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醜態から帰省

第51章

 あの夜、サルベーセンは、マリヒューイとケンティを抱きついき、その場で、泣きながら、眠ってしまった。


 次の日の朝、リリアールが、天井から怖い顔で、睨んでいる。


 「王都に来て、初めての夜会、それもこのヴィン邸で、最高の料理、スタッフ、音楽、誰もが憧れる国王陛下とのダンスを離れ、子供二人を抱きしめ、酔っ払いは、泣きながら眠るって・・。どういう事でしょう!! 」


 「このような醜態、初めて見ました!! 」と、うなだれるサルベーセンに追い打ちをかける。


 「だって、本当は、お風呂上りから飲んでいて、ダンスをして、クルクル回されて、すごく緊張して、会えないと思っていた二人が登場して、嬉しくって・・・・。そんなに、醜態だった?」


 「ねぇ、リリアール、私、あの時、何か言っていた?」


 「・・・・・・」(何か言って・・。)


 「サルベーセン、シスターが、上がって来るよ。どうにか平常心を保ちなさい! 」


 トントン、

 「サルベーセン様、もうすぐ、出発のお時間ですが、よろしいでしょうか?」

 「え??どこに?」

 「王宮へ、行きます」


 「??????」


 「昨晩・・、皆さんで話し合った結果、サルベーセン様が、今日から、王宮へ出向く事がよろしいかと、結論が出ました」


 「??????」


 「理由はですね。お仕事の効率の為と、酒量を減らす目的もあり、何よりも、リカの国のお二人が、とても心配なさっていまして、これが一番、よろしいと、国王陛下が決定されました」


 「ーーー大丈夫です。サルベーセン様が、お休みになった後、お二人とも、皆さんと、沢山、話されて、楽しまれて、お帰りになりました」


 「・・・・・・」(まだ、心の中で格闘している。)


 「今日、王宮へ向かわないと、変な噂が、広がると思われますが・・。いかがなさいますか?」


 リリアールが、

 「昨日は、楽団の皆さん、ボーイ、料理人、メイド、色々な人間が、陛下の為に働いていました。それなのに、ヴィン家の当主が、気を失う程に、酒を浴びていたなんて、どこから漏れるかわかりません。だから、陛下は、体調不良を理由に、そのまま、あなたの寝室まで運んでくださったのですよ」


 「エフピイ、わたくし、物凄く、反省しています。しかし・・、頭が痛くて・・」


 「マリヒューイ様より、黄色い粉を、飲ませる様にと、こちらにご用意してあります」


 「ええ、頂きましょう。そして、出かけます。でも、先ずは、お風呂に入ります」


 サルベーセンは、用意されていたお風呂に入って、シスターたちに洗ってもらい、美容もしてもらい、化粧も身支度もすべて、介護施設に入居している老人のように介護してもらい、どうにか馬車に乗って、王宮へ向かった。


 「あ!! 大事な仕事の資料・・・」


 「はい、昨日のうちに、王宮へ運び込みました」


 「サルベーセン様、もう一度、こちらのお薬を召し上がって下さい」


 「ありがとう」


 「こちらは、濃いめのお茶です」


 「ええ、ありがとう」


 馬を走らせているシスターが、「もうすぐ着きます。大丈夫でしょうか?」


 「はい、何とか復活しました。今日は、皆さん、ありがとうございます。本当に助かりました」



 王宮に到着して、広くて静かで、陽当たりのいいお部屋に通され、しばらく待っていると、イカルノが現れて、

 「おはようございます」

 「おはようございます。体調はいかがですか?」

 「ええ、万全です」


 「早速ですが、昨日、サルベーセンさんの家から、すべての資料を持ち出し、それなりに検討した結果ですが、これをお一人で行う事は、無理だと判断しました」


 「はい、わたくしもそう思いまして、誰か、優秀な方をご紹介して頂きたいと考えております」


 「このサルベーセンさんが屋敷内に、建設しようとしているモールと言う建物は、国家レベルの仕事になりますし、テン・イレブンの薬局も、やはり、国の手が必要でしょう」


 「ーーーーーー」


 「ですが、勿論、指揮はサルベーセンさんにとって頂いて、責任者として、モールはマルセン、薬局は、ビンエムーが、担当するのはどうでしょう。最高指揮官は、イカルノ宰相が務めます。勿論、ち密な計算や法律に詳しい部署の職員も、王宮には沢山います。サルベーセンさんが、倒れる程、仕事をしなくてもよくなります」


