終焉
第68章
「長い間、お待ちしてました。リキュル令嬢・・・」
「まだ、ご両親と離れて、こちらに慣れていらっしゃらないでしょうから、少し、二人だけにしてくれませんか?」
サルベーセン王妃は、膝のホハバ王太子をメイドに託し、人払いをして、リキュル令嬢と二人っきりになり、二人は抱き合い再開を喜んだ。
「ーーーリリアール、酷いです。黙って居なくなるなんて・・、随分、探しましたよ」
「お久しぶりです。サルベーセン王妃、転生する事は、マリヒューイから、随分前に打診されていて、その日は、あなたが、結婚する日と決めていました」
「なぜ?」
「だって、新婚初夜に、宙に浮いていては、申し訳ないでしょう?」
「・・・・・・」
「ハハハハ・・・!」二人は抱き合ったまま、久しぶりの再会に涙を流し、そして、笑っていた。
「久しぶりに、大笑いをしました。どうですか?少しは王妃らしく見えますか?」
「すごく立派です。皇子にも恵まれて、外交にも参加して、国内では、領主の見本となり、そして、他国への慈愛もお持ちになっています」
「カオ国は、今、大変な時でしょうが、マリヒューイが、きっと、どうにかしてくれます。このような試練を、簡単に、乗り切ってしまうと、カオ国が、変化出来ないらしいです」
「そうなのよ。前国王には、たくさんの庶子がいたのは知っているよね?それに加え、現国王は、結婚もしていないのに、子だくさん・・・で、王族たちの争いが多く、国が、なかなかまとまらない」
「それって、どうなの?国が燃えて無くなってからも、自分は皇族だと主張するのかしら?」
「だから、サリーツー国王は、国民は、どんどん避難させて、皇族は、カオ国に留まり、消火に当たらせている様です」
「わたくしのように、避難した人間は、皇族の権利は剥奪されるの」
「確か、お母様は、サリーツー国王のご姉妹でしたよね?」
「はい、父も母も、それは素晴らしい人格者で、いち早く、わたくしを、一番安全な、この王宮に避難させてくださいました」
「出発の際に、父上は、こちらの王妃様は、本当に優しいお方だから、安心してこちらで待っていなさいと、申してました」
「ヒロヒロ宰相・・、」
「しかし、そんなことは、知っていましたし、マリヒューイからも、会える日をずっと待っていますよって、言われてました」
「うん。やっと、数年前に、リリアールの名前がリキュルとわかって、ヒロヒロ宰相ご夫婦の元に、転生されてと知って、嬉しくて仕方ありませんでした」
「しかし、3歳にして、その縦ロールの髪型・・・・、あなた、また?悪事を働くつもりなの?」
「まさか、カオ国には、わたくしみたいな子供は大勢いて、わたくしなんて、本当に、モブの一員です。それに、今度の両親も、本当に愛してます。すごく素敵な両親で、母上は、今、妊娠中で、心配をかける訳には行きません」
「そうなの・・、だから、一人で避難してきたのね」
「ええ、母は、一緒に来たいと申していましたが、長旅に不安があり、父もわたくしも心配はいらないと、何度も、説得して、身体を大切にして、弟か妹を産んで欲しいと言いました」
「ご兄弟ができるの?いいわね。ホハバ王子には、兄弟がいないから、少し可哀想で・・・」
「大丈夫です。立派な姉がココにいます」
腰に手を当て、背中を後ろに反らしているリリアールを見て、一抹の不安を感じたが、
「ええ、立派なお姉さんを望みます」
その後、ホハバ皇子も合流して、一気に賑やかな午後になり、昔に戻ったように、楽しい日々を過ごすことができた。
しかし、その時は、突然、訪れた。夜中に、復帰したエフピイがやって来て、
「王妃、カオ国が、大規模に燃え始めたと、報告がありました。もちろん、国王陛下や軍隊も積極的に、消火活動をして、リカの国のマリヒューイ国王が、すでに現地で雨を降らせていますが・・・・」
