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王都に到着

第23章

 カオ国から帰路は多くの港に寄りながら、のんびりと、2ケ月以上寄り道しても、サルベーセン達は、とても満足だった。


 「マリヒューイ、楽しいね。買い物しながら、宿屋に宿泊し、ゆっくりお風呂に入り、眠れる」


 「はい、このようにのんびりと旅をしたことは、初めてです。いつもはピリピリしながら町も見ずに、通過していました」


 「そうなんだ。この公国には、7つの国があるけど、すべて言った事があるの?」


 「はい、多分、すべて訪れたと思います。でも、カオ国のように、楽しんだ国はありません」


 「カオ国は良かったね。毎日、温泉入り放題だもん。いい国だったよね」


 「サルベーセンさんは、やはりイレブン・ヴィンに帰る事が出来ないのですね?」


 「うん、こうなったら王都も楽しんで、色々な事を学んでから、帰る事にしました。平民だと自由もあるし、私の事を知っている人もいなそうだから、楽しんで毎日を過ごしたいと思う。だから、マリヒューイは、気にしなくていいよ。どうせ、いつかは、リリアールと、王都に旅行に行くつもりだったから、予定が早まって、旅費がタダになって、いい事ばかりだよ」


 「ーーーそれに、大量に欲しい物を購入したから・・・、全部持って、移動するには、私とケンティだけでは、不可能でしょう・・・」


 「それもこれも、リリアールが、これも欲しい、あれも欲しいって、言うから・・・」


 「サルベーセン、王都で暮らすには、これらの荷物でも足りないくらいです。正式なドレスを一着も持っていないなんて・・・」


 「王都で暮らしていた時も、外に出ていなかったので、仕方がないでしょう。大体、こんなに沢山の布・・・いるの?」


 「流石に、シルクは領土では生産がなかったけど、綿ならイレブン・ヴィンに余っているに・・」


 「イレブン・ヴィンの布は、丈夫で、労働者向きの布が多いの、それに寒冷地だから、厚手でしょう。このようなサラサラの布はどこを探してもありません」


 「サルベーセン、王都で、王室の後ろ盾なく暮らして行くのは、それなりの覚悟が必要よ。田舎のあの家で、飢えた以上に、飢えるかも知れないのに・・・。この油の量・・・。何?」


 「知ってた?この世界に油がある事、イレブン・ヴィンでは、牧師さんが作るバターが支流だったけど、油が売っていたの。ーーーもの凄く高額だったけど・・どうしても欲しかった。嬉しい・・」


 「でも、王太子が払ってくれたのよね」

 「彼、いい人だわ~~~。惚れ惚れする」


 「なんて・・、お金と食べ物に弱い・・・、残念な人間でしょう」


 「何、言っているの?オイルは、お肌にもいいのよ。私は、断然、クリームよりオイル派だからね。王都にいる間に、リリアールのご忠告通りに、日焼けした肌を、美白に戻します」


