ジローとツバメのトレーニング
35.ジローとツバメのトレーニング
(トレーニング、スタート。ブレーキング。反射神経)
「NSFは9500回転でピークパワーだから、2000回転低い7500から9500の間でアクセルをキープして」ツバメの指示で、ジローがタコメーターを睨みながら回転を合わせる。「こうか?」
「フロントブレーキをかけて、少しクラッチを繋ぎ気味で、チェーンを張って」ツバメは、マシンの横に立って声をかける。
「こう?」自信なさそうらジロー。
「動いたら駄目だよ。フライングだからね。頭下げて、ケツを引いて、フロントに荷重かけて」次々と指示を出すツバメ。「シグナルレッド点灯。スタート!」
その掛け声を合図に、アクセルを開け走り出すジロー。
「クラッチ、しっかり一発でつなぐー!」ジローの背中に向かって大きく声をかけ見送る。しかし、少し首を傾ける。ジローは、20mほどでブレーキをかけ、Uターンして戻ってくる。ツバメの前で止まってヘルメットのシールドを開けた。
「なんか、変。ギクシャクっていうか、遅いし、ちょっとキモイ」ツバメの評価が厳しい。
「キモイって。始めたばっかなんだし、下手なのはしょうがないでしょ」ちょっと、キレる。
「まあ、あとは、反復練習っきゃないか。自主練」ツバメは、突き放した物言いで、くるりと後ろを向き、事務所に去った。
「コーナーに入る前のブレーキング、アクセル閉じてからブレーキングまでの間、待ってちゃだめだからね。だからって、ガツンとかけるとバイクの挙動が乱れてバランスが悪くなるから、ムギュッって感じで。アクセルとブレーキのポイントを決めて。メリハリは必要だけど、急激な荷重変化はバイクがバランス崩すから、繋ぎを意識して。ちゃんと体とバイクの姿勢をスムーズに切り替えて、一つの流れとして動くように」いこいサーキットのコースを数周したところをツバメが見て、その日の課題を伝える。
「なんか、難しいな」
「体とバイクのコントロール。そのための反復練習」ツバメは、少しの課題を与えるだけ。ジローは、課題を意識した練習をし続ける。