打ち上げパーティー
54.打ち上げパーティー
いこいサーキット、シーズン終了打ち上げパーティー。下妻サーキット行ってた賀茂田にトシ、ケンちゃんとバレが、先に帰ってきた。いこいサーキットで留守番してくれてた、バイトの樋口、派手なシュシュのポニーテール。ツバメの母、幸音も参加した。
その場に遅れてきたツバメとジローは、遅れた理由を報告した。
「実は、帰って来る途中、二人で話しをしまして、いろいろあって、結婚の約束をしました」みんなに向かっていった。「そこで、急ではありますが、幸音さん、バツイチで成人した子供がいる47歳の中年男ですが、どうかツバメさんとの結婚を許してください」ジローは、ツバメの母の幸音に向き直り、腰を折って頭を下げた。「お願いします」ツバメもそう言い頭を下げた。
驚いた様子で二人の下げた頭を見下ろす幸音。大きく息を吐いた。「あなたたちが、いつも一緒にいるとこ見てて、そんなこともあるのかなって思ったことはあった。でも、本当になるなんて」あきらめともつかない表情でジローを見た。「一つお願いしていい?ツバメの食事。ちゃんと毎日栄養取って、大食いとか無理なダイエットとかしないように気を付けてくれる?それができれば、きっとこの子、健康でいられるから。」そう言って右手を差し出した。
ジローは、その右手が承諾のしるしだと自分も右手を出し、軽く握った。「いや、オレがひとり者でいい加減だったから、ツバメさんのほうがすごく気を付けてくれてます。だから、心配は無いです。大丈夫です。」ツバメも自信ありげにうなずいた。
「そう、良かった。これからもよろしくお願いしますね」そう言ってにっこりとした。その笑顔にジローとツバメはホッとした。
「結婚式はどうすんだ」ケンちゃんが唐突に聞いた。「俺、葬式ばっかみてっから、たまには結婚式とかみたいじゃん」
「そんな事、しないよ」ツバメがすぐにそう言った。
「なんだよ、なあ」バレに同意を求めるようにそう言った。「そうか。じゃあ、ウエディングドレスは無理でも、来シーズンに着る新品のライディングスーツ出来てたろ。それを着てこいよ。それでみんなで記念写真撮ろうぜ」
「えー、本気?」
「あったりめえじゃん。なあ」そういってまたバレに同意を求め、「なあ」トシにも同意を求めた。
「ジローさん、うちの家族も呼んでいいですか」
「ああ、もちろん。ずっと世話になってるから、来てくれたらうれしいよ」その答えを聞きながら、トシは外に出て行った。
「幸音さん」そう賀茂田が呼んだ。そして何か耳打ちする。
「じゃあ、着替えてこようか」そう言ってツバメと控室に入った。
「新郎は」そう言って見回した。
「バレ、お前のネクタイ貸してみろ」そう言って、ジローに渡した。
「俺もいつもネクタイ持ってるけど、黒だかんな」ケンちゃんがそう言った。
ジローは、息子の典行に電話をした。「なんか、急だけどこんなことになっちゃった。ノリをまた巻き込んじゃうことになって、悪かったな」
「いや、僕もツバメさんと会った時から、そんな予感、有ったから。」そう言って笑い「でも、きっと母さんも女の感ってやつだったんだね」ハハっと声に出して笑った。
ツバメが幸音の白いシュシュにピンクのいこいサーキットのタオルでブーケに似せて花飾りを造り、真新しいライディングスーツで出てきた。簡単な化粧をしたツバメは、綺麗だった。
「ほら、ジローちゃん、横に立って」ケンちゃんに促されて照れながら並んで見せた。
「おい、バレ、お前神父やれよ」
「エー無理だよ」ケンちゃんが無茶を言う。
「みんな、知ってます?こいつ司法試験とかいうの、受かってんですよ。法律の専門家。親も弁護士。」
みんな、へーとかえーとか言って驚いた。
「だからって、無理だよ」
「しょうがねえな。じゃあ、俺が言ってやるよ」そう言ってジローとツバメに向き直った。
「斉藤次郎君、浅野つばめさん。お互いに結婚することを誓いますか。」唐突に言ったケンちゃんの言葉に、一瞬顔を見合わせた後頷いた。
「ハイ!」二人は声を合わせてそう答えた。
「オメデトー」「オメデトーー」賀茂田、トシ、幸音、ケンちゃん、バレ、翔馬、智子、茉莉、桃川、バイト。みながお祝いを言ってくれる。
「ありがとうございます」二人でそう言い、もう一度目を合わせたあと頭を下げた。
「まさかこの子が結婚できるなんて。でも、その相手がこんなに年が離れたおじさんだなんて。あたしのほうが歳が近いんじゃない。あっという間に未亡人になっちゃうんじゃないか。」
「ヤナこと言わないでよ!」
「さっき、ツバメにもそう言われたんだ」ジローはそうバラした。みなが笑った。