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終焉②

第69章

 サルベーセン王妃とホハバ皇子、リキュル、エフピイ部隊は、ルイ国王、マリヒューイ達の帰りを待っている間、他国への連絡、情報の共有、支援などの相談、国内外の安全を図る為に、働いていた。


 「王妃、王宮の研究者たちが、降り続く灰について、ご報告があるようです」


 「ええ、通して下さい」


 ヴィン屋敷のモールは順調に発展し、各国から優秀な研究者も集まり、サルベーセンにとって必要なくなった屋敷は、本格的な研究所に変貌していた。


 「王妃、センブルク国の研究者が、報告します」


 「失礼します」


 意外な人物は、意外な国にいる。このセンブルク国のヒース研究者は、本当に優秀で、何にでも興味を持ち、なんでも研究して、おまけに知識も豊富で、公国一の頭脳だと、知られている。


 「王妃様が持参された灰ですが、殆んどの場合に、無害だと結果が出ました」


 「ああぁぁ、そう、良かったです」


 「しかし、無害でも、大量に降るとなると、実害は、大きいでしょう。農作物や、気管支の弱い老人、それに、建物の中にも入り込んでしまう可能性があります。一番いいのは、集めやすいように、布などで覆い、灰が降っている間は、外出を控え、家の中で過ごす準備を始める事です」


 「まだ、灰が到達していないこの時は、外に出ても良いってこと?」


 「そうです。準備を始めましょう」


 「わかりました。エフピイ、国内に、そして、他国へも、急いで伝達して下さい」


 しかし、王都のサルベーセンが、急いで仕事をしても、自然には敵わず、カオ国からの灰は、どんどん他国へ、そして、この国にも危機は、迫って来た。


 数日後、エフピイが、

 「王妃・・・、空が・・・、空が、真っ暗です」


 サルベーセン王妃とエフピイが、空を見上がると、昼間なのに、夜のように暗く、太陽は全く見えず、大きな雲が雷を伴いグルグルと、渦を巻いているように見える。


 「国民たちには、外出禁止と命令を出したわよね?」


 「大丈夫です。全領土に行き渡っています。しかし、あの雲に飲み込まれたら・・、室内に居ても無事だとは・・・思えません」


 「陛下・・、どうぞ、国民を・・、ホハバを助けて下さい」


 「王宮内に避難出来た人々に、このなるべく不安を与えたくありません。人間、パニックを起こすと、それだけで、危険が倍増します。すべての窓を閉めましょう。そして、王宮を守りましょう」


 「わかりました。急いで、すべての窓の鉄の扉を閉めます」

 「何か、異変があれば報告して下さい」



 カオ国で大きな爆発が起こり、そんな中、この大災害時に内戦、ついでに、気候変動も誘発して、おまけに、空気内には、異質の灰が混じっている。


 「これでは、お天気様もお怒りになる」サルベーセン王妃は、少しだけ諦めかけたが・・・。


 その時、ルイ国王陛下の不遜な笑顔が思い出され、


 「ーーーこの国・・・」


 その後、夜が近づき、外の嵐も、だんだん大きくなり、雨のようなヒョウの塊が鉄の窓に刺さるような音が聞こえ、雷も、もの凄いエネルギーを発散し始めた。王妃とホハバ皇子、リキュル、3人は抱き合いながら、嵐が去る事だけを祈り、エフピイたちは、王宮に避難している国民たちを落ち着かせることに全力を注ぎ、何があっても、守り抜く事を全員で誓い合った。


 「サルベーセン、わたくし、折角、転生したのに・・、また、会えなくなったりしないよね?」


 「大丈夫、絶対、大丈夫だから・・・。二人の事は、死んでも守り抜きます」


 「母上・・・」ホハバ皇子は、泣き出しそうだったが、しっかり王妃の腕を抱き、涙を堪えていた。そんな二人を見ながら、サルベーセンは、二人を机の下に入り、陛下と、知り合ってからの事を思い出していた。


