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貴族と平民、互いに教え合う。

第8章

 マルセンは、私たちにこの国の事を話してくれた。


 我が国は、長年かけて周辺諸国と友好的な同盟を結び、この国が中心となり、交易を始め、互いに成長して行く事を条約で結んであるが、しかし、近年、どの国も代替わりが行われ、今は、難しいバランスを保っている。


 「その為、数年前には、我が国の王太子は、ある国の王女と婚約も交わされた」


 「へー、そうなのですね」と、サルベーセンは、天井のリリアールを見る。


 「この話は、サルベーセン嬢が、王都にいる時に発表になったはずだが、君は特別、世間に疎いようだな、王都では、学校に通っていたのか?」


 リリアールを見て、首を振っていたので、


 「・・・通っていません。私は、元々、家にいるのが好きでした。本を読んで、お茶を飲む、それだけで良いと、まさか・・・、このような困難が・・・」


 「失礼、すまない」


 「いいのですよ。今は、この生活を楽しんでいます。春になったら、また、一人でのんびり暮らせます。しかし・・・、港の閉鎖は、その条約の綻びを表しているのでしょうか?」


 「ああ、そういう事だ。後継者争いで、密入国者が増える。基本、交易や観光に来る事は、どの国も歓迎されるが、他国への移住はどの国も、認めていない。その国には、その国の事情がある。それを互いに侵さない事が、大前提で、連合公国が成り立っている」


 「その連合公国の長はどの国ですか?」


 「我が国だ」


 『おおおお・・、素晴らしい我が国の国王は、大公様なのですね。そして、王太子の婚約者は、結婚すると、将来は、大公妃になられる・・・。なんて、素晴らしいのでしょう。』と、リリアールに心の中から話しかけた。


 「少し、外に出ましょう」とリリアールは、サルベーセンに合図をした。外を観て何気に話す。


 「マルセンさん、少し時間がありますか?私・・、雪が止んだので、少し、外に出てきます」


 「わかりました。この後、ケンティに、色々な話も聞きたいので、二人には、僕が教えます」



 外に出ると空は快晴、雪は眩しいが、気持ちが良くて、なんだかホットする。

 「リリアール、たまには外に出て、二人でおしゃべりしたいよね。今は二人の時間がないから、ごめんね」


 リリアールは、

 「大丈夫、さっきの様に、心の中で、話しかけてくれるとわかるから、困った事は聞いて下さい」


 「寒いから、炭づくりでもしましょう。昨日、家の前に、大量の薪が置いてあって、頼んでもいないのに、誰かが現金化しやがって・・・、頭にくるけど人数が多い分、助かるね」


 サルベーセンは、大きな鉄製の鍋に木を入れ、点火して、重石を乗せ、藁を被せ、炭づくりを始めた。


 「毎日、9人分の食事を作ると炭は、本当になくなるのが早い、まったく、彼らは遠慮しないからね」


 「ねぇ、リリアール、貴族って、遠慮がないよね」


 「彼らは、最高級の貴族です。王族の周りには、知識、武道、分析、作戦等を、いち早く答えられる貴族しかいません。だから、彼らは、超一流の貴族です。今まで、遠慮と言う言葉を使った事はないでしょう」


 「そうなんだ。所で、さっきの話だけど、王太子、国外に、婚約者がいるらしいよ。リリアールの攻略対象の話・・・無しだね。ーーー私が、王太子と結婚してリリアールを、また、王都に連れて行く事は出来そうもないね」


 「リリアールが、どうしても王都に行ってみたいのなら、彼らが出発した後に、旅行で、王都に行こうか?それでいい?」


 「サルベーセン、私が、言いたいのは・・・」



 その時、ルイ王太子とイカルノが後ろから、また、話しかけて来た。


 「こんな事で火を起こして何をしている?」


 サルベーセンは、びっくりして振り返ると、のんびりした彼ら二人の顔が見えた。

 (隠れているつもりでいたのに、マジ焦る。)


