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船にのり王都へ。

第42章

 「オギャー、オギャー!」と泣く事しか許されず。まだ、目を開けても雲の中にいるようで、自分がどうなったかもわからずに、抱かれるまま身をゆだね。たまに・・・、洩らす。


 「私、どうなったのかしら・・、何か動物に変身してしまったの?できる事は泣くだけなんて」


 「泣いて、洩らして、抱かれる。もらえる食事は、ミルクだけ・・・。辛い、どの世界に行っても辛いなら、元の世界で一生懸命に生きればよかった。父上や兄上の仇を取って、あの人を告発さえすれば、二人は助かったのに、ごめんなさい。ごめんなさい、私・・、勇気が足りなかった」


 「オギャー、オギャー」


 「お父さん、女の子は、本当に良く泣きますね」


 初めて、昔の両親を見た時に、嬉しくて、大きなおならをしてしまった。


 近くにいた兄上は、

 「スゲー、赤ん坊でも、スゲーおならするんだ」と言って笑いながら指をさしている。


 「父上、母上、兄上までも・・・・。あああぁ、神に感謝します」と、大泣きの赤ん坊は、ひたすら泣いて、両親と兄を困らせていた。



 サルベーセン達一行は、マルクのお墓に花をたむけ、それからヴィン家のお墓に報告しました。


 「お父様、お母様、兄上、ヴィン家を騙して、私腹を肥やしていたマーチン公爵は、処刑されました。マーチン公爵と公国の乗っ取りを企て、病原菌をばら撒こうとしていた、コノハ皇子も自国で処刑されたと聞いています。そして、もうすぐ、7ケ国での話し合いが始まります」


 「これからもこの公国が続く事を、私は望みます。それは色々な国の人達も、一生懸命生きている事がわかったからです。どうか、わたくしやこの世界の人達を許して下さい」


 その場にいたシン部下も、エフピイたちシスターも、そして、多くの領民たちも、今日は、ヴィン家のお墓に集まってくれた。


 「皆さん、集まって頂きありがとうございます。久しぶりに戻った領土は、道が整備され、麦の収穫も順調だったと聞いています。それも皆さんのおかげです。今後も、この領土の為になる事を、探して、一緒に豊かになる事を考えて行くつもりです。どうか、よろしくお願いします」


 領民たちは、サルベーセンの近くに駆け寄り、王都での活躍を喜んでくれた。

 

 「ご領主様、我々がバカだったんだ。サルベーセン様の素晴らしい能力を見抜けなくて、この領土は、お嬢様のモノだったのに、悪事を働いた牧師さんを信じ、お嬢様を見捨てた」


 「本当に、すまねえ。出て行けと言われて当然なのに・・、我々には他に行くところはありません。どうか、私たちを許して下さい。お願いします」


 「これからも、わたくしには至らない事があると思いますが、わたくしはこのイレブン・ヴィン領が大好きです。皆さんと一緒に安心して暮らせる街を作りたいと思っています」


 サルベーセンのその言葉を聞いて、安心した領民は、心から頭を下げ、サルベーセンの手を取り泣いていた。


 「先生、僕たちは、もうすぐ、ここに帰るの?」


 「そうね。7カ国会議が、上手く行って、問題がなければここに帰りましょう」


 そう話すと、ケンティは、マリヒューイの方を見て、ぼっとしていた。

 「大丈夫よ。橋を渡れば、リカの国でしょ?きっと、また、会えます」


 「本当?」

 「ええ、本当です」

 (だって、マリヒューイは、わたくしの近くに、いつでも来れるのだから!)


