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国を守る使命

第44章

 午後からは、すべての国の皇族が並び、公国の新しい公王を祝福した。


 「サリーサリー王女、大丈夫でしょうか?」

 「ええ、何とか・・・。それより、他の国の人達の中で、サリーサリー王女に会った事がある人は、本当に居ないの?大丈夫?なんだか視線を感じるのだけど・・・?」


 「ええ、その点は、本当に大丈夫です。ルイ国王陛下以外の方が、王女様に会った事はありません」


 周りのメイド達は、絶対的な自信を持ってサルベーセンに力を注ぐ。


 「今回、カオ国より、国王陛下の右腕で在らされるヒロヒロ宰相が、出席なさっていますので、質疑応答に関しても彼が受け答えして下さいます。王女は、微笑み、その場にいらっしゃるだけで大丈夫です」


 「カオ国は、今回も国王陛下は欠席なの?」

 「はい、国中が燃え上がる一大事です。どの国も王妃様が出席なさるだけでもご納得して下さいます」

 

 「もう・・・、火が点き始めたの?」

 「まだ、一部ですが、火を消しながら、避難を急いでいます」


 「そう・・・、やはり・・、心配ですね」

 「大丈夫です。我々は、神を信じています」


 「・・・・・・」


 式典はシクシクと進行して行き、ルイ国王陛下は、公国の長と認められて、幕を閉じた。


 夜からは、大勢の人々たちの晩さん会となり、各国の国王、妃、又は皇族、宰相、それに代わる代表たちは、テーブルで食事をしながら、懇談する。


 「お腹は空いているけど、味がしない・・。美味しいのかもわからないわ・・・」


 「マリヒューイ様は、初めての晩さん会は、いかがですか?」

 「はい、まだ、子供ですので、勉強させて頂いています」


 (あ~~~、マリヒューイが、羨ましい。子供だから、誰もが彼女を許している。それに比べて、サリーサリー王女に対しては、視線が痛い。)


 「サリーサリー王女、少し、ワインでもお飲みになりますか?」


 「いいえ、今夜は、お酒を控えます。お酒に弱いもので、国の恥をさらす訳にはいきません」


 「そうですか・・・・?????」


 リリアールが、「少しくらい飲んだ方がいいのでは?」と囁くが、「無理、絶対に無理、覚えた事が、耳の穴からこぼれて行きそうなの・・、どうか誰もわたくしに質問しないで!! 」


 しかし、サーシャ国の王妃は、サリーサリー王女の手を取り、

 「今、本当に、カオ国は大変でいらして、我が国も大変心配しています。地面が燃え始めているとは、本当でしょうか?」


 「はい、残念ながら本当です。一部の地面が発火し始めていますが、一度、火を消すと、その場所は、再び燃える事はありません。消火をしながら、安全を図っている所です」


 「しかし、次に燃える場所などの特定には至っていないとか?」


 ここでやっと、ヒロヒロ宰相が、登場してくれた。

 「すべての場所の特定は難しいのですが、大体の場所は把握できています。だからご安心下さい」


 ヒロヒロ宰相は、頭が切れそうで、役立つ人物だと雰囲気で感じ取れる。もっとも、このような場所に、無能な部下を送り込む程、サリーサリー王女は、無謀ではない。


 明日の会議が本番で、誰もそれ以上、カオ国について質問する事はないが、本当に吐きそうなくらい緊張している。晩さん会が終わると、ルカ公国陛下は、それぞれの国の代表者たちと軽く会談して、その夜は、終わりを告げた。


