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プレゼント

第35章

 昨晩、遅くまで公務に追われたルイ王太子は、午前中だけでも眠るように側近に助言され、ゆっくりベットで眠っていると、


 「王太子様、申し訳ありません。今、外の者から、ヴィン邸のサルベーセンが、早朝、王都門方面に出かけたと、連絡が有りました」


 ルイ王太子は、ガパっと起きて、「どのような理由か?」と、聞いたが、イカルノとビンエムーは、答えられずにいた。


 「今、エフピイの部隊に探させていますが、いかがなさいましょうか?」


 「彼女、王都門からどこに向かう予定だ?もしも、王都門から外に出たら、反逆者として、王宮に閉じ込める。そのように指示しろ」


 「はい」


 「サルベーセン嬢、新年早々、いい度胸です。まさか、約束を破って、逃げるとは・・・」



 一方、サルベーセンは、この世界に来て、初めての麺をすすっていて、エフピイの真剣さに気づいていない。


 「王都門が開いていたら、わたくしも考えますが、今日からは、毎日、王都の街の観光です」


 「え?」


 「先生は、王都門を見たことがないらしく、僕たち、初めて王都門を見に来ました。後は、朝食も食べていないので、朝食を食べて、買い物して、観光します」


 「明日は、高級店が立ち並ぶ通りを、歩いてみる予定ですけど、ランチにお薦めのお店はあります?」


 「サルベーセンさん、お願いします。私も同行させて下さい」


 「しかし、新年ですよ。ご家族はよろしいのですか?」

 「家族はいません。大丈夫です」


 「でも、ケンティの馬車での練習も兼ねているので、ケンティは、どう?」


 「客車の外の席に座り見守ります」


 「それなら安心だわ、ケンティもそれでいい?」


 「それで良いです。よろしくお願いします」


 その後、その店には何人ものシスターがやって来て、事実確認を行なった後に、散って行った。


 「もしかして、まだ、わたくしの事を監視しているの?」


 「・・・・・・」


 その日は、王都門の町で、昼過ぎまで遊んで、次の日は、まだ店の閉まっている高級店通りを1軒づつ見て周り、リリアールの興味を満たした。


 「骨董店だけが空いている。見てみましょう」とエフピイと一緒に入って、色々な物を見て回って、リリアールが、古いけど色鮮やかなペンを見つける。


 「コレ・・」

 「欲しいの?」


 「王太子に、誕生日プレゼントにしたら?」


 「新年の賄賂ではなく?」


 「ええ、あなた、プレゼントあげていないでしょう?」


 「ーーーババロンを弾きましてけど、アレでは駄目だよね」


 「うん、アレだけでは駄目です」


 「・・・すいません。このペン下さい」


 「お嬢さんは、目が良いですね。このペンは、掘り出し物ですよ。滅多に出回りません」


 「おいくらですか?」


 「120000pinです」


 「・・・・・・」


 「高くない?」


 その場には、サルベーセン、エフピイ、リリアール、ケンティしかいなくて、誰も正解がわからなかった為に、仕方なく、代金を支払い、プレゼント用に包んでもらって、その高価な骨董ペンを、近くで待機して、常に報告しているシスターの1人に、渡して王宮へ届けてもらった。


