表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下妻サーキット  作者: のーでーく
28/62

ジロー、北野晴夫を知る

28.ジロー、北野晴夫を知る

 エントリーしてから、ジローは自分の出るレースを調べた。SB43とは、シモツマのビギナーで1周のタイムが、43秒未満ということだ。しかし、出場エントリーが少ないため、他のクラスとの混走になる。そのクラスは、バイク自体はジローと同じNSF100だが、速さのレベルが格段に違う。

ホンダレーシングカンパニー、HRCが主催するNSF100チャンピオンシップ。日本各地のサーキットでシリーズ戦が開かれ、全国大会で日本一を決める大会があるほどクラスだった。だから、同じようにスタートしても二つに分かれて争うレースなので、ほとんど絡むことが無い。エントリー数と競技進行の効率化のための混走らしい。

去年のレース結果や、各地のサーキットのコースレコードタイム。

「あっ、また同じ名前だ……」

そこに、何度も出てくる名前に気付いた。なぜか、すごくジローの印象に残った。北野晴夫。そのプロフィールを探してみた。歳がまだ13歳の中学一年生。写真で見る限り、小柄で痩せ型。身長も150cmあるのだろうか?体重も相当軽いに違いない。下妻サーキットでの予選タイムが、ダントツに速い39秒482。

「待てよ。ってことは、1周当たり3.5秒速いとすると、12周だと……42秒。こりゃ、かなりの確率で周回遅れになるな。」しかし、ジローがそれをどうにかできるわけではない。

「ツバメが言うように、コケない、失敗しない。だな」なんにしてもジローにとって未知のことなので、対応も何もない。なるようになるだろうと思うしかない。とそのとき、携帯電話に着信が入った。マルヤからだ。

「ジローさん、すみません」桃川からだった。

「お疲れさま。どうかした?」

「実は、エントリーミスがあったんです。自分、間違えてST100クラスにエントリーしちゃってたんです」

「エッ?STってどんなクラス?レースは出られるんでしょ?」

「はい、バイクはNSF100のノーマルだから、問題ないんですけど。だけど、初心者クラスってわけじゃなくて、普通のある程度走れるクラスなんですよ。それが、前言っていたNSFチャンピオンシップと混走になるクラスだったんです」

「へえ、じゃあ桃川君は、がんばって速く走らなくちゃなんなくて、オレは、初心者のSB43でいいんでしょ」

「いや、違うんです。ジローさんもST100クラスでエントリーしてるんです」

「ウソー!無理でしょ。さっき、ネットでNSFクラスのサーキットタイム見て、ビビってたんだから」

「エントリーの受付票確認してもらっていいですか?」ジローは、ファイルに挟んであった書類を確認した。

「あっ、本当だ」エントリークラスがST100になっている。

「どうします?」

「どうしますって、出れないわけじゃないよな」

「エントリ台数が少ないから、予選落ちは無いと思います」

「じゃあ、ST100に出るしかないよな」

「そうですよね。今更クラス替えられないですし。」

「わかった。ちょっと、プレッシャーが重くなったけど……」そう言って電話を切った。不安が大きくなり、落ち着かない。眠れない夜になりそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