 「昨日は、たまたま、少し、疲れていて・・・、本当ですよ。たまたまです」


 「後、お酒の管理もできます」

 「・・・・・・」


 イカルノは、サルベーセンに新しく執務する部屋を与え、紹介する。


 「エフピイは知っているね。彼女たち10人も王宮スタッフとして、復帰する。担当は、サルベーセンさん付きになる。そして、マルセンは、現在、財務大臣、ビンエムーは、法務大臣だ。モールの設計に関しては、コウシャの設計部の人間が担当してくれる。君が行っている原価計算も、違う部署から派遣してもらう事になった」


 「各国との交渉は、私が取りまとめて、サルベーセンさんと相談して、最善の道を探す事としよう。勿論、リカの国からの連絡も引き受ける」


 「これでどうだ?このプロジェクトは、今までのあなたへの恩返しだと思ってくれていい」


 「ーーーありがとうございます。助かりました。なんだか肩の荷が下りたようです」


 「それから、前に使っていた部屋は、今でもあのままです。屋敷に戻れない時は、王宮に泊まって下さい」


 「はい、何から何まで、ありがとうございました」


 「いいえ、これは、お互い様です。サルベーセンさんには、たくさん迷惑をかけました」


 (ああ、わかっていてくれたんだ。迷惑をかけたって・・、そうか、そうか・・・。)



 その後、この大きなプロジェクトを成功させる為に、激論を飛ばし、会議を行い、2月から薬局の建設が始まり、棚割りの調整に入った。


 棚割りの調整は、難航を極めて、最後は、マリヒューイが、センブルク国の国王のもとに、現われ、脅かし、何とか、決着をつけた。相当、ビビッていたと、聞いている。


 3月、遂に、初めてのデパート型のモールの建設が始まった。このモールの特徴は、色々な分野の研究所も併設している事だった。研究の為の倉庫は、ヴィン邸の一部を貸し出す。


 あれから、数か月間、屋敷に戻っていないサルベーセンと国王陛下は、ランチをしながら、いつも、進捗などの報告をしている。


 「研究所を作るにあたって、他国から研究者を呼ぶのか?」


 「その辺は、これからイカルノや、マルセンが、詰めていくのでしょうけど、ケンティのように留学と言う道でもよろしいかと思っています」


 「折角の公国です。移住は出来ませんが、知識の共有は、互いに助け合う利点が大きいと思います」


 「そうだな、1国では出来ない事も、すべての国が協力すれば、大きな成果が現れる。どうだ、最近は、眠れているのか?エフピイたちが、夜中に君がうなされている様だと、心配している」


 「ええ、勿論、大丈夫です。しかし、王宮に移動してから、一度も屋敷に帰らずに、やっとここまで来ました。ーーーあのままでしたら、10年は、かかってしまいました。陛下、ありがとうございます」


 「工事が始まったから、イレブン・ヴィンに帰ると聞いたが・・」


 「はい、モールが出来上がるまでは、時間がかかりますが、薬局の方は、既に形が出来上がっている様で、調整に戻るつもりです」


 「王都には戻って来るのか?」


 「はい、モールが完成する前には戻る予定です。秋ごろでしょうか?それまでには、薬局の成果も出始めるでしょう。楽しみです」


 「イレブン・ヴィンの夏は、どのような夏だ?」


 「ふふ、実は、夏は、いいですよ。最初の夏は、お風呂がなくて、1日3回、近くの泉で、裸で泳いでました。マルクは、呆れてましたが、今年の夏は、また、あの泉で泳げます」


 「それは、見に行かなければ・・」


 「ふふ、国王陛下は、国を守る人です。これからは、気軽に旅に行く事はないのでしょうか?」


 「ああ、本当に父上のありがたみを感じるよ。自由だったあの頃が懐かしい」


 「長い間、王宮に滞在させていただき、ありがとうございました。明日、朝、イレブン・ヴィンに出発します」


 

 ーーーサルベーセン・ヴィン、2年ぶりにイレブン・ヴィン領の自宅に戻る。




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