 「やはり、エフピイだけではないと思っていましたが、こうも簡単にバラされると、なんだか悲しい」


 「すいません。これが、私たちの仕事なので・・・」



 サルベーセンから、王宮で、忙しい公務を務めている王太子に、届けられたプレゼントは、綺麗で上品な包装をまとっていて、従者4人も意外だと目を見張っていた。


 「今頃、誕生日プレゼント・・ですか?」


 それでも、王太子は嬉しそうに包装を解いていき、箱を開けた。


 「意外に・・・・」

 「ええ、本当に、意外に・・・」

 「ええ、本当に、彼女が選んだのでしょうか?」

 「たまに、彼女がわからなくなります」

 「このようなセンスが彼女にあるとは・・・、驚きです」

 「ええ、安物か食べ物だと思いました」

 「・・・・・・」


 リリアールが、選んだ贈り物は、王室にいる5人に高評価を得て、その後、良い影響を与えたことを、この時は、誰も知らなかった。


 サルベーセン一行は、

 「ねぇ、王都での買い物は、こんなにお金がかかるのね、本当に、知らなかった、勉強させてもらいました」


 「その後買った大皿が、90000pinなのは、本当に納得いかないよね」


 「でも、あの大きさのお皿が欲しかったから・・・。麺づくりに・・・」


 その日、あまりにも散財したので、帰り道は無口になって、どっぷり疲れた。


 次の日の朝、王太子の機嫌が良かったのか、マリヒューイが、顔を見せた。


 「先生、今日は、どちらに向かうのですか?」


 「おはよう、マリヒューイ、今日は、昔、王宮があった所に行きます。一緒に行く?」


 「はい、そのつもりで来ました」


 「昨日のあのプレゼント、王宮内で、ものすごく好評でしたよ。だから、今日も、こちらに伺う許可も直ぐにでましたから・・。今日の予定も彼らは把握しています」


 「そうなの?リリアールがとっても気に入って、王太子へのプレゼントに助言してくれたの。そうか・・、それは、高い代金を払ったかいもある。わたくし、泣きがながら支払ったんだよ」


 「価値がわかる人間と、そうでない人間の差です」


 マリヒューイは、嬉しそうに2人の会話を聞いていた。その時、ケンティがやって来て、

 「マリヒューイ、今日は、馬車を引いてみる?」


 「えっ、いいの?」


 「僕が、外の席に座って、教えてあげるよ」


 「ーーーーーー」


 3日目、エフピイは、驚きを隠せない顔をしながら、ケンティと一緒に、外の席に押し合いしながら座り、手には汗をびっしょりかいていた。


 「リリアール、マリヒューイ、大丈夫かしら?」


 「それより、わたくしは、それを見守っているエフピイの心臓の方が心配です」


 「そうだよね、でも、私たちも一心同体だからね。覚悟を決めておかないとね」


 3日目は、少し街にも人が出てきてて、馬車は何度か危険な目に遭いながらも、今は、遺跡となっている王宮にたどり着いた。


 ケンティ以外は、到着後、グッタリしていたが、マリヒューイは、満足気に馬を降り、サルベーセン達の言葉を待っていた。


 「マリヒューイ、初めての馬車はどうでしたか?」


 「すごく楽しかったです。みんなんを乗せて走るのは、気持ちいいです」


 「ええ、それは、良かった。はぁーーー疲れました」


 4人ともう1人は、今では、姿を変えたその王宮の後を、ゆっくり歩き始めた。


 マリヒューイは、ケンティと二人で、気を利かせたのか、前を楽しそうに歩いていて、当然、エフピイは、マリヒューイの後を追い駆けている。


 「どう?リリアールが、どうしても来てみたかった所でしょう?」


 「ええ、王都でヴィン邸を、出る事はなくて、この地にもう一度立てるとは思ってもみませんでした。懐かしいというよりは、悲しいです。でも、あの時、見た城壁が残っていると思うと、考深い」


 「でも、わたくしが死んだ後にも、戦争があったのか?それとも、やはり、内戦があったのか?王宮は、移動しています」


 「この城壁や、エグられた地面などを見ると、戦いが有った事は、確かだね。それもずいぶん前に・・・」


 「ここに王宮が立つ前は、ヴィン邸の近くの公園に、王宮は有りました。この国は、内戦を繰り返し、その度に、多くの国民が亡くなっています。だから、あの公園は、慰霊の公園です」


 サルベーセンは、すでに誰が話しかけているかを知っているので、驚くことはなく、ゆっくりと振り返った。


 「王太子、新年、おめでとうございます。この様に話しかけられる事に、慣れたのか驚きもありません。今日は、マリヒューイが心配で来たのですか?」


 「いいえ、あなたと休暇を楽しむ為にきました。サルベーセン嬢、私とデートでもしませんか?」




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