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必然の出会い。

第2章

 「怖くても、町に出て見よう」と思いながら、フカフカのベットで眠りについて、次の朝を迎えた。


 「サルベーセン、本当に、町に出て行くの?」


 「そのつもりよ。この置物が高そうだから、これと、2、3枚のドレスを持って現金に換えて、多少の日用品を購入しなければ、多分、数か月前のサルベーセンと同じ運命を、この冬に迎える事になる」


 「・・・・・・」


 サルベーセンは、ため息をつきながら、

 「お金って・・・、本当に大切だと、今ならわかる・・・」


 数か月、楽しい引きこもり生活を続けていたが、生きる為に重い腰を上げて町にやって来たサルベーセンは、リリアールに、この町について少し尋ねた。


 「そうね、この町は、この国でも相当田舎だったのだけど、近くに大きな川が流れていた為、現在、川を使っての発展を目指している政府によって、この町にも変化が表れ始めたの」


 「・・・???」


 「わからない?この町は隣国に近いのよ。川の終わりは海に続いていて、その先には違う国があるらしい」


 「へ~~~、貿易が始まって発展したんだ。幽霊なんだから、行ってみたらいいのに・・?」


 「それ! 不思議よね。どういう訳か、あなたの近くにしか存在できないの!! 何度も、何度も、王都に向かおうとしかけど・・、それは許されなかった」


 「???、王都って、この国一番の街って感じ?」


 「王都は、もっと、素晴らしい街だと思うわ、色々な所には行ったことがないけど・・」


 「???、かみ合わない・・・」


 「初めてこの国に来て、勇気を出して町に出て、質屋を探す・・・、夢のない話だけど、お金がなければリンゴ一つ買えない」


 リリアールが、教えてくれたお店を訪ねて見たら、そのお店は、貧乏人が足を踏み入れてはいけない門構えで、スルーする事しか出来なかった。


 「どうして、前のサルベーセンは、良く宝石を売っていたのに・・・?」


 「・・・・、きっと、騙されていたに違いない。だって、あそこ買取していないよ。転売目的に安くサルベーセンの宝石や貴金属を買っていたとしか思えない」


 次に、ドレスを買い取りしてくれそうな店を訪ねたら、ドレスより置物に興味津々の様子で、まったく信用できそうにないので、その店も急いで抜け出した。


 「どうして、売らなかったの?」


 「ドレス買取って、看板を出しておきながら、貴金属ばかりに値段をつける店は、前世で、信用できないって、教訓があるの!! 」


 リリアールは呆れた顔で

 「ふ~~~~ん、よくわからない」


 「勘よ!勘!あの店、駄目だと思う。でも、この置物・・、きっと、売れると思った。あの店主、ヨダレガ出そうな程、じっくり見ていたでしょう?」


 「この置物を、現金化できるお店を、根気よく探しましょう」


 半日歩いて、お腹が空いて、麦で作ったクッキーを食べ、金属で出来ている花瓶に、コルクで蓋をした水筒に、お茶を入れて来たので、じっくり飲み、広場の噴水の近くのベンチで休んでいると、身なりも綺麗で、顔も整っている女の子が、じっと、サルベーセンを見ていた。


