及ばないものの、着実な支持を得ている状況だ。


 国民運動の支持層は、その支持母体であるレグリア民族商工会(☆)所属の企業を始めとする経営者層であるが、最近は労働者を始めとする一般市民にも急速に支持を広げている。その原動力となっているのが、国民運動党首、ザーグハルト=ブライフ氏の過激ともいえる演説である。ブライフ氏は、連合王国陸軍西部軍隷下の第一機甲師団、師団長との肩書を持つ軍人であるが、民族商工会の要請を受け、国民運動の党首として今回の総選挙に出馬を決めた。


 ブライフ氏は、一見すると温和な表情を浮かべる好紳士といった風情であるが、演説時には一変し、人が変わったように過激な口調と激しい身振り手振りで、与野党のみならず人民共和国や帝国をも痛烈に批判する。そのパフォーマンスとも言える演説は、現政権や我が国の政治や経済に不満を持つ多くの国民の心を捉え、熱狂的な支持を得ている。


 ブライフ氏や国民運動のこのような選挙運動が、我が国においては行われてこなかった新しい手法であり、その点については関心を持つべきである。しかし、その主張内容の一つ一つは特に目新しいものではなく、我が国の知識人が以前述べたような言説ばかりが目立つ。パフォーマンスのみならず、その政策や主張にも新しさがなければ、国民にも次第に飽きられ、政権奪取はおろか、議席の獲得すらも危ういだろう。有権者においては、彼らのパフォーマンスではなく、その主張をしっかりと吟味して、彼らを選ぶべきか否か検討することが必要となるだろう。


☆今日の用語

→レグリア民族商工会: ライデン=アンハイト重工業を始めとする連合王国の少なくない企業が参加する経済団体。国家の自律的独立と、反共産主義、資本主義自由主義体制の護持、民族主義国家の確立を目的としている。


(王国政経新聞 1631年5月9日)』




『国民運動党首ザーグハル=ブライフ 傍らの美女二人との関係は?


 毎回結果の見える下院総選挙だが、今年は一味違うようだ。


 既存政党を徹底批判し、自らを救世主として選挙戦に殴り込みをかけた国民運動。彼らはその有り余る資金力と、党首であるザーグハルト=ブライフの過激な演説を武器に、王国全土で熱狂的旋風を巻き起こしている。特にブライフ党首の演説は今までにないスタイルで、多くの有権者を国民運動の信者へと導いている。


 さながら新興宗教の教祖のような存在となっているブライフだが、本誌は、そんな彼を支える二人の女性の存在に着目している。


 残念ながら未だその名前や出自を掴むことはできていないが、年若く容姿端麗な彼女たちは、ブライフの選挙戦に二輪の華を添えるように、有権者のハートを掴む大きな役割を果たしている。


 彼女たちは何者なのか、また党首との関係やその出自について、本誌はこれからも追い続ける。


(日刊センペルヴィエント 1631年5月12日)』




「せ、せ、先生!! た、大変ですぅ!」

「一体なんだ? 騒々しいな……。ようやく長い演説が終わったんだから、少しは休ませてくれないかな……?」


 リモ・トルトでの支持をおおよそ固めたと判断した俺たちは、何とか委員会の言いつけに従い、王国全土を巡って遊説を行う旅に出ていた。今は王国北部のルンデーク地方、その中心都市であるフェルゼンに一時逗留し、支持を集めるべく活動を行っていた。


 フェルゼンは、上質な岩石が多く産出されることで有名で、採石業が街の中心産業であった。それと関係があるのかないのかは分からないが、この街及びこの地方は昔から保守党の強固な支持基盤で、その議席のほとんどは保守党が占めていた。


「休んでいる暇はないのです! それよりこれ、読んでください!」


 そう言うと、グローヴィアはたくさんの新聞紙を押し付けてきた。人民新報に王国政経新聞、日刊センペルヴィエント……、まあ全て全国紙であるが、特に共通性はないラインナップである。これが何だというのだろうか。


