久しぶりの対面
第21章
サルベーセンは、振り返り、ルイ王太子といつもの4人に数か月ぶりにあった。
「あなた・・・、どうしてこのような場所、・・・よろしいのですか?」
よく見ると、後ろには、サリーサリー王女とメイド達もスタンバイしている。
「偶然だが、僕たちも、今日はここに遊びに来たんだ。久しぶりだ、サルベーセン嬢・・」
「本当にお久しぶりで、ルイ様の事をすっかり忘れていました」
「サルベーセン嬢、汚れた足を洗い流してから、足を浸けたまえ・・・」
こいつ、私を非常識人間にしたいのか?引きつった笑顔で、サルベーセンは、答える。
「ご親切に、ご指導ありがとうございます」
そこには、苦楽を共にして、遠くの国までやって来た、あやふやな友情もなく、まるで敵対心のような空気が、二人の間には流れていた。
王太子たちに背を向け、マリヒューイ達と足を洗い、足を浸けると、
「あああ・・、足だけでも十分に、気持ちがいいわ~~~^」
リリアールが、
「今日の王太子、なんだか不機嫌だったよね」
「うん、大体、偶然だな・・なんて、白々しい、それに、どうして、怒られなくてはいけないの?」
「私だって、来たくてこの国に来たのではないのに・・・」
「先生、ごめんなさい・・・」
「いいの、いいの、実は、王太子たちの事、すっかり忘れて、ここの生活を楽しんでいたのは、事実だから・・。気にしないで、貴重な体験よ。こんな、リゾート地が、同じ公国に存在するなんて、イレブン・ヴィンの人たちは想像できないでしょうね」
リリアールが、
「サルベーセンに、マリヒューイを取られて、ヤキモチを妬いているのかしら・・?」
3人は、足を浸ける椅子に座りながら、そっと、振り返ると、5人と王女一味は、じっとこっちを見ているのがわかった。
「ーーー帰る?」
「そうだね。お腹は空いているけど・・・」
ケンティに謎のサインを送り、戻る事を伝えて、そそくさと戻ろうとした時に、ビンエムーに、道を塞がれた」
「あな、あな、あなた、どこから出現したの?」
ビンエムーは、サルベーセンの質問には答えずに、
「サルベーセンさん、ここでの出会いは、偶然ではないと知りながら、帰りを急ぐのですね。そうです、我々は、マリヒューイ様の信頼を裏切り、嫌われてしまいした」
「・・・・・・」
「マリヒューイ様、イカルノと私たちは、とても反省しています。どうか、今一度、私達と同じ席について頂けないでしょうか?」
マリヒューイは、下を向いたまま、黙っている。長い時間の沈黙の後に、ケンティが合流して来て、「先生、ルイ様が、帰る前に、一緒にお昼を食べようって、言っていますが、どうしますか?」
マリヒューイは、ケンティに聞く。
「あなた、食事をしたいの?」
「うん、食べたい、先生が作ったみたいな、カレーがあったよ。いい匂いがして、美味しそうだった」
「・・・・・・」
サルベーセンは、絶対に、食事に負けたのでは無いと、思いながらマリヒューイに聞く。
「最後は、一緒に戻るのに、喧嘩したままでは、気まずいから、食事くらいは一緒にしましょうか?」
マリヒューイは、頷き、サルベーセンと手を繋ぎながら、王太子のいる豪華なバーコラの元を訪ねた。
その頃には、一般客は、すべていなくて、王室貸し切りのリゾート施設に変化していた。
静かに席に着き、給仕の人たちは、きっと一流の人達で、言葉も音もなく、静かで、重苦しい雰囲気で息が詰まる。マリヒューイが、いつもこのように食事をしていると思うと、心が痛かった。
ケンティですら、大人しく、話さずに食べて・・・と思ってケンティを見ると、ケンティは、馴染みのメイドさん達に、カレーを匂いを届ける様に、手でカレーを扇いで時間を潰していた。
メイドさんの困惑した様子を見て、笑いを堪えていると、リリアールが、マリヒューイに、ケンティとメイドを見る様に教える。
マリヒューイは、小さく笑って、やっと食事を始めた。
