ふわふわくもくも
「おばーちゃん、おじーちゃんはどこにいっちゃったの?」
手を繋いでいる孫がじいさんの棺の前で私に聞いた。
「おじーちゃんはねぇ」
孫から目を離して、真っ青に晴れ上がった空を見上げる。
ちょうど、ひとつだけふわふわ浮いている雲を指す。
「あのふわふわしてる雲の上にいったんだよ」
目頭が熱くなった。
「なんでおばーちゃんをおいてっちゃったの?
けんかしたの?」
「ケンカなんてしてないよ
ただ、おじーちゃんはアヤカもおばーちゃんもずーっと見守るために雲の上にいったんだよ」
小さな孫の頭を優しく撫でる
ばーちゃんが死んだ。
じーちゃんはずっと前に、私がちっちゃい時に死んだ。
だから私はおばーちゃん子に育った。
真っ白な棺に入って綺麗に化粧をされ、花で埋め尽くされたばーちゃんの寝ているような顔を見るたび涙がこぼれ落ちる。
「おばーちゃん、おじーちゃんはどこにいっちゃったの?」
私の声?
「おじーちゃんはねぇ」
おばーちゃんの声だ。
「あのふわふわしてる雲の上にいったんだよ」
空には雲がひとつだけふわふわ漂っている
「なんでおばーちゃんをおいてっちゃったの?
けんかしたの?」
「ケンカなんてしてないよ」
「アヤカをずーっと見守るために雲の上に行ったんだよ」
「ばーちゃん、そこに居るの?」
涙がとめどなく目から落ちる
『アヤカ、ずーっと見守ってるから、泣くのはやめて笑いなさい』
ふわふわな雲からばーちゃんの声が聞こえた気がした。