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多忙②

第48章

 イカルノが連れて来た職人たちは、音もなく訪問し、工事を行い、去って行った。


 「大体、私が大使たちを招いている訳でもなく、あちらが毎日のように訪れるだけ・・。それなのに、この前は、王宮のレプリカ、今度は忍者屋敷、わたくしの持ち家を、何だと思っているのかしら!まぁ、一人暮らしだから、部屋はいっぱい余っているけどね。まったく・・・」


 「グダグダ言っている内に、マリヒューイがやって来るわよ」とリリアールは聞いてくれない。


 サルベーセンが、ベットでグズグスしていると、エフピイが、やって来て、


 「おはようございます。今日も、各国の大使より、ご訪問の申し出が届いておりますが、いかがなさいますか?」


 「やっぱり・・、予想どうり、この国で、秘密を守る事は、難しいのかしら・・?」


 「そう言えば、シスターたちのお給料は、国から支給されているのよね?イレブン・ヴィン領の仕事をしている時は、当然、イレブン・ヴィン領からもお支払いしていますよね?」


 「・・・では、今後、わたくしが領土に戻った後は、あなた達の収入が減ってしまうよね?」


 「しかし、今までのように国から給金を頂けてますし、どうにかやっていけます」


 「それって・・、身分の保証はあるの?」


 「孤児院の経営も、利益は出ませんよね。ほとんどがボランティアのようです」


 「ーーーーーー」


 「ねぇ、今日の話し合いは、テン・ヴィンの町の薬のお店の話し合いですが、この前、もっと大きな事業を始める計画を、ヒロヒロ宰相から提案されています」


 「その計画は、国王陛下は、ご存じですか?」


 「いいえ、どうせ、今日、聞いて、わかるでしょう?それとも、すでに知っているの?だから、昨晩・・・」


 「ーーその計画が、始まったら、この屋敷と、その事業を、エフピイたちにお願いする事は出来るでしょうか?わたくしが王都ですることは、その事業が上手く行ったらなくなり、その後は、領土に戻る予定です」


 「ーーーサルベーセン様は、本当に、領土に戻られるのですか?」


 「ええ、ジンに任せている仕事もありますし、何よりも、領土の家の方が、楽に暮らせるのです」


 「こんな広い屋敷、あなた方が居てくれたから、維持できていますけど、一人になったら絶対に無理です。だからと言って、新しい使用人を置くつもりもありません」


 「サルベーセン様は、ご結婚とかは、考えていらっしゃらないのですか?」

 「え??エフピイは、お嫁に行く予定があるの?それなら・・・」


 「ありません! 」


 「ーーーーーー」


 その後、互いに無口になり、エフピイは、サルベーセンの支度を手伝って、そそくさと、ドアを閉めて出て行った。


 リリアールが、

 「サルベーセン、昨日の夜、イカルノの言葉の意味は、きっと、違う意味だと思うよ・・」


 サルベーセンは、リリアールを見て、頭の上に???がいっぱいで、「かみ合わない」と呟いた。



 朝食を済ませると、マリヒューイが馬車に乗りやって来て、変装して国王たちも、リカの国の使者のように屋敷に入って行った。


 「今日は、よろしくお願いします。・・・・兄上たちも・・・・、すいません」


 「いいのよ。こういう事は、いつの間にか慣れました。他の大使たちがいらっしゃる前に、色々な事を決めましょうね」


 「テン・ヴィンの町に、薬局を作る事が、この前の7カ国会議で承認されたけど、薬局には、薬の知識が豊富な店員が必ず必要になるよね。その人達は、どうするの?リカの国から呼ぶの?」


