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第1話 雨の音
雨が降っている。
窓の外で、細い雨粒が静かにガラスを叩いていた。
その音を聞いていると、胸の奥がじんわりと濡れていく。
理由はわからないのに、懐かしくて、少しだけ怖い。
――まるで、雨に呼ばれているみたいだった。
私はベッドに横になったまま、指先でシーツをつまんだ。
白くて、知らない布。
知らない部屋。
なのに、不思議と落ち着いている。
それ以上に、体が――軽すぎた。
——おかしい。
そう思った瞬間、雨音が合図みたいに、記憶を連れてきた。
傘を忘れて、仕方なく走っていた帰り道。
制服のスカートが雨に張り付いて、靴の中まで冷たくて。
「最悪……」と、小さく呟いた声。
次の瞬間、視界いっぱいに広がったライトと、耳を刺すブレーキ音。
そこで、記憶は途切れている。
私はゆっくりと息を吸った。
胸がちゃんと上下していることを確かめてから、呟いた。
「……私、死んだはず、だよね」
声が、思っていたよりも幼かった。
答える人はいない。
あるのは、変わらず降り続く雨の音だけ。
でも、その雨音の奥で——
何かが、確かに選ばれようとしている気がした。
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