道クリ始める。
第56章
長老たちは、見る事も、やる事も、たくさんあるサルベーセンの屋敷に20日程滞在していた。
「意外にのんびりしていましたね」
「あれから、騒ぎを聞きつけた、各国の大使たちも集まって来て、実質的な外相会議みたいな状態で、誰も遠慮しないで、泊まって行った事に驚いたよね」
「流石に、お付きの人達は、村の人々の家に泊まってもらったけどね」
「しかし、彼らに遠慮と言う言葉はないのかね・・・・?」
長老たちが、宿泊を決めた翌日に、ヒロヒロ宰相が、サルベーセンの屋敷を訪ねて来て、今後の事など、濃厚な話し合いが、行われた。次の日には、王都から、イカルノに代わり、コウシャも加わり、その後、残りの4カ国も加わった。
朝から晩まで、互いに知恵を出し合い、要求を通す激論も交わし、リカの国の長老は、サルベーセンの屋敷の土地に、薬小屋まで大工達に作らせ、その中で、各国の大使たちに薬草の説明や効能なども、親切に教えてくれた。
サルベーセンの考案した薬棚をいたく気に入り、帰りたくないと言う長老まで現れて、マリヒューイとケンティに説得されて、長い20日間の7カ国外相会議は、無事、閉幕した。
「そして、ここの大工達は、リカの国に出稼ぎに向かったんだよね」
「そう・・・、お風呂の普及の為に・・・、後、きっと、あの薬棚もたくさん作らされるよね」
「やはり、空白の5、6年間は、リカの国の発展には、マイナスだったのか・・・?」
「でも、ここが、物凄く発展しただけだから、誤解して欲しくないよね」
「大丈夫、マリヒューイとケンティが、上手くやってくれる」
エフピイが、ノックして、サルベーセンの執務室にやって来た。
「サルベーセンさん、コウシャ様が、お見えです」
「え??帰っていないの?残留?」
「おはようございます。どうなさったのですか?」
「はい、この度、陛下より、ベーグン領及び、イレブン・ヴィン領への滞在許可が降りまして。しばらくの間、こちらに滞在する事となりました」
エフピイとサルベーセンは、顔を見合わせて、「??????」になっている。
「滞在して何をするのですか?」
「見回り?が主な仕事になります。エフピイたちも、忙しすぎるでしょう?」
「エフピイたちの仕事の改善は、わたくしも考えています。今まで、日給で支払っていた賃金を、月払いに替える予定です。生活に困っている人達には、その日にお支払いして、困っていない人達には、月給でお支払いしたいと考えています」
「そして、月給を受け取らない場合は、どんどん、役場にお金が貯まり、そのお金には利子がついて、少しだけ増える様にしようと考えています」
「・・・・・・」
サルベーセンの説明は、1カ月の出勤簿を各自が持参して、出勤、退勤で、エフピイたちから印鑑を貰えて、支払いも受けられるが、1カ月間、まとめると少しだけ利子が上乗せされ、もっと、支払いを遅らせると、もっと、利子が増えていく。そのような仕組みにしていく予定だ。
「働いて、役場に押し寄せない方が、賃金がちょっぴり高くなるって、事でしょうか?」
「そうです。体格のいい男性が、その日に賃金をもらって、そのまま飲み食いして、寝るでは、この先、この領土は、発展しません。だから、貯蓄して、どんどん、結婚して頂いて、子供も育て、人口も増やしたいです」
「・・・・・・」
「耳が痛いですね・・・」
「ええ、ここにいる全員に言っています」
「そうすれば、役場も余裕が出てきますし、難民の方々も、殆んどがベーグン領に戻りました」
「しかし、戻ったのはいいですが、一度、こちらの生活を味わうと、アチラの領土に戻る事は、辛いと感じるらしいです」
「だから?」
「だから、僕もそんな感じで、しばらく、青い屋根の村の自分の家で、過ごす事にしました」
「どう言うこと?」