 「はい、当分の間は、長老の方々に頑張って頂きます。今後は、本格的にリカの国で学校も開校して、人材の育成を目指します」


 「そうか・・・、長老たちに、良く教えてもらう必要があるね」


 「そこが一番の心配な所だった」


 「先生・・、長老たちは、毎日、テン・ヴィンの町に通う事は出来ません。だから・・」


 「そうか・・・、移住禁止法案があるから・・・」


 「その辺は、どうするのですか?」


 「半年ほどの短期滞在は、すべての国の人たちに認められている。半年たったら、交代してもらうしかない」


 「ーーー先生、ケンティを・・、ケンティを長老の見習いにして頂く事は出来ますか?」


 「ええええ~~! それは?ケンティは、リカの国に・・・?お婿に行ってしまうと言う事?」


 「ち、違います! ケンティは、ずっと、テン・ヴィンの町に居られるし、勉強も好きですし、長老たちは、物凄くケンティを可愛がっています」


 「・・・・・・」


 「ああ、そうよね。さっき、エフピイと結婚について話してたから、ケンティが先に、お婿に行ってしまうのかと、思って、少し焦った・・・」


 「先生、ご結婚なさるのですか?」


 「まさか、この国に、わたくし以上にお金持ちの男性が、何人います?また、騙されて、無残な生活になったらどうするの?だから、ケンティを養子に迎えて、後継ぎにしようかと思っていたけど、まさか、マリヒューイと取り合いになるとは思ってもいなくて・・・・」


 「取り合いになるとか・・・ではなくて・・・・」


 国王とイカルノは、サルベーセンとマリヒューイの会話を聞きながら、少し顔が引きつっていた。そこへ、シスターが、

 「大使たちが、既に集まり、下のサロンでお待ちになっています」と告げた。


 「ーーいつもよりも早いのは、気のせいではないよね?」


 ルイ国王とイカルノは、隣の部屋に移動して、会議の内容を聞きながらお茶を飲み始め、筒抜けの会議室には、続々と各国の大使がやって来て、マリヒューイに敬意を払いながら挨拶をする。


 「今日は、皆さん、どうして、このように早くにいらしたのでしょうか?」


 「はい、昨日のピザに感動しまして、今日は、領土の野菜と小麦粉を持参しました」


 「奇遇ですね、我が領土も色々な物を持参しました。今日はキッチンでの話し合いではないのですね」


 「では、持参された物で、ピザの用意をする様に、シスターたちに頼みましょう」

と、気軽に受けたが、彼らが持参したものは、会議室いっぱいになり、下のサロンまでもすでに品物が並べられている。


 「品評会?物産展?何?これ、どうして・・」


 「ありがとうございます。このように沢山・・・。後で、一つ一つ確認して行きます」


 「今日は、最初、リカの国の作る薬局についての提案書をお配りいたします」


 「お店の完成予想図は、私が書いた物ですので、未定ですが、テン・ヴィンで一番大きなお店になります。しかし、開店後は、店員不足がしばらくは続くと考えて下さい。そこで、外見の予想図より、店内の見取り図が大切になります。今、お配りした資料に載っています」


 「お客様、つまり、皆さんの国に、必要な薬を供給する為に、どのような物が必要で、どの位、必要なのかを最初に知りたいと考えます。それが、この見取り図の棚割りに繁栄します」


 「例えばですね。カオ国に必要な物は、火傷に効く薬、それにはきっと化膿止めも必要になります。どうでしょうか?その薬や薬草は、ここの棚にあり、誰もが購入できるようになります」


 「勿論、長老が説明して下さり、効能を確かめての購入になりますが、探す手間を省く為に、各国が、必要とする薬を、最初に、申告して頂いて、その場所に置いておきます」


 「うううう・・・、それは、国に持ち帰って、国王陛下や保健省と相談しなくては・・」


 「そうです。建物の建設にも時間がかかります。開店前までに、教えていただけると有難いです」


 「しかし、その棚の薬だけしか買えないとかは、ありませんよね?」


 「ありません。ただ、どこか1カ国が、特定の薬を、買い占めても、病気を食い止める事は出来ませんし、経済発展はないと、思った方がよろしいでしょう」


 出席者の大使は、一斉に、マリヒューイを見て、マリヒューイは、にっこりしながら、人差し指に炎をともした。


 誰もが息を飲んだ瞬間、ヒロヒロ宰相が、新事業についてサルベーセンに訪ねる。


 「では、皆さん、ズルは無しと、意志の疎通ができました所で、私がサルベーセン領主にご提案している事業について話し合いをしたいと思います」


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