第6話 雨が、答えを運んでくる
翌朝も、雨は止んでいなかった。
目を覚ますと、手の中にまだ羽根があった。
眠っている間に落とした気配はない。
灰色の羽根は、相変わらず濡れていない。
それどころか、指に触れるたび、ほんのり温かい気がした。
……気のせい、だよね。
そう思いながら、私は上体を起こす。
——その瞬間。
雨音が、変わった。
耳に入る情報が、昨日までと違う。
音の粒が、細かく分解されて、意味を持って流れ込んでくる。
屋根の上。
軒先。
通りの向こう。
雨の動きが、立体的にわかる。
「……っ」
慌てて、羽根を見る。
羽根の縁が、淡く光っていた。
金でも銀でもない、雨雲みたいな色。
——共鳴してる。
理由はわからないけれど、そう確信できた。
私は羽根を布で包み、ぎゅっと握る。
すると、雨の情報が、少しだけ遠のいた。
完全には消えない。
でも、抑えられる。
……これ。
この羽根があると、能力が強くなる。
そして、隠しにくくなる。
マレナが外から声をかけてくる。
「ユイ、起きてるかい? 出るよ」
「はい、今行きます」
私は羽根を胸元にしまい、深く息を吸った。
外に出ると、雨は細く、長く降っている。
街道に人影は少ない。
歩き出した瞬間、また感じた。
雨が、避けている。
ほんのわずか。
でも確かに、私の進む先だけ、降り方が変わっている。
足元が、他より乾いている。
「……まずい」
これは、隠せない。
私は意識して歩調を乱し、水たまりに足を踏み入れた。
わざと、濡れる。
制服の裾が重くなる。
それで、ようやく雨の流れが元に戻った。
マレナは気づいていない。
でも——
胸元の羽根が、また微かに震えた。
まるで、笑っているみたいに。
私は視線を落とし、小さく呟く。
「……あなた、何者なの」
答えはない。
ただ、雨だけが、すべてを知っているみたいに降り続いていた。