 その後、2週間ほど滞在していると、王宮からの迎えがやって来て、出発を急がされた。


 当然の事だが、国王陛下は、多忙で、コウシャだけが、代表として、マリヒューイとサルベーセンを迎えに来たのだ。サルベーセンは、忙しく公務を行い、同時に冬支度も始め、毎日を忙しく過ごしていたが、


 「サルベーセン様、今回、ご両親とお兄様の名誉回復の為に、国王陛下より、書状が送られます」


 「なに、それ?王都に戻れって事?」


 「はい、後、カオ国よりサリーサリー王女が出席する予定ですので、サリーサリー王女がお会いしたいと連絡を受けました。それに、今回、マリヒューイ様のお付きの者がいません。ここは、エフピイたちとご一緒に、マリヒューイ様を助けてあげて欲しいと、国王陛下が申していました」


 「あなた達、少しおかしいですよ。そのような大役、私には務まりません」


 「それでは、マリヒューイ様を一人で出席させるのですか?」


 「・・・・・・」


 結局、再び、サルベーセン、マリヒューイ、ケンティ、リリアールは、王都を目指し、船に乗り出発した。

 「先生、兄上もきっと喜びます」

 「サリーサリー王女が、今度は本当に来るからでしょう?」


 リリアールは、少しおかしいと思って、聞いてみる。

 「サリーサリー王女って、身長が縮む事が出来るの?この前、あのように印象を与えて、この国ならずとも、他国の人々もどう思うのでしょうか?ーーそれともいきなり伸びる?」


 サルベーセンは、なんだか胃がキリキリ痛くなってきた。


 今回、イレブン・ヴィンで作られたキルトの布や服を大量に船に乗せ、サルベーセンは、王都を目指していたが、服を積み込んでいる時、コウシャが、ニコニコしていたのが、気になり始めた。


 「彼ら、絶対に、何か企んでいる」


 王都の港に着くと、マリヒューイと一緒に王宮に連れて行かれ、国王陛下に謁見する。


 「ルイ国王陛下、ご即位、おめでとうございます」


 「ああ、即位すると言う事は、前の国王陛下が亡くなった事になるので、あまり大きな祝い事にはならないが、我が国は、どうしても他国への意味合いもあって、この会議の初日に即位式を行う事となった」


 「君たち二人も、国や領土で、立派に長としての宣言をしてきたと聞いている」


 「兄上の即位とは比べられません」


 「我が国が、上手く継承できれば、引き続き他国も、次世代へとバトンタッチすると、私は考えているマリヒューイも力を貸して欲しい」


 「はい、お兄様、」


 「所で、今回、カオ国より出席する予定のサリーサリー王女だが、実は・・、」


 「無理です。わたくしは、マリヒューイの付き人です」(そんな事だと、思った。)


 「マリヒューイ、サルベーセン嬢に説明してくれ!」


 「はい、先生、カオ国はすでに地面の上昇が始まっています。一刻も早く台地の方への避難が必要な状況です。このような時、王女が国を離れる事は出来ません。これは内密ですが、カオ国も、既に、後継者の問題に直面していて、この公国では、一番の問題となるでしょう」


 「我が国が知っている事は、多分、他国も気づいているに違いない。今回、カオ国の問題も議論されるだろう。サリーサリー王女を助けてやってくれないか?」


 「何度も身代わりになって、本当に大丈夫でしょうか?最終的には、わたくしの命がまた狙われるとか、ありませんよね?」


 「・・・・・・」(オイ! 返事なしかい!! )


 「それに、本当のサリーサリー王女に申し訳ないです。女性だったら身代わりをたてるなんて、絶対にイヤなはずなのに、サリーサリー王女のお気持ちを考えると、何度も、可哀そうです」


 その時、イカルノがやって来て、いつもの様に書類を渡す。


 「陛下、こちらが議題に上がった場合の質疑応答の見本です。そして、こちらが、サルベーセン商会の認定書です」


 「陛下!! わたくしは、お金で動く人間ではありません。今回は、サリーサリー王女のお気持ちを察して、お断り申し上げます」


 「サルベーセン嬢、君が、マリヒューイと一緒にリカの国に入った時、僕は何故か寂しいと思ったよ。もう気軽に君に会いに行けないとね・・・」




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