「??????」
「ーーーそれを妨害する人がいます」
「どう言うこと?どこかの国の軍隊?」
「いいえ、カオ国の第2皇子が、また、軍を引き連れ、立ち塞がっている模様です」
「しかし、たぶん、大丈夫よ。ありがとう。マリヒューイには、今は、大きな力がついていると確信しているから、公王様も、ご無事でしょう。ありがとう、また、何かあったら教えて下さい」
今回の大きな燃え上がりでこの一連の災害は、終焉を迎える。予想外だったのは、マリヒューイの力だけでは、収まらなかった事だったが、異世界から、兄達が援軍に駆け付けてくれて、どうにか切り抜ける事が出来る。
マリヒューイが言うには、一人の兄は、若さゆえに、常に魔法を放出しなければならず、丁度いいストレス解消らしい、そのストレス解消の役目を、第2皇子の部隊が、名乗り出てくれたとしか思えない。
その夜、カオ国で、最大級の爆発が起こり、近隣の国からも見える程に燃え上がった炎は、マリヒューイ達によって、どうにか押さえられ、カオ国の長年の災害は、終わりを告げた。
そして、幽霊の姿のリリアールが現れたのは、その日の夜だった。
「リリアール、どうしたのまた幽霊になって・・・、まさか、また?」
「ううん、違うの、実は、幽霊に戻れるの、だから、カオ国の両親やマリヒューイも心配だったし、それにルイ国王陛下もサルベーセンの大切な人だから、ご無事か確認に、見に行ってきた」
「やはり、状況はひどい状態なの?」
「ええ、本当に、今、この世界に、マリヒューイがいなければ、この世界のすべてが無くなってしまったと、思える程の凄さだった。マリヒューイのお兄さんが、どうにか爆発の元を押さえてくれて、本当に、すごかったです。マリヒューイ、お兄様、各国の応援部隊のどれが欠けても、絶対にダメな程の大爆発でした」
幽霊になったリリアールが震え上がる程の、災害を体験して、解ったことは、
「ねぇ、サルベーセン、この世界は、何度も消滅の危機を、乗り越えて来ているらしいの。それは、ある人の思いが強く働いているのだけど、今、この時、私たちの愛する人を守る為に、わたくしやあなた、マリヒューイやお兄様が、どうしても必要だと、その方が、思ってくれたなら、その事には、感謝しなくてはね」
「みんなが繋がって、今の、この国、この公国、この世界が保たれている」
「そうだね、その事を多くの人たちに知ってほしい。今後、何かが、欠けて、この世界がなくならない様にね」
「それから、もうすぐ、この国にも、たくさんの灰が降ってくる。その対策が出来るのは、今、この国にいる王妃様だけだよ。臭くて、黒くて、汚い、それを言う為に、急いで戻って来ました」
「リリアール、早く行ってよ、大急ぎで、国民に知らせなくては・・・。エフピイ!! エフピイ!! 」
国王不在、軍部もほとんどが、カオ国の応援に出陣している。だから、今、この国に、この公国に残っている長は、サルベーセン王妃だけだった。
「エフピイ、直ぐに、各国に、多くの灰が降ってくると、通達して、その灰は、もしかしたら有害かもしれない、なるべく人体に触れない様にと、そして、大切なものには、布などをかけて守るようにと、それから、この国の国民にも領主から、通達するように伝えてください」
「その灰は、いつ頃、降り始めるのでしょうか?」
「まだ、わかりません。だから、まずは、対策をしましょう。今のわたくし達に出来るのは、これしかありません」
エフピイの部隊は、王妃を守るために、国王陛下は、人数を増やしてくれていた。
「陛下は、このような事があるのを知っていて、大人数にしたのかしら?いつまで経っても、彼の考えている先がみえません。まったく! あなたは、優秀すぎるでしょう!!! 」




