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リカの国③

第40章

 あの戦いから数日が過ぎ、ケンティは、足の骨が折れていたので、絶対に安静で、動かす事が出来ず、マリヒューイとケンティとサルベーセン、リリアールは、リカの国で過ごしていた。


 マリヒューイは、生まれて初めて王太子たちと別れ、サルベーセン達と生まれ故郷で過ごしている。


 「マリヒューイ、王太子たちに連絡しなくていいの?」


 「大丈夫です。こちらの様子などを書き記した手紙を送っています」


 「返事は?」


 「はい、返事も貰っています。兄上たちも、センブルク国の後始末などで、大変忙しくしている様で、こちらに催促は来ていません」


 若干8歳の王女は、サルベーセンと一緒に、毎日、執務に追われている。


 最初は、サルベーセンがマリヒューイと同席する事に、周りも、サルベーセン自身も違和感があったが、毎日の積み重ねなのか、今では、王宮のメイドさえも、マリヒューイと同等に接してくれる。


 「おはようございます。サルベーセン様、朝食の前に入浴なさいますか?」


 「ええ、お願いします」


 リリアールが、

 「これが普通の暮らしよ。朝起きて、簡単に顔を洗って、野良仕事に出る貴族がどこにいます!」


 「リリアール、ここにいます。ーーーでも、この生活に慣れたら、王都に帰ってからは、辛いよね」


 「ええ、そうね。さぁ、今日は、マリヒューイと一緒に地方を回るのでしょう?」


 「ええ、ケンティは、残念がっていたけど、マリヒューイは、一緒に行って欲しそうだったから、出かけます」


 「気の毒なケンティ・・」



 一方、王都の王宮では、

 「マリヒューイたちは、全然、戻りませんね?」


 「ああ、マリヒューイから、少しリカの国を整備したいので、サルベーセン嬢を貸して欲しいと手紙が来ていた」


 「手紙が来ていたと言われても、いつも、王太子の机に現われて、返事を置いておくと、無くなるアレですか?」


 「そうだ。連絡はアレだけだ。いまだに結界は破られていないし、安否も不明だが、こちらからは、どうしようもない」


 「不思議な事は、あの戦いの中、サルベーセンの馬車だけは、リカの国に入っていたと言う事だ」


 「ええ、我々も入れて欲しかったですよね」

 

 「しかし、一度入ると、出て来れない・・・。しかし、入国しないと、会えない・・・」


 従者4人は、ルイ王太子の会いたい人は、、一体、誰なのか?と心の中では思っている。


 「しかし、もうすぐ、7ケ国会議です。ここ数年は、リカの国の代表は、欠席でしたが、今年は、マリヒューイ様が、出席なさるのでしょうか?」


 「それもわからない、しかし、その前に、我が国の国王陛下のご逝去を発表しようと思う。私も成人して、多くの国民は、私の結婚を望んでいるようだが、国王陛下の為に、喪に服す事を知らせないとな・・。結婚は、まだまだ先だ」