エフピイは、
「薬局ができるまで、きっと、何度も他国の大使達は、ここを訪れるでしょう。そして、薬局が開店しても、しばらくは、ここで、色々な事が決まるの事は、明白で、王都の王宮よりも、今、一番。注目されている場所は、このお屋敷でしょう」
「王宮は、いつ、誰が、この屋敷を訪ねて来るかわからない状況を避けたいのでしょう」
「そうだね。会談や謁見などは、王宮に申し入れてから、実現するまでには、時間がかかりますが、ここは、ある意味、自由で、会話も弾み、居心地もいいです」
「それなら、王宮もそのようにして欲しいです。あのような大人数を養うには、大金がかかります」
「その事ですが、イカルノ宰相から、入金がありました。当然ですが、国の経費で落ちます」
「そう、良かった、また、一から計算していかないと・・・」
「ーーーその件ですが、役場の職員達が、取調べを終えて、戻り始めましたので、彼らに多くの仕事を振るつもりです。最後の決済は、部下達が責任を持って行いますが、よろしいでしょうか?」
「今度は、大丈夫そう?」
「はい、相当、厳しい身体検査が行われ、適正なども考慮され、サルベーセンの会計の方法なども、王宮で教わって来たみたいで、絶対に、使えると連絡がありました」
「ふ~~~ん、少しでも、エフピイの負担を減らしてくれたんだ。良かったね。そっか、そうか、それなら、信じてみましょう。責任は、イカルノ宰相にとってもらいましょう~~!! 」
その場にいた人間は、周知の事実なのか、下を向いて、笑っていて、エフピイだけは、真っ赤な顔をしたまま、ドアを開け出て行った。
「ハハハハ・・・、なんだ、みんなも気づいていたのね?」
「彼らは、ずっと前に、婚約しています。解消したか、どうかは、知りませんが、彼女の様子をみると、愛は、途絶えた事がない様ですね」
「で?コウシャは、誰と婚約しているの?まさか、エフピイの部隊にいるの?」
「僕が愛しているのは、この国と馬と自然です」
「あ・・・・、モテない男の言い訳だ!コウシャ様、ここにいるなら、結婚して、子孫を残して下さい。それが、国のためです」
「・・・・・・」
その後、各国から続々と、お礼の品が届き始め、結局、エフピイたちは、その整理などで忙しくなって、一つ一つ、サルベーセンが、品物を取り、評価を出して、モールに置く品物などの参考にしていた。
「サルベーセン様、港に、アパレル国より、大量の石が到着したようです」
「え??本当に?本当に船に乗せてきたの?」
「ええ、それなら、まずは、港から石を引いて行きましょう」
サルベーセンは、レンガではなく、平らな石が発掘できるアパレル国から、大量に石を輸入して、自宅から町までの歩道を造ろうと考えている。
リリアールが、
「石なら、この国にも沢山あるでしょ?なんでわざわざ・・?」
「石は、見せかけで、本当に欲しいのはセメントなの、いきなり貴族の令嬢が、セメントを混ぜて、道を造っているなんて、怪しすぎるでしょ?」
「だから、屋敷まで石を並べてもらいその間をセメントで補強する」
「その歩道が出来ると、どうなるの?」
「台車のような物に乗って、下っていきます。帰りは、馬車に乗って送ってもらうのだけど、行きたい時に、町まで、一人で行けるようにしようと思って・・・」
「馬に乗る事は、しないの?」
「ええ、馬は無理だと思う。実は、ケンティやマリヒューイの事は尊敬している。あんな不安定な乗り物には、乗れません!」
「いくら緩やかな道とは言え、大丈夫なの?」
「・・・私もさすがに不安です。道幅は広く、わたくし専用の歩道と馬車が走る土専用の道に分かれる予定ですが、乗りものに、ブレーキを搭載しても少し不安なので、歩道には、手すりもつけます」
「---不安しかない・・・」




