誕生日パーティー
第29章
またまた始まった、3人ともう一人の生活は、何も言わなくても日常は動き出し、ケンティとマリヒューイは、王太子たちが用意した平民のお迎え馬車に乗って、学校へ向かった。
サルベーセンは、窓を覗き
「誰が、敷地内に勝手に馬車を入れていいと、許可したのかしら・・・、絶対におかしい」
リリアールは、
「でも、あなた以外は、おかしいと感じていないのが、また、おかしいわよね。鍵なんて、なかったようね???」
「貴族の家って、鍵を掛けないの?」
「そのような事、わたくしは知らないわ・・。大体、自分の屋敷にはそれなりの警備部隊だいるでしょう?こちらの屋敷の様に、一人暮らしの家は、なくってよ」
「そう言う事が、本当に、本当にわからない・・・。警備の人を雇うの?」
「でも、マリヒューイが、滞在している限り、ここの警備は、この国一番なのでは・・?」
「あ~~、そうだよね。あ~~~この状況、嫌になったら、また、カオ国に旅行に行きたいね」
「あなた一人で行っても、あの待遇はないよわよ、絶対に・・」
「・・・やさぐれてやる!! 」
学校が始まってから、孤児院のシスターは、他のシスターや学校に行っていない子供たちを連れて、庭の整備に訪れてくれて、畑や鶏、馬についての助言をくれる。最近は、サルベーセンの気持ちも落ち着き始め、庭で、誰が何をしていても、気にしなくなってきた。
「シスター、キッチンで、食事をして下さい~~」と、食事のサービスも始めた。
ジンは、時々やって来ては、領土についての説明をしてくれて、サルベーセンは、書類に目を通し、サインをしたりして、事務的な仕事も増えて来た。
「ジンさんは、港の警備の仕事だったのに、このように、わたくしの代わりに領土の仕事を任せてしまって、申し訳ありません」
「いいえ、イレブン・ヴィン領の事件をきっかけに、我々のような部隊が、その港のある領土も監視するようになり、各役場も、王都の国の中枢に毎月、報告書を送る決まりが出来ました」
「部隊の地位が、一段、高くなったと思っています」
「それならいいけど・・」
「その報告書の書式も、サルベーセンが、提出した書式を真似して作っている様です。今までの書類は、大変、わかりづらく、不透明でしたから、サルベーセンが、裁判所に提出した書類が、完璧で、牧師の収監も素早く行われ、それを手本にしています」
「我々も、ヴィン領主を見習いながら、領土を整備していきたいと考えます」
「それには、役場に入金されたお金で、領土の道や橋の整備、困窮者の家の補習を進めたいと考えますが、いかがでしょう?」
「??????」
「これからは、自然に生えてくる運だのみの麦ではなく、絶対的な購入者がいる利点を生かして、イレブン・ヴィンで、麦の生産を広げたいと、領民から提案が有りました。いかがですか?」
「領民から?」
目の前に、積み上げられた、サルベーセンが、好きな牧場チーズや乾燥果物、ワインが山ほど摘まれ、キルトで出来た子供服や、サルベーセンのデザインした服も大量に進呈されている。
この状態で、この話・・・・・。
ジンって、警備の仕事より、領主の仕事の方が、向いていると感じる。優秀だわ・・・。
「ええ、大丈夫ですが、一度、収支の計算をして、そちらの公共事業の予算は、わたくしが毎年決めます。その予算内で、道路の補修や、麦畑を広げる費用にして下さい。麦の出来高が不安定だと、翌年は、収入が減るでしょうし、毎年、純資産を見て、わたくしが領土に使う金額を決定します」
「わたくしは、父上の様に、王都で商売を広げる予定がありませんので、領土の収入は、麦と地代と税のみになり、わたくしがこちらで暮らすにもお金がかかりますから、すべてを領土の為に使う事は出来ません」
「はい、承知しました。その予算は、どのくらいで決まりますか?」
「自分一人で、書類整理を初めて、役場から新しい書類も頂いたりしますので、1ケ月以上はかかります。新年明けには、そちらの領土と役場に通達します。よろしいでしょうか?」
