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軟禁生活

第19章

 その後、サルベーセンとケンティは、イレブン・ヴィンの家と同じように勉強をしたり、泳いだりして、時間が経つと、大勢いるメイド達とも仲良くなって、カオ国の歓迎のダンスを習ったり、キターと琵琶が融合したような弦楽器をメイド達に教えてもらったりして、ここの軟禁生活を楽しんでたい。


 それでもリリアールと話す為に、夕方5時には部屋を閉じ、真っ暗な部屋にする。ケンティは、子供で、朝早く起きて、日中もほとんどを泳ぎに練習など体力を使っているので、直ぐに寝ている。


 ある日、ケンティが、イレブン・ヴィン領での面白いサルベーセンの生活を、メイド達に話していると、マリヒューイは、3人のメイドと共にやって来た。


 王宮に入ってからは、一度もマリヒューイとは、会っていなかった。それには、十分な理由があり、マリヒューイは、貴賓客で、サルベーセンと、ケンティは、マリヒューイの使用人の扱いだった。


 婚約者のいる国に女性を同伴して、親しくすることもできる訳がなく、ルイ王太子と4人の従者にも、一度も会った事がなかった。


 「マリヒューイ、こっちらへ、会いたかった。元気でしたか?体調はどう?ここの気候には慣れた?」


 「先生!! 本当に、私に会いたかったですか?」


 「勿論よ。どうしているかのと、いつも思っていました」


 「でも、イカルノさん達の話では、毎日、楽しそうに過ごしていて、今では、カオ国に住みたいと、思っているらしいと聞いています」


 「へへへ、ここは天国のように暖かくて、今更、極寒の自宅に帰るのは、あまりにも辛いと思って・・・。すいません。反省しています・・・」


 空気を読まないケンティが、

 「マリヒューイ、見て! 俺、泳げるようになったんだ。先生が教えてくれた。すごいだろう?マリヒューイには、絶対に無理だ」


 マリヒューイは、大人しい女の子だが、負けず嫌いな一面もあり、学校に馬で通う事になった時に、マリヒューイの方が、受けた一流の教育もあり、馬に乗るのは上手で、ケンティは、負けじと頑張って、最後の頃には、どうにか追いついた。その為に、自負もある。


 「先生、ズルいです。先生たちは、毎日、遊んでいて、わたくしは、王宮の図書館で、一人だけで過ごしていました」


 「そうなの?」

 「そうです。朝から、ずっと、パーティーに参加していると思っていましたか?」


 「最初の3日は、そうでしたが、その後は外交が主流になって、王太子たちは忙しく、だから、先生もいなくて、本当に気分が落ち込んで・・・。グス・・、コレ、王太子からです」


 そう言って、ルイ王太子の手紙を手渡した。


 『  レディ・サルベーセン


   マリヒューイは、寂しくなると、夜、君を訪ねているようだが、

  君の眠りが、とても深く、あの日以来、話す事も出来なく、辛い思いをしている。

    

   ここでの滞在の予定は、思っている以上に、長くなりそうで、

  

   これ以上、マリヒューイに寂しい思いを、させる事は出来ない。


   申し訳ないが、君が起きている日中に、マリヒューイを預ける事にした。


   常識の範囲内で、彼女の為に、授業を頼む。


                                    ルイ  』



 「マリヒューイ、ごめんね。夜中に訪ねてくれたのに、気が付かなくて、夕方から、リリアールと話をして、7時くらいにはぐっすりと眠ってしまって、マリヒューイを忘れていた訳ではないのよ」


 サルベーセンの後ろで、リリアールは、首を振る。


 「知っています。先生のこちらの棟には、成人男性は近づく事も出来ません・・。その点、ケンティは、子供ですから、先生の側にいる事を許されたのでしょう」


 マリヒューイの言葉には、少し、トゲがあって、

 「先生、わたくしも、泳ぎを覚えます。着替えはありますか?」


 「・・・・・・」


 カオ国で、このような広い温泉に入る女性は、本当に少なくて、初日のみすぼらしい手製の水着は許されず、民族衣装のような鮮やかな布で出来ている水着を着て、毎日、泳いでいた。


 すぐに、メイド達は用意をして、マリヒューイは、泳ぎの練習を始めた。


 その間、ケンティは、メイドさん達と、そのババロンと言う楽器を習い、楽しそうに音楽を奏でる。


 「先生! あれは何ですか?」

 

