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11話 ログアウト(ターニングポイント1)

 キリの金髪アバターは王座の間にいた。

 目の前の玉座に男がすわっている。ふたり以外はだれもいない。


 どうなって。白夜さんは。

 混乱するキリに男は笑いかけた。


「よお、ひさしぶりじゃねえか」


 は?


「どこいってやがった、ああ? 見ねえ間にずいぶん姿が変わったなァ、ミセリアよォ」


 ミセリア。ハンドルネーム。アバター名。なんかの強制イベントだろうか。そういえばたしか、飛ばされる直前、フルダイブ専用クエストとかきこえたような。

 状況を理解してくる。

 対して玉座の男は訝しげな表情をした。


「おい、おいおい、まさかてめえ、凍らせた(・・・・)わけじゃねえよなァ、ああ?」


 凍らせた。なにを。

 なにも応えられずにいると、男はあきらめたようにため息をついた。


「ああ、そうか。そうか」


 おそろしい目つきに身がすくむ。


「クッハハハハハハァ、こいつは傑作だ。ああ傑作だ」


 怒るような笑い声だった。


「やっぱてめえは不運(ミセリア)だなァ」


 男は顔をゆがめた。


「チッ、たくよォ、カピトリウムの聖権の空白状態を思いだしたって要件でもよかったが、相変わらず最悪を超えてきやがって」


 男は真顔でこちらを見すえた。


「こいつはかえしておくぜ」


 宝石のついた近未来的な指輪を投げつけられる。


「エルシャライムの王ダーウィーズの名において盟約を破棄する」


 落ちるような浮かぶような感覚に襲われる。


「皮肉だよなあ、因果の流れってやつは」


 壺から吐きだされるかのように没入感が遠ざかる。


「因果の交差路でまた逢おう。なんてな」


【聖権により強制ログアウトしました】



 装置がはずれ、半透明のふたがひらいた。

 キリは起きあがる。しばらく呆然とする。


「なんだったんだ……えっ」


 さっきの指輪が中指にあった。

 どうなって。ゲーム内オブジェクトがあるってことはここはまだゲーム内なのか。

 視界の端になにかがチラつく。


『ヴァン』


「っ」


『ヴァンヴァン』


 かわいらしい鳴き声だった。そちらを見やると、狼っぽい二頭身マスコットキャラのイラストがあった。正確には、イラストにしかみえないものが床にすわっていた。しかもただのイラストじゃない。たいらなものはふつう、横からみれば細長くみえるはず。なのに、まるで現実がバグったかのように、どの角度からも平面的なイラストにしか見えない。


 こんなのが現実にいるわけない。やっぱまだゲーム内なのか。どうやってログアウトできる。ウインドウはどうやってだせる。

 ドアがひらいた。白夜が入ってきた。


「ミセリアくん」


「え、あ、白夜さん」


「よかった、無事で」


「は、あ、え、えっ」


 白夜の背後に、忍者コスプレをした二頭身のカメレオンのイラストがうかんでいた。


「な、な、なんですか、それ」


『ヴァン』

『忍』


「のわあ、しゃべった」


 白夜は立ちどまり、目をみはった。


「……忍三郎が視えてる?」


 白夜は床にすわる狼を見つけた。キリに目をむける。


「指輪ある? これと同じやつ」


 といって中指の指輪をかざす。


「え、あ、指輪……これ」


 キリも指輪をみせた。

 白夜は二頭身平面の狼を指さす。


「そこの狼っぽいやつの名前わかる?」


「え、そのイラストみたいなやつですか」


「うん」


「名前ってそんなの、フェンリルですよ。あれ、なんで知って」


 白夜は頭を押さえた。


「キミ、遺伝子組み換え手術うけたことある?」


「は?」


「遺伝子組み換え」


「遺伝子組み換え?」


「うん」


「い、いやいやいや。ないですよ。なんの話ですか」


「だよねぇ。んーうー」


 うなりながら壁にもたれかかる。


「えぇ。じゃあなんで巫珠の指輪があんの」

読んでくださりありがとうございます。


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