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下妻サーキット  作者: のーでーく
22/62

ジローも練習

22.ジローも練習

キュキュッ。ツバメがジローの前で停車する。

「こんな感じ。分かった?」

「なんとなく……」苦笑いでごまかすジロー

「じゃあ練習。アッ、ギヤは1速でアクセルコントロールできるように」

「……」

「じゃあ、練習開始。とりあえず少しでも長く走る。ひたすら。体力か集中力が無くなったら、練習を止める。それがケガをしないために必要な事。ケガしたら、練習できなくなるからね」

ジローは言われるままNSF100のエンジンを掛け、走り出そうとした。

「ダメー!」ツバメが大きな声で叫んだ。慌てて止まるジロー。

「最初に言ったでしょ!誰もいなくても必ず安全確認はするー!」

「アッ、スミマセン」ジローは改めて左右に首を振って後ろを確認し走り出した。

「どうだい?ジローちゃんは?」

「水漏れのお礼はこんなもんでしょ」

「ツバメもまともに練習再開しないと腕が鈍るぞ」

「カモジー、あの人、30分したらやめるように言って。本気で上手くなりたいなら、言うことを聞くようにって」そう言ってツバメは、事務所に引き上げた。


ジローはNSF100のアクセルを少し捻り、エンジンが回転を上げる。クラッチをつないでゆっくりと走り始める。時計回りで左側から斜め右前方のコーンに向かう。右ひざを少し開いて、タイミングをつかむため、軽くブレーキング。車体を倒すようにして右回転。思ったよりも大回りになってしまう。ハンドルを切って回ろうとしてバランスを崩す。が、何とか1度目の転回を済ませ、少し直進。そして2度目の挑戦。ぎこちない走行練習を繰り返す。

『アッット、ヨッ…、ウッ……当たり前だが、上手くいかないもんだ。でも、車なんかよりずっと操っている感が……下手なのも、自分のせいなのがはっきりわかるもんだな』

失速し、ハンドルを切りこませ、転びそうになる。足をついて、かろうじてこらえ、また走らせる。何度か続けたあと、逆回りに。

『左回りのが、ちょっとラクか?』続けて走らせる。

『まあ、普通に回れたか?』ギクシャク感の少ない走りが出来た。

『ハハッ、ブーン、キュキュッ、パタ、ズズーだったよな』ジローの目が、キラキラ輝いて、頭がスッキリ、走らせることだけに集中している。心臓の鼓動が高鳴る。ワクワクして喜び湧き上がってくる。

『ブーン、キュキュッ、パタ、ズズー、ブーン、キュキュッ、パタ、ズズー、ブーン、キュキュッ、パタ、ズズー……』ツバメよりもゆっくりで、ぎこちなく狂うリズムをつぶやきながら、周回を続ける。

『なんだか、面白いなあ。こんなに楽しいもんだったかなあ。これが、もっとスムーズに、もっともっと速く、もっと鋭く走れたら』そう思ったとき、賀茂田が手を上げているのに気づいた。賀茂田の前までマシンを進め、止めた。

「なんですか?」ヘルメットのシールドを開けてそう言った。

「今日は、終い。ツバメコーチが30分したらやめるようにって」

「ツバメコーチって?エーー、ナンで?だってまだ8の字一回もやってないっすよ」

「本気で上手くなりたいなら、言うことを聞くようにだってよ」

「だって、やっとちょっと慣れてきたと思ったばっかですよ」

「ジローちゃんは、ライダーじゃないから、バイクを走らせる身体じゃあ無いってよ。だから、今日のところは、言うこと聞いてやめときなよ。いきなり詰め込んだら、続くもんじゃない。ケガしたらお終いだろ。水道屋だって、1日でなったわけじゃないだろ」

「そんなー」

「今日のところは我慢しな。やりてえのを我慢するのも長続きのコツだからな。時間があるんなら、やったことをノートにつけて忘れないようにな。そんで、バイクの事でも良ーく考えてると速くなるぞ」


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