 「いつの間にか、後ろに立って話かける行為は、止めて下さい。心臓が止まります、」


 「今は、炭を作っています。私一人なら、薪ストーブですべての事が終わりますが、・・・食事を作るのには、この炭があった方が、マルクさんも助かっているようなので・・」


 「ああ、すまない。そうか、さすがにこの一帯は、元はヴィン家の領土だったから、君はこの地の事は詳しいな・・・・」


 「え?ここは、元は、ヴィン家の土地だったのですか・・?」


 「そうだ、今でも、この荒れた土地は、ヴィン家の物だろう。ここは、国からの没収も免れた、痩せた土地だったと、聞いている」


 「それでは、ここになっている果物や麦、魚や野菜は、すべて私一人の物で、よろしいのでしょうか?」


 「ああ、ヴィン伯爵は、あの事件には、関わっていなかったようだが、君の兄の為に、父上と嫡男が、罪を受けた。ヴィン夫人と君は、今のように何も知らなかった為に、没落するだけで、王都追放になった。知らないのか?」


 「・・・・母が亡くなって、少し頭がおかしいみたいです。わからない事が多くて・・・・。情けないです」


  シュンとしているサルベーセンを慰める為に、

 「しかし、君は、学ぼうとする力と、素晴らしいアイデアがある。そうだ! お世話になったお返しに、貴族社会に復帰も出来る様にしよう」


 「それだけは、本当に結構です。私の願いは、ここで一生を送る事です。ありがとうございます」


 「・・・・・・」


 「でも、もしも、お礼を頂けるのであれば、又、少しお金を下さい。役所にある私のお金・・・、この冬で底をつきそうです」


 イカルノが、

 「はははは・・・、役所には、一生、困らないだけの、金額を渡しておくから安心してくれたまえ」


 「しかし、他に、お金が必要なら、用立てる事も出来るが?」


 「はい、出来たらお願いします。いつか、王都に行ってみたいと思っています。だから、旅費や宿賃にしたいと思います」


 「ーーー?君は、王都に住んでいた時は、滅多に外出しなくて、社交界デビューも、しなかったと聞いているが・・?」


 「それは、男性貴族にはわからないでしょうけど、女性貴族は、イチイチ大変です。ドレスや髪型、エスコート役や、意地悪・・・・が、グスン・・」(演技。)


 「だから、今度は、平民の身分で、こっそり町を回ってみたいと思います」


 「ああ、それはきっと、楽しいぞ。私も好きだ。平民の姿で、店に入り、色々な話も聞けて、平民の暮らしや、色々な事がわかる。今、マルセルがケンティに勉強を教えているが、この後、僕たちは、ケンティに聞きたい事が山ほどある」


 「サルベーセン嬢、君も落ち着いたら、旅をするといい。その他の町や王都、きっと、気分転換になる」


 ルイ王太子は、爽やかすぎる笑顔で、サルベーセンに、話した。(ウっ!眩しい)


 イカルノが、ルイ皇太子に目で催促する。

 「寒いから戻ろう。炭は、時間がかかるだろう?後で、誰かに見に行かせる」


 リリアールとは、又、話せる時間がなくなって、トボトボと、二人の後ろをついて家に戻って行った。


 厨房部屋に戻ると、授業は白熱していた。


 マルセンとケンティは、互いに譲らずに、その国から輸入品について話し合っていた。


 「マルセンさんは、本当に、小麦やお米は、アパレル国からの輸入だと仰るのですか?」


 「僕が、いつも購入していた商人は、アパレル国の人間ではありません」


 「じゃ、どこの国だ?」


 「サーシャ国だと思います」


 「ふっ、サーシャ国は、今は、どん底の状況で、他国に小麦やお米などを輸出できる状況ではない」


 「しかし、あの商人の話し方や着ている物は、サーシャ国の物だと思います」


 「この前、先生に、生姜を売りつけた人もサーシャ国だと、僕は思っています」


 「でも、あれは、センブルク国の特産だ・・・?」


 「・・・・・・」


 ルイ王太子は、静かに話す。


 「私たちも、交易が盛んになり、全部の品物を把握できていない。ケンティは、毎日、市場に出向き、商人相手にサルベーセン嬢の欲しい物を探してくる。僕たちよりも知識は高いのかも知れない」


 4人は、急に黙り込み、難しい顔になった為に、サルベーセンは、自作のワインをご馳走する事にした。


 「夕食にしますか?今日は、ワインをご馳走します。フフフ・・自分の土地なの葡萄だったので」


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