 「王妃、外の状況が激しくなり、見張り台も、閉鎖します。この後は、まったく電気が使えません。ですから、今後、最小限度のランプだけが頼りになります」


 「大丈夫よ。わたくし達は、ここで陛下のお帰りを待ちます」


 サルベーセン王妃は、何か、覚悟を決めたかのようで、すべての使用人、エフピイたち、ホハバ皇子、リキュルに向かって話した。


 「エフピイ、陛下や4人の従者たちは、きっと、このような事が起きる事を予想していて、何年も国外を回って、努力していたのではないでしょうか?」


 「王妃・・・」


 「この国、この公国すべてを助けるには、絶対にマリヒューイが必要で、彼女と他国との協力なくしては、この国を保つことが出来なかった。それを、きっと、随分前から陛下たちはご存じだったのではないかしら?陛下は、その様なお方です。・・・ねっ?」


 「だから、きっと、大丈夫よ。陛下やイカルノ達を信じましょう。わたくし達の愛した人です」


 「すでに、わたくし達が、今、出来ることは全力で行いました。カオ国では、マリヒューイ、マリヒューイの兄上、すべての公国の国王陛下と軍部関係者、そして大勢の官僚たちが、危険を知りながらこの自然災害に立ち向かったのです。彼らも、きっと、やれる事はすべて行いました。後は、信じてこの王宮で待ちましょう!」


 「はい。サルベーセン王妃」エフピイは、腕に小さいわが子を抱きながら、王妃に頭を下げる。


 その夜、嵐が収まったのは、零時を過ぎた頃だった。


 そして、突然、終焉。


 誰もが眠れない夜、外は一気に静かになった。王妃たちの周りに集まっていたエフピイ部隊全員が、外の音を探しているのがわかる。


 「こ、これは、どうしたのでしょう?一気に収まったのでしょうか?」


 一人の女性騎士が立ち上がり、エフピイの指示を待っている。エフピイは、王妃を見て、サルベーセン王妃は、静かに頷いた。


 彼女が見張り台に駆け上がり、そこで見たの物は・・・・。「!!!!!! 」


 「王妃・・、王妃!! 、王妃!! 」


 「王妃!!! 満点の星です!そして、灰がどこにもありません!! 」


 その声を聞いて、大勢の人間は、王妃の部屋の窓を開け始めた。バルコニーに出て、王妃たちが見た世界は、本当に満点の星だった。そして、足元、バルコニーにも、降り積もっていた灰は、見当たらなかった。


 「王妃・・・。信じられません! これは、一体、どうしたのでしょうか?」


 「ええーーーー、わかりません。リキュル・・・、わかる?」

 「まさか、全く、わかりません」


 その日、夜中のバルコニーに、居合わせた全員が、その美しい夜空を見上げ、誰もが安堵したまま、しばらくは、動けなかった。


 そして、ホハバ皇子が、

 「母上、このように、綺麗な星空になる事も、父上は、ご存じだったのでしょうか?」


 「・・・・・・」(無言で、微笑み、誤魔化す・・・。)



 その後、王都、国全体、公国のすべての国からも灰は、綺麗に無くなっていて、おかしなもので、災害後に出る、屋根などの災害ゴミも跡形もなく消え去っていた。


 しかし、その後、復興で忙しい陛下やマリヒューイ達が、まだ、王都の王宮に戻る事がない中、イレブン・ヴィン領のジンから、手紙が届いた。


 エフピイは、厳しい顔でその手紙を読むサルベーセン王妃に、

 「王妃、イレブン・ヴィン領の状況はどうですか?我々の誰かを向かわせますか?」


 珍しく眉間にしわを寄せ、頭を抱えて黙り込む王妃を、心配そうにみていた。


 「ちょっと、考えさせてほしい。少し、時間をちょうだい。後、リキュルは、ホハバと遊んでいるの?」


 「・・・急いで、ここに来るように言って下さい」


 「はい」


 その後、リキュルと二人っきりになってから、サルベーセンは、

 「リキュル、悪いけど・・、幽霊になって、急いで、マリヒューイを探して来てくれる?」と言い、手紙を渡した。


 リキュルは、その手紙を読み、「わかった。探してくる。任せて! 」


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