「はい、では、新年度から、その予算内で、色々な事を始めたいと思います」
ジンは、最後に挨拶をして、意気揚々と帰って行った。
「この国で、勉強したことがないから、色々な国の仕組みがわからなと、領主の仕事は無理なような気がするよね」
「この部屋、昔は、ヴィン伯爵の執務室だったけど、今では、領土からの貢ぎ物であるれている」
「ええ、豪華さのかけらもなく、書類だらけ、食べ物だらけで、気が滅入る」
サルベーセンが、チーズを食べ、ワインを飲み、頭を抱えて、計算に勤しんでいると、シスターが、
「お客様が、お見えです」と伝えて来た。
「ジン?また何か用・・・?」
そこには、王太子とイカルノが立っていて、この部屋の惨状を見ても何も言わずに、机の前に、椅子を置き、平然と座った。
「・・・・・・」
「ワインでもお飲みになりますか?」
「イヤ、結構、そのワインを飲むと、具合が悪くなる。王都には、素晴らしいワインが揃っているのに、まだ、君の領土のワインを飲んでいる君は、本当は、領土を愛しているのだろう」
「ーーーでは、お茶でも・・」
「ああ、生姜シロップを入れてくれ、外は寒くて、体を少し温めたい。しかし、この部屋?」
「父の執務室です」
イカルノが、
「倉庫かと思いました。この様にまた食料を集め出して、冬に備えているのですか?」
「ジンが運んでくるのです。雪が止んで、今度は、物がダブついていると、考えています」
サルベーセンが、キッチンで、お茶の用意をして、窓際の応接の間に移動して、話し始める。
「そうだ、新聞は見たか?」
「王都には、新聞があるのですか?」
「・・・・・・」
「新聞は、全国どこでも発行していると思うが・・・?」
「いいえ、知りませんでした」
「父上の名誉回復には時間がかかるが、君が今回、食糧支援を王都にしてくれた事を発表した」
「??????」
「王都の市民は、君に感謝しているだろう」
「??????」
「だから、この前の馬車の購入にように、騙される事が、少なくなっると言う事だ。それと、君が親しくしているあのシスターだが、王宮から派遣している者で、内密に君たちを警護している」
「ケンティとマリヒューイは、学校から帰って来ると、馬車の訓練をしているようだが、彼女が許可するまで、絶対に、外には出して欲しくない。二人で学校に行く事は認めるが、ケンティが、もう少し上達するまでは、止めてくれ」
「なぜ、今回、シスターは、スパイだと、簡単に白状したのですか?」
「君は知らない事が多いが、本当に頭がいい。君と彼女に仕事の依頼に来た。勿論、彼女は私の事を知っている。凄腕の女性剣士だが、それだけでなく、すべての事をこなすことが出来る」
「計算や書類整理ですか?」
「イヤ、付き人だ」
「??????」
「もうすぐ、年末恒例のパーティーが開かれる。何年も前に婚約した事は、発表されているが、サリーサリー王妃は、この国を訪れた事がない。しかし、このパーティは特別なもので、私の20歳になる誕生日パーティーだ」
「それに、サリーサルー王女として参加して欲しい」
「ーーー頭、おかしいのですか?」
「お前!! 」と、イカルノが襲いかかってくるのを、ルイ王太子は、止めた。
「だって、サリーサリー王女と、私の身長差は誰が見ても、歴然です。肌の色もあんなに白くありませんし、美貌でも、少し劣っています」
「うん?少し・・・・」その場の2人と幽霊1人は、疑問を持ったが、問い詰めなかった。
「考えても見て下さい。サリーサリー王女の取り巻きは大勢です。シスター一人では、サリーサリー王女に失礼です」
「エフピイ(シスター)、のような女性は、王宮には沢山いる。彼女はその中のトップだ。元貴族の出身で、幼い頃から、王宮に仕えた」
「サルベーセン嬢、その日、父上の商会を、泡のように消し去った人物に会ってみたくないか?」




