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灼熱の海の中

作者: G






灼熱の海の中


もがいて、もがいて




息も出来ずに、流れ行く水さえも飲み込めず



ただ、喉は枯れ







そして朽ちる






























チ ル ド レ ン





























カーテンがキラキラとなびく


窓から陽が入ってくる





まぶしくてとてもじゃないが目を開けてはいられない。


そう思いつつも窓から離れる事もなく、まぶしい光を浴び続ける。



夏の始まりは少しだけ


浮かれてしまう気持ちがあるけど



何だか、悲しくなる





こんなにも、優しく照らすなんて


これじゃあ、嫌いになれないじゃないの



夏は嫌いよ


嫌というほど、熱を感じさせるから




























ああ、もうすぐ私は朽ちるでしょう


何も知らず



何も分からない子供のまま


従う事しか出来ずに


もがく術さえも知らない、無垢な私は



きっと自分で自分の首を絞め


朽ちていくのでしょう
































あなたが私を呼ぶ声が聞えるわ



いつもなら私はあなたの声を聞けるだけで嬉しいのだけれど


今は会いたくなかったのよ



だって別れようなんて言葉


聞きたくないの


































君は1人、たった1人



キラキラと輝く光に包まれた


この透明な空間にいた



もしかしたら、今にも消えるんじゃないかと


不安になった



そして名前を呼んでも彼女は、


答えなかった



まるで俺の存在に


気付いていないような



違う世界の人なような









そう思ったら体は勝手に動いていて








「断ったから」


君の体は温かな場所にいたにもかかわらず


酷く


冷たい




「どうして」


返ってきた言葉はとても震えていて思わず抱きしめていた腕に力が入る



「俺は君以外と結婚などありえない」


「でも、お父様は納得しないでしょう」


「その時は、君を選ぶから」
































ねぇ、どうしてあなたは名家の家に生まれてしまったのだろう



あなたに恋に落ちたときには


もうすでに



あなたには婚約者がいて




ああ、これは運命だったのでしょうか

































「だから・・・君も結婚しないでくれ」


「お父様の言いつけは絶対なのよ・・・」


「もう、式の準備は」


「出来ているわ」







なぁ、どうして君は名家の家に生まれてしまったんだ。





君に魅せられていた時には



もうすでに君には


将来の夫と呼ぶべき人がいて





ああ、これは何かの定めか









一滴の涙が伝う頬



それはどちらの涙だったのか






































「私は何も知らない無垢な子供」


「俺は言う通りに従う事しか出来ない子供」































だけど――・・・・













これから先



私達は罪を犯すでしょう




これから先



俺達は裏切るだろう








それでも手放したくはない




大切なものが出来たんだ

















「私のお父様は納得しないわ」


「あたりまえ・・・だな」












私には将来を共にする人がいて


彼には将来を約束した人がいて




親の決められた道に



何を


幸せになれるのだろうか











初めからこうなる事を予想していた











あなたに出会ったときから


君に出会ったときから

















もう離れられない

































どうして悲しい物語りは



ロミオとジュリエットは





結ばれてくれなかったのか

































「ここを卒業したら」







































何も間違ってはいない





決められた未来に何を掴めようか








そんなモノ蹴散らして





行ってやろう






































「共に家を捨てて」

































ああ、私たちの心はもう決まっているのよ







































ああ、喉が渇く





灼熱の海の中






私は息も出来ずに、流れ行く水さえも飲み込めず



もがいて





きっと自分で自分の首を絞め


朽ちていく・・・









・・・だけど、そうなる前にあなたは私を潤してくれるわ



そうならないためにあなたは私を、繋がれた手を放さないでしょう












もう離れる事は不可能なの









































「2人だけで、誰にも邪魔されない所に」

































君の体が熱くなっていく





まるで生き返ったかのように熱く


この温もりをもう手放したくはない







手放せるはずがない










君が朽ちる前



俺が潤してあげよう



















































「行こう」





心はもう決まっている












後は実行するだけで





「あなたとなら、どこへでも」





































家を捨てて



親を裏切り




決められた道を蹴散らし








2人は




手を繋ぎ、抱きしめあって













共にどこまでも














































カラカラと光りだす夏は目前

































































涙はもう枯れている






























































駆け落ち――END...

































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