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下妻サーキット  作者: のーでーく
37/62

ジローのシーズンエントリー

37.ジローのシーズンエントリー

「はい、これ」まだ雪の心配もある3月初旬。いこいサーキットの朝は、その日の路面状態により、コース入時間が変動する。その日は、朝から晴れた。しかし、風のない放射冷却で路面温度がかなり低く、スリッピーな路面状況だ。早めに入ったジローは、太陽が路面を温めるまでの待ち時間の間、バレに教わったストレッチで身体をほぐしていた。駐車場に段ボールを敷いた上にヨガマットを敷き、下半身の筋肉や靭帯を入念に伸ばす。そこにツバメがプリントアウトした用紙の束をジローの顔の前に差し出した。

「シモツマサザンコースのミニモトカーニバル2016の競技規則書。初戦は4月。12月までに全5戦。それまでにきっちり練習しといてよ」そう言っただけですぐに事務所に戻って行った。

SN2クラス(シモツマ・ノーマルミニ・セカンド)シモツマサザンコース1周約1キロメートルのコースで4月からレースごとの順位でポイント付けて、それを合算して年間順位を決める。クラスごとのシリーズチャンピオンを争う。

オフシーズンの間、ツバメは何度となくジローにシリーズ参加を進めた。目標を持った方が、技術の向上につながると言った。確かに、日々の練習のモチベーションを1段上げる効果はあった。去年の初めてのレースから半年、それなりに練習走行も積んだ。いこいサーキットはもちろんのこと、シモツマサザンコース、アラカワスポーツウェイ、霞ヶ浦モーターランドでも走行を重ねた。いこいサーキットでは、抜かれるよりも抜くことの方が、多くなった。ジロー自身も、サーキット走行に慣れてきたことを実感していた。

マシンのカウリングには、いこいサーキットのピンクのステッカーが、ツバメのマシンと同じ形で貼られた。ジローも、名前だけは、いこいサーキットレーシングチーム所属のライダーとして登録エントリーした。

そしてシーズンが始まった。


初戦は、4月。まだ寒さが残る日が続いたせいか、エントリーも少ない。ジローがエントリーしたSN2クラスは、10人での争いになった。レース参戦2戦目のジローは、ツバメとトシがサポートに来てくれ、レースに集中できた。予選も難なく走りきり、42秒前半で4位につける。

そして決勝、スタートが決まり、1コーナーで2位につける。順調にトップに食らいつく走りで、順位を守っていたが、ラスト2周でトップのスパートについていけず離される。そのせいで、スリップストリームを後続のマシンに使われ、順位を落とす。しかし、そのマシンに食らいつき、その後は順位をキープして4位表彰台を獲得した。初戦にして表彰台を獲得、ポイントも13ポイント獲得した。マシンに貼ったいこいサーキットのステッカーも、宣伝効果をしっかりと果たした。

第2戦は単独での参戦になった。しかし、何人か挨拶するような顔見知りもでき、緊張することなくレースに挑むことができた。そして、そのレースも、4位の成績を収めた。第3戦目7月22日にトシがサポートしに来てくれ、バレやケンちゃんも応援に来てくれた。そのレースは、トップで走っていたライダーのミスに助けられ、棚ボタながら初優勝となった。


「オメデトー」いこいサーキットにみんなが集まって優勝報告した。シャンパンタイプのジュースで乾杯した。賀茂田は、せっかくだからと一人ビールを開けて飲んだ。

「まさか、こんなにいい成績になるなんて、予想していなかった」

「練習走行のデータから見たら、ちょうどいいくらいの成績かな。でも、優勝は、まだできないと思ってたんだけどね。運も大事だから」ツバメもかなりうれしそうにそう言った。

いつの間にか、ケンちゃんも缶ビールを飲んでいた。「これで、最終戦に勝っちゃえば、シーズンチャンピオンになれちゃうんじゃないの。遅いクラスだってチャンピオンに成れれば、それなりうれしいでしょ」

「ケンちゃん、もう酔ってんじゃない?オレがチャンピオンはないでしょ」ジローもまんざらでもない。

「そっか。じゃあ、無いな。チャンピオンは、取りたいと思わなきゃ取れるもんじゃないからな。取りたいと思ったって、取れないもんな。な、ツバメちゃん」ケンちゃんが冷やかす。

「ムカつくー!」

「まずはあれだよ、いつもカモさんに言われてるやつ」そう言ってバレに目配せする。

「ちゃんと飯を食え、だよね」バレが答える。

「もう、みんなして言わないでよ」


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