 リリアールと船室で話していると、全身、オイルだらけのサルベーセンの元に、ケンティが訪ねて来て、


 「ーーー先生、なんだか全身が、光っている」


 「ケンティ、王都に着いたら、この油でお芋を揚げて、ご馳走してあげる」


 「・・・・・・」


 「よくわからないけど、明日の朝には、王都に到着すると、イカルノ様が言っていました。下船の準備をしておくようにと、伝言を頼まれました」


 「わかりました。やっと、到着ね。楽しい旅が終わり、戦国の世へ・・・」


 ケンティは、ドアを閉めて、マリヒューイに、話しかける。


 「先生、船に乗って、また、頭がおかしくなったみたいだ。どうする?マリヒューイ・・・」と話をしていた。


 リリアールと、サルベーセンは、おかしくてお腹を抱えて、いつまでも笑って、最後の夜を終えた。



 次の朝、人々が働き始めた頃に、船は静かに入港して、多くの人々が、王太子一行を出迎えた。


 ここから、私たちは、2年間、分かれて暮らす。マリヒューイは、寂しくなれば王都のヴィン邸に来ることが許されている。


 「ルイ王太子、皆さん、大変、お世話になりました。皆さんを信じて、イレブン・ヴィンに戻れると言う報告を楽しみにしています」


 サルベーセンは、貴族のように、凛々しく、深く挨拶をして、王族を見送った。


 その後、「サルベーセンさん、我々が送ります」とジンたちが私服警官のように、平民の衣類で登場して、ケンティは、嬉しそうに、荷積みを手伝い始めた。


 「・・・しかし、相変わらず、荷物が多いですね」


 「ええ、2年分の食料を調達して、彼らを散財させてやりました」


 「・・・・・・」


 「しかし、イレブン・ヴィンからも、牧師さんから、大量の食料が送られてきていますよ」


 「???どういう事?」


 「雪解けと共に、お菓子工場は、準備を始めましたが、それでも今年は麦が豊作で、このままだと、腐ってしまうので、先生のお屋敷に送ったようです」


 「彼女たち・・、今年もクッキーを作って、市場で売るの?」


 「はい、牧師に鍵を渡して、ヴィン家の管理を頼みましたが、優秀な牧師は、引き続き麦を収穫して、クッキー工場を経営して、収支決済報告を、毎月、王都のヴィン家に送ると言っていました」


 「ーーーーーー」


 それから、馬車に揺られて、初めてのヴィン家に到着した。

 「おおお・・・、大きいね」


 「ええ、元は名家でしたから・・」


 サルベーセン達を迎えたのは、マルクと、見覚えのある大工ご一行。


 「どういう事ですか?」


 ジンが、説明する。

 「女性たちは、今年も、クッキー工場を初めて、冬にはキルト生産も順調に売り上げました。しかし、今年・・・・、サルベーセンさんから工事の依頼がなくて、王都へ出稼ぎに来たようです。幸い、この屋敷には、使用人部屋もあると、マルクさんから聞きまして・・・」


 「ねぇ、領主って、こんなにも領民から、お金を巻き上げられるものなの・・・?」


 「後・・、サルベーセンさんが、青い屋根の村を助けたのは、ランキング最下位だったからで、ブービーは、どの村だったのかも、今、一番、ホットな話題でした」


 「・・・面白がっているよね?そんな・・・、期待されても・・」


 「しかし、役所は、また、王室から多額の入金があり、イレブン・ヴィンは、今、湧き上がっています。だから、牧師さんが、一度、こちらにお邪魔して、今後のご相談をしたいと申してました」


 「あの牧師、神に仕えながら、経済を動かす事が生きがいなのかしら?優秀過ぎるでしょう?」


 それでも、久しぶりに会う、マルクと見慣れた顔に、懐かしくなり、涙が出た。


 ケンティは、母親に抱きつき、しばらく甘えていたので、サルベーセンは、出稼ぎ集団と話し合う事にした。


 「折角、来てもらったけど、私も、今、到着したばかりで、何をお願いするか、決めていない、どうしましょう?」


 屋敷を見ると、2階建ての横に広いお屋敷で、庭には涸れた噴水もあり、貴族生活の余韻を残している。


 「とにかく、2階の日の当たらない部屋を、食料保管庫にして、イレブン・ヴィンからの荷物と、わたくしが持って来た荷物を入れて下さい。その料金は支払います」


 大工たちは、嬉しそうに「ハイ!! 」と返事をして、荷物を運び始めた。それから、各々の部屋を割り当て、自炊させて、どうにかマルクと話すことが出来る状態になった。


 「マルク、ありがとう。長い間、ケンティと別れて寂しかったでしょう?この後は、どうにかしますから、体調が整ったら、家に戻って大丈夫です。本当に助かりました」


 「お嬢様、いえ、サルベーセン領主、私は、王都生まれで、夫がなくなるまで、王都で暮らしていました。こちらでの仕事が無くなり、主人の故郷に戻る時に、流行り病で夫は、亡くしました」


 「王都の事は、詳しいと思っています。どうか、このまま、ここで雇って頂けないでしょうか?ケンティを、王都の学校に行かせたいです」


 「ーーー、ごめんなさい。それは、出来ません」


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