 「ええ、カオ国も、今は、そのような状況ではありません。7カ国会議の前に、発表しよう」



 王都の心配をよそに、サルベーセンとリリアールは、新しい客車を頂き、内装も一段とサルベーセン仕様をグレードアップしたピカピカの馬車で、一緒に視察に出かける。


 「リカの国は、本当に、のんびりしている雰囲気があるね」


 「ええ、しかし、今回、視察に向かう土地は、一番、開発が遅れたいる村です。サルベーセンさんが、気が付いて、改善した方がいい所などを、聞きたいと思います」


 「いいの?私の意見なんて・・・」


 「大丈夫です。私は、まだ本当に子供で、知識も足りません。現代社会を過ごした期間も短く、サルベーセンの意見が必要です」


 「例えは?」


 「例えは、お風呂の改造のようなモノです」


 「ああ、そういう事、わかりました」


 しかし、その村を歩くと、自然が多く、人々は、上手に生きていて、現代社会の何かを取り入れる必要は、まったくなく、このままでいいように思えてならなかった。


 「マリヒューイ、この村は、きっと、このままでいいと思うよ。開発して、自然災害につながる方が、不安だよ。そんなに貧しいとも思えないし・・」


 マリヒューイは、微笑みながら、

 「サルベーセンさん、この村の特産物は、この黄色い生姜のようなモノらしいです」


 「あああぁ、これ、これ、いいね。おばさん、おばさんが売っているこの球根みたいなの全部下さい」と、サルベーセンは、おばさんに、突然話しかけた。


 「先生?」


 「サルベーセン、ここの球根みたいなコレ! いいよ。絶対にイイ、ここから、流行るからこの村は、このまま大切に保管して欲しい。私の為に・・・」


 マリヒューイが、不思議な顔をしていると、お付きの人が教えてくれた。


 「お酒を沢山飲む人には、喜ばれる薬です」


 「・・・・・・」


 「だから、カオ国にも売ろうよ。サリーサリー王女もきっと喜ぶよ。いいね~~~」


 その日の夜、ルイ王太子の机のうえに、一本の黄色い粉末が置いてあった。


 「サルベーセンさんが、兄上の体を心配して、お酒の前に、こちらを飲むとイイと申していました」とメモ書きがあり、ルイ王太子は、それを手に取り、『毒か?』と、呟いた。


 次の日、4人の従者は、サルベーセンが送って来た黄色い粉を水に溶かし、毒見をしてみた。


 「飲みにくいですが、特別、変化はありません。大体、お酒の前に飲めって・・、彼女、リカの国でも、飲んだくれているのでしょうか?」


 「薄めて、水だと言い張っていなければいいですね」


 「しかし、マリヒューイ様と彼女がいないだけで、なんだか味気ないですね・・」


 「・・・・・・」



 数日後、ルイ王太子は、国王陛下のご逝去を発表し、国民は、1年間の喪に服す事となった。


 後継者は、当然、ルイ王太子が継承され、王宮は、忙しく代替わりの式典の準備に取り掛かった。


 「まずは、国王陛下の国葬を行い、即位の式典は、7カ国会議と同時に開催するで、よろしいでしょうか?」


 「ああ、そうしよう。その時は、是非、あの二人にも参加して欲しい物だ」


 「・・・・・・」



 リカの国のサルベーセンは、リリアールと一緒に、優雅にリカの国を楽しんでいる。リリアールは、この国の王宮が気に入ったようで、毎日、嬉しそうに庭園で、くつろいでいる。


 「リリアール、リリアールは、本当に、貴族の中の貴族の様で、豪華な食器や整備された庭園が似合うね」


 「ここの庭は、素晴らしいです。きっと、王妃様の趣味でしょう。それに比べてヴィン家・・・」


 丁度、側にいたメイドが、教えてくれた。


 「ここはすべて王妃様のご趣味で作られた物です。お二人は、長年、お子様に恵まれなかったのですが、マリヒューイ様を授かってから、国王陛下が、王妃様に、この庭園をプレゼントされたのです。しかし、マリヒューイ様が、誕生してすぐに、王妃様のお国に預けられて、内紛が起きました」


 「あの時は、本当に、国民も何が何だかわかりませんでしたが、今では、国王陛下と王妃様、マリヒューイ様が、この国をお守りになった事がわかりました」


 「この小さなリカの国を利用して、この国や、公国すべてを手に入れようとしていた人間がいたという事を・・・。マリヒューイ様を守り、犯人を誘い出す為には、それ意外なかった事を、国民は、理解しています。しかし、当時、どうしてもお二人のお話が聞き入れられませんでした。あの時は、国民すべて、病に罹ってしまったのでしょう。それから、国が閉鎖され、大騒ぎになりましたが、しばらくして、落ち着き始めると、誰もが国王陛下と王妃の話を信じる事が出来ました。それから、どんどん国が豊かになり、すべての国民は、仕事に就き、田畑を耕し、綿花を布に変え、くすりの研究を始めたのです」


 「どうして、そのように国民はしようと思ったのですか?」


 「さぁ、わかりませんが、ある日、すべての国民が自然にそう思えたのです。荒れ果てた王宮の修理も始まり、誰もが国王陛下と王妃様が、いらっしゃった元の王宮にする為に働きました」


 「王宮やこの街が再建されると、どんどん仕事が増えて、国民たちは、働き、生きて、成長しました。情報は、この閉鎖された国内だけですか、生活全般は賄う事が出来ました」


 「では、もう公国に属さなくてもいいと考えますか?」


 「いいえ、今までは、国の再建の為にだけ働いてきましたが、やはり、我が国の特産を多くの人達にも知って欲しいです。あの黄色い球根のように、我が国には、たくさんのいい物があります」


 「そうですね。リカの国には可能性が沢山あります」




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