愛することがいい事とは限らない
______私は憎しみが好きだ
私だけに向けられなかった感情
私が欲しがる感情
周りで飛び交う感情
それが私は好きだ
生まれたころから休息なんて文字はなかった、親や講師そして先生からも期待されていた
自分のための時間などなかった
そんな私を私と扱ってくれたのは弟だけだった
「姉を見習え」そんなことを言うな
私に向けられた愛を弟は一切与えられなかった
私は私の弟が好きだ
私は自由人が好きだ
ある日家の近くで火災が起きた
私は塾に行っていたから無事だった
しかし家で一人残っていた弟は見るも絶えない姿になっていた
私が無事でよかったと家族は言う
弟の死に涙することもなく
私は親を憎んだ
憎しみは私に抵抗する力を与えてくれた
それからは早かった
私は親の言いなりにならなかった
見る見るうちに成績は落ち
親から向けられていた期待はやがて憎悪に代わっていった
それが私を鎖から解き放ってくれた
皆が暑さを憎む夏のこと
やがて私は学力で後れを取っていき進学校をやめ地元の底辺高校に入った
その高校では私はまだ圧倒的な学力をだった
皆私を妬み私を憎んだ
皆に憎まれるほど私はそれほど優れていると悦に浸った
誰しも私のことを恨んだ
彼を除いて
煩わしかった
私に一切の蔑みをせず
私と仲良しこよししようとするのが
そして彼に不快感を抱えていた
彼に好かれていては私も底辺の仲間だ
そうではなかった
彼は私と違った
家族に縛られず
兄弟は生きている
そんな彼が私にかかわってくるのが許せなかった
自分にできなかったことをしている自分が失ったものを持っている
それだけで許せなかった
彼は私に粘着した
彼は私にかかわってきた
私は彼を苦しませる方法を考えていた
皆が日の短さを憎む冬
彼は私のところに来た
正月も家族とは離れてこちらに来た
彼は私をその自己中心的な愛で縛ろうとしていた
私は愛が憎かった
また私を縛ろうというのか
そうはさせない
新しい鎖が絡まる春
私は転校した
彼から離れるために新しい趣味を作り
それが案外はまったものでその手の高校に行った
事前に先生にも言っておいたおかげで彼には伝えられなかった
彼は愛していたものを失った
私を縛るものからの解放 私の時間を奪ったものへの報復 私のしたいことの発見
彼への憎しみはこれらを成し遂げてくれた
彼だけが私を憎んでいなかった
だがもう違う
彼も私に 憎しみ を抱えているだろう
なんて自由なんだ
憎しみは私に抵抗する力をくれる
______私は憎しみが好きだ