 ヒロヒロ宰相は、近づいて来て、

 「ありがとうございます。サリーサリー王女も、大変、感謝しています」と告げた。


 「しかし、あまり役にも立ちません。だから、ーーー明日の会議は、病欠できますか?」


 「大役で、大きなプレッシャーがかかっている事は、重々承知していますが、出来れば明日からの会議も、ご参加して下さると、本当に助かります」


 「こちら、王女より、サルベーセン様に、プレゼントです」


 ヒロヒロ宰相は、ずっしり大きなダイヤの原石を、サルベーセンの手のひらに乗せた。

 「コレ、コレ、こんなに大きいもの頂けません」


 「実は、今回の災害の中で、ダイヤが、たくさん発掘されました。これも、サルベーセン様のおかげだと王女は申しております。まだ、原石でどの位のサイズになるかは不明ですが、どうぞ、お納めください」


 サルベーセンは、ゴクリと唾を飲んで、放心状態でその原石を見ていると、ルイ陛下がやって来て、

 「どうした?何か、不都合があったか?」


 「いいえ、明日の会議を病欠したいと申しましたら、ダイヤの原石を頂き、戸惑っています」


 「そう言えば、陛下にもお礼を・・、母の宝石を買い戻して下さりありがとうございます。わたくしは、あれらの宝石で、一生、暮らせると思っていましたのに・・、このような・・・」


 サルベーセンが、その原石を見て、よだれを流しそうに喜んでいるのを見ているルイ陛下は、不機嫌そうに、

 「サルベーセン嬢、君も意外に普通の令嬢と一緒だったんだな」


 「ええ、わたくしもそう思いました。宝石なんて無縁だと思っていましたが、原石は、希少でしょう?ヒロヒロ宰相、ありがとうございます。家宝にして、いつも見える所に飾っておきます」


 「えええ、明日の会議は、出席します。おやすみなさい」

 

 サルベーセンの後ろ姿を見送った二人は、

 「ルイ陛下、彼女は、あのまま飾るのでしょうか?普通の女性は、加工して、ネックレスや指輪にしますが・・・・?」


 「ーーー、きっと、1ミリも削らずに、あのまま飾るのでしょう。家宝ですから・・・」


 「ハハハ・・・・、サリーサリー王女やメイド達も彼女の事を気に入った理由がわかります」


 「本来なら、誰も、このような恐ろしい代役を受けたくないでしょう。例え、どんなに大きなダイヤを見せられても・・」


 「彼女ですよね。我が国には、エネルギーが、眠っていると教えて下さったのは?」


 「ええ、エネルギーだけではなく、希少な植物も生息していると言ってました。不思議な女性です」


 「明日からは、大変な会議になるでしょう。しかし、我々は、どうしても新しい公国を築かなくてはなりません。それが、国を任された人間の使命ですから・・」


 「さて、どの国が、始めにしかけて来ますかね?」


 「ヒロヒロ宰相は、既に、予想しているのでしょ?」

 「はい、大体は、あの国だと思っています」


 部屋に戻ったサルベーセンは、リリアールにダイヤの原石を見せる。

 「これ見て、ここ、この削られた部分・・、光ってる。キレイだね・・・」


 「サルベーセン、王都の有名宝石店に持ち込めば、もっときれいなネックレスにしてくれるわよ」


 「大丈夫、デザインは、わたくしが考えてあげるから! 」


 「嫌よ、このまま自然のままが、こんなに美しいのに・・、原石は、原石の良さがあるの、今日は、ダイヤくんと一緒に寝て、屋敷に戻ったら、いつも見える所に飾るわ~~~~」

 

 「ネックレスにしましょうよ」


 「イヤ、石のままがいいの、だって、私、石マニアなのよ。石が大好き!! 」


 「ル~~ル、ル~~~ル、ル~~~♪」とダイヤの原石と一緒にダンスをしていると、メイド達が、ドアをノックして来た。


 「サリーサリー王女、明日の為に、美容の時間です」


 「はい、明日も頑張りましょう!!! 」


 リリアールは、浮かれているサルベーセンを横目に見ながら、ネックレスや指輪のデザインを始めた。


 「ドレスは、思いのほか似合っていたから・・、そうね、あのドレスに合うネックレスは・・」


 それぞれの国の代表は、それぞれの思いを抱きながら、明日の会議に思いをはせている。


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