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SLUDGE  作者: ヒンヌー教
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見えるもの、見えざるもの

AIに指示して書いてもらってます。

どんな話になっていくのか楽しみですね。

高校2年生の佐藤悠真は、物心ついた頃から幽霊が見える体質だった。教室の片隅で揺れる影、夜の廊下に響くかすかな足音、薄ぼんやりと浮かぶ人影――彼にとってそれは日常の風景だった。幽霊たちはただそこに漂うだけで、悠真に危害を加えることはなかった。むしろ、彼は幽霊の存在に慣れすぎて、友人の怪談話に本気で怯えることが難しかった。


10月の夕暮れ、悠真はいつものように部活をサボり、校舎裏のベンチでスマホをいじっていた。オレンジ色の空が徐々に暗くなり、校庭の静けさが心地よかった。ふと、視界の端で何かが動く気配を感じ、顔を上げた。


「またか……」と呟きながら視線を向けると、校庭の中央に白いワンピースを着た女の幽霊が立っていた。彼女は青ざめた顔で震え、目を大きく見開いて何かを凝視している。悠真がその視線の先を追うと、背筋が凍るような気配が漂ってきた。


校庭の端、木々の影から異形の存在が這い出してきた。それは人間の形を歪めた化け物だった。黒い粘液のような体に、鋭い牙が並ぶ口。目はなく、代わりに赤く光る無数の穴が顔の表面に広がっている。化け物は女の幽霊に向かってゆっくりと這い進み、地面を這うたびに不気味な唸り声を上げた。

「なんだ、これ……」悠真は思わず声を漏らし、ベンチから立ち上がった。これまで見てきた幽霊は無害だったが、この化け物は明らかに危険な雰囲気を放っていた。女の幽霊が悲鳴を上げ、宙を滑るように後退したが、化け物は一瞬で距離を詰め、鋭い爪を振り上げた。


その瞬間、風を切り裂く音が響いた。黒い影が校庭に飛び込み、化け物の爪を弾き返した。そこには黒い長衣をまとった若い女が立っていた。長い黒髪が夕風に揺れ、右手に握られた細身の刀が夕陽を反射する。彼女は冷ややかな目で化け物を睨み、左手で小さな符を取り出した。


「退け、亡魂の娘よ。此奴に用あり」女は古風な口調で言い、符を宙に投げた。符は淡い光を放ち、化け物の動きを一瞬鈍らせた。女はすかさず刀を振るい、化け物の体を切りつけた。黒い粘液が飛び散り、化け物は唸り声を上げたが、倒れる気配はない。


悠真は呆然とその光景を見ていた。女の幽霊はまだ震えながら、化け物と女の戦いを見つめている。化け物は突然体をねじり、地面に溶け込むように沈んだ。次の瞬間、別の場所から飛び出し、女に向かって爪を振り下ろした。女は刀で受け止めたが、衝撃で後ろに押しやられ、膝をついた。


「ほう、ただの穢れにあらずか……」女は呟き、立ち上がって刀を構え直した。化け物はさらに動きを速め、黒い霧のようなものを吐き出した。霧は女を包み込み、彼女の視界を奪った。悠真は思わず「危ない!」と叫んだが、女は冷静に符をもう一枚投げ、霧を払った。しかし、その隙に化け物は校庭の闇に溶け込み、姿を消した。


「逃げおったか……忌々しい」女は刀を鞘に収め、悔しげに舌打ちした。彼女の額には汗が浮かび、肩で息をついている。悠真は彼女が苦戦していたことに驚きを隠せなかった。あの化け物を一撃で倒すと思っていたのに。


女は幽霊の方に視線を移し、悠真に気づいたようにちらりと見た。彼女の目は鋭く、まるで心の奥を見透かすようだった。


「そなた、何ゆえこの刻にここにおる?」女が問う。声にはわずかな苛立ちが混じっていた。

「え、俺? ただ……部活サボってただけで……」悠真はしどろもどろに答えた。女は小さく鼻を鳴らし、幽霊に視線を戻した。


「この亡魂、わたくしが預かる。そなたも早う帰るがよし。この刻、うろつくは凶事のみぞ」

「待てよ!」悠真は思わず声を上げた。「お前、誰だ? あの化け物はなんなんだ? それに、なんで幽霊が襲われて――」


女は面倒そうに眉を寄せ、悠真を遮った。「問いの多さに呆るる。名は凛と申す。あの者は『穢れ』――亡魂を喰らう妖魔なり。なぜ襲われたか、知らぬ。亡魂はただの餌ゆえ、さもありなん」

「餌って……」悠真は女の幽霊をちらりと見た。彼女はまだ怯えた表情で宙に浮かんでいる。餌呼ばわりされるような存在には見えなかった。


凛は幽霊に近づき、静かに呪文のような言葉を唱えた。幽霊の体が光に包まれ、ゆっくりと消えていった。悠真が「待て!」と叫ぶ前に、凛は再び悠真を睨んだ。


「そなた、亡魂が見ゆる体質よな? されば忠告いたす。余計なことに首を突っ込むな。あの世の事は、そなたのような凡人には危うすぎる」

「凡人って……お前だってそんな歳離れてねえだろ!」悠真はムキになって反論した。凛は一瞬目を細め、すぐに薄く笑った。

「ふむ、胆力はあるようじゃな。されど、次に相見える時、覚悟せよ」そう言い残し、凛は校庭の闇に消えた。


悠真はしばらくその場に立ち尽くしていた。心臓がドクドクと鳴り、手のひらが汗で濡れている。化け物の不気味な姿、凛の苦戦する姿、そして消えた幽霊の怯えた目――すべてが頭の中で渦巻いた。


「なんだよ、これ……」彼は呟き、暗くなった校庭を見回した。静寂が戻り、まるで何もなかったかのように風がそよぐ。だが、悠真の胸には何か熱いものが芽生えていた。好奇心か、恐怖か、あるいはもっと別の何かか。


その夜、悠真はベッドで目を閉じても、凛の言葉が頭から離れなかった。「余計なことに首を突っ込むな」。でも、彼女が戦う姿を見た瞬間、悠真はもう「普通」のままではいられない気がしていた。



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