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はい、こちら遺言サービス課です

作者: 長井瑞希

「はい、こちら遺言サービス課です」

「えっと、遺言を頼めるんだよね?」

「はい。どのような用件であっても我々が責任をもって管理し、遺言を残した方がお亡くなりになった際に我々が遺言を届けるというシステムとなっております」

「どんな内容でもいいんだね?」

「はい、我々が責任をもって管理し、お届けします」

 そっか……。なら、いいかな。

「遺言を残す前にさ、少ししゃべりたいんだけど、いいかな?」

「ええ。我々は常に皆様をサポート出来たらと思っていますので、問題ないです」

 我々、ね。まぁいいや。

「遺言サービス課ってさ、本当に地球上に存在するの?」

「といいますと?」

「ほら、遺言を管理するとかはまだ人間でもできるんだよ。でもさ、死んだときにすぐ遺言を届けるなんて、なかなかできないことだよね?」

「……」

「つまりさ、君たちは人間でない何か、例えば天使とか、とにかくそういった人間より高位の者だと思うんだよね」

「……それは」

「まぁ、そんなことはどうでもいいんだよ。でもね、人間じゃないと仮定して、その人間じゃない誰かが、人間のために遺言サービスなんてものをやっている。しかもそれが何かの会社みたいな組織と来たもんだ。そうなら、僕も取材してみようと思ってね」

「取材、ですか」

「ああ。僕には大した人脈もないんだけど、一応部下がいるくらいには役職についててね。その部下のことが気になるんだけど、そういうことを相談する人が身近にいなくてね。こうして電話してみたってわけさ。人間の会社と同じような組織であるだろう遺言サービス課ってものにね」

「それは、恋愛などですか?」

 ああ、そういう捉え方もあったのか。まだまだ視野が狭いな。

「いや、恋愛ではないよ。人間関係、というかぶっちゃけると誰を昇進させるか、なんだ」

「でも、正直私ではお力になれないと思いますが……」

「いや、それはちがうよ」

「え……?」

「たとえ違う種族、違う組織だとしても、現場の声だとか、下の人たちの声ってのは案外似たようなものなんだよ。君が人間じゃないのかどうかはあくまで仮定の話だが」

「はぁ、そうなんですね」

「そうだとも。だから僕は君の職場の雰囲気とか、状況とか、どんな人がよく働いているのか聞きたいんだ」

「それなら、私にもできそうですね」

「ああ、頼むよ」


「……と、こんな感じでいいですかね?」

「あー、じゃあ最後に貴女のことを少し」

「……私は一番ダメなんですよ。先輩には怒られてばっかりだし、後輩より仕事は遅いし……」

「……そっか。ごめんね変なこと聞いて」

「い、いえ、別に。それより、本題の方は・・・」

 本題……? ……ああ、遺言の方か。

「私は何かを与えるものになります。だから探さないでください。後はあなたに任せます」

「以上でよろしいですか?」

「はい、それでよろしく。今日は悪かったね」

「いえ、これが仕事ですから」

「じゃあ、明日から頑張ってね」

「はい!」

 ……本当に、明日から頑張ってくださいね。


 翌日。遺言サービス課にある情報が届いた。

 なんでも、昨日遺言を残した人がその日のうちに消えたとかなんとか。

 よって、遺言を届けることになった。

 規則で、遺言を届けるのはそれを受け取ったオペレーターとなっているので、昨日の女性が届けに行った。

 だが、その場所は地球ではなく、天国と地獄の手前、えんま城だった。

 ちなみに、遺言サービス課はえんま城の一階にあって、今回届けるのは三階だった。

「私は何かを与えるものになります。だから探さないでください。後はあなたに任せます」

「これが遺言です」

 だが、届けに行った部屋の中には誰もいなかった。

「……?」

 と、奥にある机の上に手紙があるのを見つけた。

 そこには、

「えんま面倒になったので今これを読んでいる遺言サービス課の貴女にすべての権利を譲渡します。なお、これは上司からの正式な命令であり、人事異動です☆」

 とあった。

 ……。


 今日もえんま城は通常運行している。

 今日も遺言サービス課は健在だ。

「はい、こちら遺言サービス課です。あ、えんま様。今日はどうされ……遺言ですか? はぁ……」

 

後日談。

新えんまは旧えんまを探すため、えんまの職をなすりつけ、見事旧えんまを探し出し、働かせました。

そのあとなぜか幸せな結婚をなさったとか。

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