ジロー、翔馬に瞬発力の練習を教わる
36.ジロー、翔馬に瞬発力の練習を教わる
「ジローさん、これ」そう言ってトシの息子の翔馬が差し出したのは、コンパクトな家庭用ゲームのモグラたたきだった。
「これ、翔馬のじゃないのか」
「そうだよ。でも、父さんが改造して、高速で動くようにしたんだ」そう言ってスイッチを入れた。ガシャガシャと結構大きな音がする。「それで、タイマーとスピードを調整して」そう言ってスイッチを動かすと一層音が大きくなり、モグラが穴から出たり引っ込んだりの動きが速くなった。
「なんじゃこりゃ!」ジローがその動きに驚いていると翔馬がピコピコハンマーを構えた。
「じゃあ、見本見せてあげる」そう言ったと思ったら。パン!パン!パン!ゴツ、パン!パン!パン!パパン!とハンマーを振り下ろし、あっという間に穴からモグラが飛び出した。
「スゲエ!超ウメー!」ジローは目を丸くして驚いた。
「このハンマーもうるさいからって、柔らかいスポンジにしたから最初難しかったけど、すぐ慣れた。でも、母さんがうるさいからダメって言うから、あんまりやってないんだ。」
「こりゃ難しいな」
「ボクも最初そう思ったけど、練習してたらできるようになったよ。おじさんも練習するときっとできるようになるよ」
「そうか。出来るかな。じゃあ、練習してみるよ」翔馬の手前、少しくらいできるようにならないと。「上手くできなかったら、やり方教えてくれよな」
「よく見て叩くだけだから、すぐできるよ」翔馬は、簡単にそう言った。
「じゃあ、一回やってみるか」そう言って、さっきの翔馬を真似て、ハンマーを構えた。
「タイマーが終わるまでモグラを飛び出させないと負けだからね。最初はゆっくりのやつでやるよ」
「おう、いいぞ」その言葉を合図に、翔馬がスイッチを入れた。ギュワンギュワン、ガシャガシャと音を出しながらモグラが出たり引っ込んだりする。それをめがけてハンマーを振り下ろすジロー。しかし、モグラが引っ込んだところばかり叩いて1つも飛び出さない。それに焦って、一層力を込めて叩きまくって、やっと一つ飛び出したところで、タイマーが止まった。
「超ムズー、オレが低速で1個だけなのに、翔馬、やっぱ天才なんじゃない?」
「ジローさんだって、初めてで1個出来たじゃん。練習すればすぐできるようになるよ」
「そうか、練習か。じゃあ、がんばるよ」