 サルベーセンは、何の気なしにその子に手招きをして、先ずは、無垢な子供から、話しかけてみた。


 「どうしたの?一人?」


 その女の子は、頷いて、サルベーセンの暖かさを探るように体をつけて隣に座って来た。

 「ふふふ・・、寒かったの?」


 サルベーセンは、カバンの中からストールを出して、二人の膝にかけて、女の子の親が探しに来るのを待っていた。


 初めての町だったので、何時間でも人々を、観察する事が出来、ベンチで待つことは苦痛に感じなかった。


 高級そうなドレスを身にまとっている女の子に、麦のクッキーを渡すことに抵抗はあったけど、「食べる?」と聞くと、頷いたので、一つ渡して様子を見た。


 「アレルギーとか大丈夫かしら?最近は、子供にお菓子もあげられないから・・・」


「お茶も飲む?」また頷いたので、お茶も飲ませた。


 2,3時間すると、その女の子は眠ってしまい、どうする事も出来ないので、そのまま観察を続け、親が来るのをひたすら待った。


 「ルイ様、こちらです。マリヒュール様が見つかりました」と、4、5人のいかにも精鋭らしき若者が、近づいてきて、最後に現われたのは、精悍な若者だった。


 「お前は誰だ。名を名乗れ!! 」


 「え??私ですか?サルベーセンと申しますけど・・、この子の知り合いですか?ご両親が、迎えに来るかと思っていたのですが・・・」


 「本当に知り合いですか?こんな小さな女の子、何時間も広場で待たせるなんて、何か怪しい・・・、もしかして、虐待?」


 その場の5人の男の子は、『虐待』と言う言葉に驚き、サルベーセンに襲いかかろうとしたが、ルイと言う青年が止めに入った。


 「待て!! マリヒューイに聞いてくれ! 」


 騒ぎで、目を覚ましたマリヒューイは、ルイの顔を見ると、手を伸ばし抱ぎついた。

 

 「ーーー知り合い?」

 「はい、兄上です」


 「よかった。これで、私も帰れる。このお兄さんと一緒に帰っても、大丈夫?怖くない?」

 「はい、大好きな兄です」


 「これからは、お兄さんたちと離れない様にしないと、みんなが心配するからね。気をつけてね」


 「はい、色々、ありがとうございました」


 マリヒューイは、お辞儀をして、その一行と去っていったが、態度の悪い一人の青年は、なんと! サルベーセンにお金の入った巾着を投げ与えた。


 前世なら、きっと、大声で、怒り、投げ返すだろうが、一銭も所持していない身には、有難い現金で、乞食でもなんでもいい、お金を貰った事のほうが嬉しかった。


 「おおおぉぉ!! これがこの国のお金なんだ!! ラッキー! きっとあの人達は貴族なんだろうね?」


 ずっと、何時間も黙ったままのリリアールが、話し出した。


 『あなたの攻略対象は、あのルイ王太子だわ、そのお金で、王都に戻りましょう! 』


 サルベーセンは、お金の事で頭がいっぱいで、首を小さく横に振りながら、心の中で、かみ合わないと、いつも通り思っていた。


 「そんな事よりも、このお金・・・・どの位でしょうか?」


 「・・・・ダイヤの指輪が買える位かしら?ーーーー多分、その金貨は、この町では見たことがありません」


 サルベーセンは、いつも、この幽霊、使えないナ~~~!と、思うけど、本当に、お金の価値観が全く伝わらない。でも、お金は手に入った。


 「とにかく、この一番、小さなお金で、買い物をしてみましょう。


 その後、その一番小さなコインは、もっと小さなコインに変化していったが、欲しかった日常生活の物は、すべて手に入って、最後は荷物を運ぶ台車も購入した。それでも、まだ、大きなコインや金貨は、いくつか残っていた。


 「何も売らなくて、買い物ができたなんて・・幸せ過ぎる」


 「どうして、宝石や新しいドレスを購入しなかったの?まったく、呆れるわ! 」


 サルベーセンは、リリアールを見て、


 「リリアール、あなた、もしも、お金がなくて、パンが買えない時に、ケーキを食べればいいとか、言わないよね?」


 「え??お金がないのにケーキは買えないでしょう?」


 「うん、そうよ。ケーキは買えない。だから、食べる物がないのに宝石やドレスは買いないのよ」


 「でも、お金があるでしょう?」


 「・・・・・・」


 「働かない人間のお金は、いつかなくなってしまうのよ。わかる?」


 「でも、サルベーセンは、毎日、働いでいる」


 「ええ、働いているけど、それは生きる為に必要な労働で、私はこのままのんびりあの家で、引きこもって生きて行きたいの、引きこもりがこんなに楽しいなんて思ってもみなかったから・・・」


 「??前のサルベーセンも、毎日、お茶を飲んで読書をして、のんびり暮らしていたわよ」


 「それは、自殺行為に近くて・・・、いつか、時が来て、命が終わるのを待っているのと同じ・・」


 「私はネ! 色々工夫をして、今度こそ、あの家で、年を取るまで暮らすことが目標なの! 」


 「恋もせず?」


 「・・・そう、恋もしないで、結婚も、大体、この国の教育も受けていない人間がどうやって会話するのよ。さっきの人達もお金を投げつける人間なのよ!! 恩を仇で返しやがって!! 大金くれたけど、本当は怒っているんだから・・・」


 「でも、彼らも、お礼をしなかった訳でもないし・・・。貴族は、庶民にお金をあげるモノなのよ・・・」


 「イヤイヤ、かみ合わない・・・」


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