「……、へー、この辺りではそろそろ大きい祭りがあるらしいな。見世物もなかなか派手みたいだ。少し行ってみたい気もするな」

「そうそう、面白そうですよねー……、って、違います! そこじゃないです! ここ、ここです!」


 細くてきれいな指で示された記事を渋々読む。


「んん? なになに……、ああ、国民運動の記事か。まあ、そこそこの支持を集め始めているみたいだし、記事にもなるだろうさ」

「ま、まあ、それはそうなんですけれども……。批判ばっかじゃないですか。こんなんじゃせっかく集まってきた支持がなくなってしまうかもしれません」


 読んでみると、確かにどの新聞の記事も、国民運動に対してそれほど良い印象を抱いていないようだった。どれも程度の差はあれ、俺たちを否定的に評価しているようだった。


「確かに、あまり良いことではないのかもしれませんね……。何の話題にもならないよりかはマシでしょうが、流石にこれは……」


 ミュリアも新聞記事をざっと読みつつ、そう言った。


 うーん、どうしたものだろうか。新しい政党に対して既存の政党はもちろん、既存のマスコミが否定的な見方をするのは、別に不思議な事ではないだろう。むしろ、自然な反応とさえ言えるかもしれない。今までの価値観が通じなくなり、自分たちが過去の存在となるかもしれないときに、何も言わない人間はいないのである。普通は、何がしかの方法を以て抵抗し、抗おうとする。それはごく自然な事のように思う。


 俺としては、このような記事が出ることは予想の範囲内であるし、これからも、これよりはるかに酷い論評が書かれることも勿論あるだろう。しかしそれは、俺たちの活動がより大きなものとなり、国民に浸透しつつある証であって、それほど気に留めることでも無いような気がするのである。


(まあでも、黙ったままってのは良くないかもしれない……)


 この世界のこの時代において、新聞は国民の世論を形成する重要な道具の一つであることは恐らく疑いのないことである。新聞に書いてあることを無批判に受け入れる人々も、多分一定数は存在するはずだ。ならば、新聞記事における批判的評価が増えるとともに国民世論における国民運動への否定的評価も増える恐れはなくはないのであった。


 あまり聞いていなかったが、適当に流していたラジオ――たしかチャンネルはラジオSVだとか言ったと思う――からも、国民運動への批判番組が聞こえてきた。新聞に加え、新しいメディアであるところのラジオもそうなると、もしかしたら国民運動への支持に影響が出る可能性は十分ある。


「そう、だな……。二人の言いたいことは良く分かる。だが、俺たちにできることはあるか? チラシ配りやポスター貼り程度では、新聞の伝播力には到底敵わんだろうし、演説だってたかが知れている。そうそう取れる手段は無いような気がするのだが」


 パソコンだのインターネットだのがある時代ならば話は別かもしれないが、幸か不幸かそんなものは影すらない。


「ううん……そう言われると……」


 グローヴィアは、ぐぬぬ、とか言いながらシンキングタイムに入る。だが、思いつく気配は全くない。というか、本当に考えているのかもいまいち分からん。そのうち謎の体操タイムに入っていった。


「うーん。……私たちにできること……ですか……」


 ミュリアも悩み始める。まあ、なかなかできることはないだろうな。新聞を読む層は最悪捨てることも視野に入れて、活動を行っていく必要もあるかもしれない。今後の検討が必要になるな。


 そんなことを考えていると、突然ミュリアが大きな声を上げた。


「ああ! ありました! ありましたよ先生! 私たちにできる手段!」

「うぇ? えーっと、とりあえず言ってみてくれ……?」


 期待半分、諦め半分で俺は聞いてみる。


「私たちも新聞社やらラジオ局やらを立ち上げて、私たちの主張をガンガンアピールしていけばいいんですよ! そう、いつか前に話したじゃないですか! あれ、あれですよ!」


 新聞にラジオを自分たちで……? あ、うーん、確かに前そんなことを言っていた気がするような、しないような……。


「あー、そんなことも言ってたかな? しかし、えと、本当にやるのか……? 俺はてっきり冗談かと……」

「いえいえ、本気ですよ、私は! というか、今思い出したんですけど、これ、ファナちゃんからきた手紙です。これに書いてありましたよ。こっちでなんでも好きにやっちゃって良いって」


 渡された手紙を読んでみると、ミュリアの言うとおり、手紙で聞いた内容の全ては俺にその判断権限があるとのことであった。なんなら、移動手段である飛行機については、何とか商工会所属のトラウム航空機工業と言う会社が無償で贈る旨の記載もあった。出来上がり次第届けてくれるらしい。


 それはさておき。


 やっても良いということだし、やるだけのお金も恐らくあるわけだし、やるだけやってみるというのもアリなのかもしれない。俺はそんな気がしてきた。


「うーん。そうだな、やるだけやってみるか。試してみる価値はあるだろうし」


 そう言うと、ミュリアは眼を輝かせて応える。


「でしたら、会社の設立や手続きはお任せください! 早速、取り掛かります!」


 そう言うと、ミュリアはあっという間に姿を消した。


「……大丈夫かな?」


 一抹の不安を覚えつつ、変な踊りを踊っているミュリアと共に見送るのであった。


どうにか投稿できました。しかし出来は微妙かもしれない……。精進していきたいと思います。

次回も金曜日か土曜日くらいには頑張ってあげていけたらと思います。よろしくです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