 「あれは、カオ国の楽器です。暇だから、メイドの皆さんに教えてもらっていて、ケンティにも、意外な才能がある事がわかったの。来て、教えてあげる」


 サルベーセンが、そのババロンを引いて、ケンティは、小さな太鼓をリズム感よく叩き、マリヒューイの歓迎の音楽を二人で弾いた。周りのキレイなお姉さんたちも一緒に踊ってくれた。


 「マリヒューイ、ようこそ、私達の教室へ」


 マリヒューイは、機嫌を直し、温泉でパシャパシャ、その後、サルベーセンと一緒に、チョコケーキを作ったりして、昔のようにはしゃいでいた。しかし、睡眠不足だったのか、3時過ぎには、サルベーセンの胸で眠ってしまい。メイド達に連れられて、王宮の深い所に帰って行った。


 しかし、次の日からは、朝、6時にはやって来て、ケンティと一緒に、サルベーセンが起きるのを待っていた。


 「マリヒューイ、なんだか、学校に通っていた時みたいダナ」とケンティが話しかけ。


 「うん、あの頃は、わたくしには、一生のうちで、一番の宝物でした。だから、ここでの毎日も大切にしたい」


 「でもさ、マリヒューイを狙っている人が捕まれば、また、イレブン・ヴィンに来ればいいよ。ここよりは、ずっと、寒くて、温泉も無いけど、お母さんもきっと待っている」


 「ありがとう、ケンティ、でも、わたくしは、負けません。それが、今の楽しみです」


 「ハハハハ・・・、余裕だよ」


 しばらくすると、サルベーセンが、寝ぼけた感じで起きて来た。

 「おはよう」

 「おはようございます」


 マリヒューイは、朝食と昼食は、こちらで食べる事を許されて、夕食だけは、あちらで豪華なディナーを頂いている。


 「今日は、暖かい時間だけ、泳ぎの練習をして、午前中は、生き物について学びましょう」


 「随分前に、メイドさん達に頼んでいた虫が揃ったのよ」


 「虫?虫なら、僕の村にも沢山いるよ」


 「その国や、土地によって、危険な虫や動物は違うの。花や葉っぱにも、もしかしたら毒があるかも知れないでしょう?」


 「生きている間は、マリヒューイだけに、危険がある訳でもないのよ、ケンティの家も崩れて、もしかしたら、ケガをしていたかも、知れなかったでしょう?ここにいる間に、危険な物を沢山覚えて、みんなで自分を守る方法を考えましょう」


メイドさん達は、本当に親切で、自宅にある物や、近くから色々な物を集めてくれて、話も聞かせてくれた。


 「先生、すごく勉強になりました」


 「はい、今日は、大変、一生懸命に勉強したので、これからは、葉っぱで虫を作りましょう」

 

 サルベーセンが南国の丈夫な葉っぱで、バッタのような形を作り、マリヒューイとケンティに渡す。


 そうすると、メイドさん達は、もっと、芸術的な造形を醸しだし、3人はビックリする。


 「おおおおお・・芸術だね。習いたいよね」


 その後、大きな葉っぱでカゴづくりを習ったりして、囚われの身だが、本当に楽しい毎日を過ごしていた。


 サルベーセン達の楽しい生活は、当然だが、逐一、王太子たちに報告され、王太子に報告された 事は、王女側にも報告されていた。


 「サルベーセン嬢は、毎日、楽しそうですね。最近では、メイド達と、小さな植木鉢で、船にあった豆を育てる事を始めたようですよ。彼女の作っている豆料理は、メイド達にも評判が良く。豆がなくなる前に、増やそうとしていると・・・・」


 「あの豆・・、どの国のだ?」


 「ルーニー国です。カオ国とは少し気候が違いますが、どうなる事でしょう?」


 「マリヒューイは、楽しそうか?」


 「はい、彼女と離す事は出来ない程に、懐いていると思われます」


 「今までは、サルベーセン嬢が、ド田舎、一人暮らしだったから、問題はなかったが、常に、人のいる場所で、突然、マリヒューイが、現れたら大騒ぎでは収まらない。どうしたものか・・?」


 「彼女を消しますか?」

                                                                                

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