表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

シゲマツ

作者: そらまめ堂

私はシゲマツについて卒論を書こうと決めた。シゲマツは私の今住んでいる町で度々目撃情報のある事だ。シゲマツは月に数回程度目撃されていた。目撃した人の話によると、シゲマツは三本足をまるめて2を掛けて3で割ったようなものだという。それが動物なのか或いは何らかの現象なのか、その辺はよく分かっていない。とにかく目撃したほぼ全員が、シゲマツを三本足をまるめて2を掛けて3で割ったようなものなんだという。他にシゲマツを形容するものが無いのか尋ねてみても、皆一様に「見てみるのが一番良いですよ」という反応で、その少し得意げな反応は正直私を苛立たせた。

私はシゲマツを目撃するべくシゲマツ偵察団なるものを結成し、卒論を書くにあたり先ずシゲマツを目撃することを第一目標とした。団員は、まあ、私だ。シゲマツは実に神出鬼没で捜索は難航した。ただ目撃者の統計を取ってみると、目撃時に靴下が濡れていた者が8割居たことから、足元が濡れている事と関係があるのかも知れないと思った。そこで私は長靴を履き、靴下を履いてその長靴の中に常に水を張っておいた。目撃地点に目立った共通項は見当たらなかったので、私はとりあえずその水浸しの長靴を履いて町中を徘徊することにした。

が、1か月経ってもシゲマツは現れなかったのです。おまけに足が水虫に冒された。私は必死で足の痒みと闘いながら、もう、シゲマツはこの町の集団幻影でした、みたいな結論でいいんじゃね?的な気持ちになった。私はついにそう結論付けて、長靴と足をドライヤで乾かしてから皮膚科に向かうことにした。しかし、驚いた事に、乾いた靴下を取りに向かった寝室でシゲマツを目撃したのだ。私はだんだんと怒ってきた。私は怒りに向かっていました。向かって怒ったとも言っても良い。一か月もホームレスみたいな格好で外を這いずり廻った挙句、水虫まで患ったといふのに、自宅の寝室で目撃したのだから、私の苦労の価値はまったきマキタまたまかったのだ。しかし、とりあえず私は怒りを鎮めておきます。シゲマツを観察する事に徹す。結構な間シゲマツを目撃した気がするが、私の脳内には脳内伝達物質のアドレナルリンやらブタキストアトサキサンチン、タナカといったものが必死で分泌されていたので、結局30秒だったのか3時間だったのかは判りません。驚いた事にシゲマツは三本足をまるめて2を掛けて3で割ったようなものだった。この表現は実に的確で、「ああっ!正にソレです!」と感じるものだった。おそらく、初めは皆これをどう言っていいのか相当に悩んだ筈である。その皆が言いたくて言えなかったものを、恐らくある時誰かが思いついたのだ。これは、三本足をまるめて2を掛けて3で割ったようなものだ!と。以前自身が問うた質問を自問してみても、それがいかに的を得ていないかがわかる。シゲマツは三本足をまるめて2を掛けて3で割ったようなものであり、生物とか非生物とかの問題では無いのだ。私は早速論文を仕上げて提出することとした。

後日、私は教授に呼び出され、論文を書き直さなければ落第である旨を伝えられた。シゲマツ如きで大学を落第するわけにはいかぬ。私は納豆とブラジル専門店の関係性について論文を再提出しようと思う。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