マリヒューイが、食事を始めたと同時に、サリーサリー王女は、コップに手をかけ、飲み物を催促して、給仕たちから果物酒を頂いていた。
「サルベーセン嬢は、カオ国の果物酒はどうでしたか?」
「え?・・・・はい、大変、素晴らしくて美味しいと思いました」
「それでも、あなたは、水やお茶で薄めて飲んでいると聞いていますが?あなたには少し強いのでしょうか?」
「ああ・・、あれは、水代わりに飲んでいて、美味しくて飲み過ぎると、酔っぱらってしまいますので、気をつけています」
4人の従者とルイ王子は、サルベーセンの家のワインを飲んで、酷い目に遭った事があったので、それからは、サルベーセンの飲み方を真似して、常に水やお湯などで薄めて食事中には飲んでいた。
ルイ王太子は、
「彼女にとっては、アルコールは水で薄めれば、水らしいです。決して、カオ国の果物酒が不味い訳ではないでしょう」
「ええ、大好きです。それにお酒は飲み過ぎると健康を害します。水程度が丁度いいでしょう」
ケンティが、メイドにおかわりを頼んでいる時に、ルイ王太子は、サルベーセンに質問する。
「裸足で、土の上を歩いてみて、どう思いましたか?」
「ええ、驚きました。この国は、まるで、炭の上にいるようです」
「炭ですか?あなたのキッチンで使っている?」
「ええ、雪の中で、私が作っていた炭です。炭は、じっくり燃やして、炭になってから、又、燃料になります。だから、この国は、上手に、この炭と付き合う事が必要だと思いました」
周りのみんなは黙り、サリーサリー王女の質問を待った。
「マリヒューイ嬢、あなたは、こちらのサルベーセン嬢の意見をどう思われますか?」
「はい、そう思います」
その場にいた、サリーサリー王女は、パッと顔が明るくなり、その場の重鎮たちも歓声が上がった。
ルイ王太子たちも安堵の様子を現したので、ここで、サルベーセンは、釘をさす。
「マリヒューイは、そう思うと答えただけです。ここの国は、あなた達次第で、発展するのです。このような小さい子供に、問うような事はしないで下さい」
「マリヒューイは、普通の子供です。国の運命を知りたいのであれば、あなた方が考え、発展させればいい。私が言った事は、この土を上手く利用さえすれば、発展できると言いました。しかし、この国の人々の安全を保証したのではありません。国民の命を守る仕事は、この国の上層にいるあなた方です」
「今後、マリヒューイの命を狙う事があれば、きっと、罰を受けます」
(はったり、だけどね。)
ケンティが、食べ終わったので、
「今日は、これで失礼します。行きましょう。マリヒューイ、ケンティ・・・」
サルベーセンは、軽く震えながら、その場を立ち、二人の子供と一緒に、その場を去った。
馬車に乗るまでは、なぜか早足で、二人の手を握り締めている手は、びっしょり濡れていた。
馬車に乗ってから、ケンティが、サルベーセンに質問する。
「どうして、僕らを狙った人物は、この国の人だとわかったのですか?」
「私たちを襲撃した人達は、この国の人達だとは思わないけど、マリヒューイが、何度も危険にあっている内の一つは、この国の人だと思ったの」
「一つは、王太子たちが、あまりにも私たちに会いに来るのに、時間がかかり過ぎている事。後は、マリヒューイが、私たちの所に来てから、軟禁が解かれて、自由になった事を考えたらそう思えました。・・・・後は、勘です」
「ケンティもパズルをわせるように、世の中を見て行くと、見えない事が見えて来て、面白いわよ」
ケンティは、難しそうな顔をして、『う~~~。』と、うなり、そのまま、馬車で眠ってしまった。
リリアールは、小声で、『わたくしのスパイのおかげでしょう?ケンティを悩ませてどうするの?」と聞いて来た。
マリヒューイは、ケンティが、悩みながら眠っている様子を見て、笑っていた。




