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サリーサリー王女

第18章

 大勢の使用人と共に、登場してカオ国のサリーサリー王女は、たくさんの花と果物、チョコやドレス、日用品等を持って、サルベーセンの元にやって来た。それなのに、サルベーセンは、既に頭まで、ずぶ濡れで、プールの中央で、仰向けに浮かんでいた。


 「サルベーセン、敵が来ました」と大声で、リリアールが言うので、王女の元まで、大急ぎで泳いで向かい、ケンティが、キルトのコートを持ってくるのを水中で、待っていると、メイドが、ガウンを差し出し、サルベーセンに着せてくれた。


 サルベーセンは、リリアールから教えられた貴族の挨拶を、びしょ濡れのまま行い、王女に、


 「初めまして、サルベーセン・イレブン・ヴィンと申します。王女様にお目にかかれて光栄です。本日、直ぐにお会いできるとは、思って見なかったので、このような恰好で申し訳ございません」


 「構いません。ルイ王太子のお連れになった女性に、ご挨拶する為に来ただけです」


 サルベーセンは、貴族の気品もなく、頭を下げて、心から無礼を詫びる様子だった。


 「プールはどのようでしたか?我が国のお客様の女性がプールに入っているのを、初めてみました」


 その言葉で、益々、小さくなったサルベーセンは、正直に、

 「はい、思っていたよりも熱かったです。まるで・・・、温泉のようだと思いました」


 その言葉に、サリーサリー王女は、サルベーセンに興味を持ち、

 「彼女の支度を手伝いなさい」とメイド達に指示した。


 サルベーセンは、浴室付きのシャワールームに連れて行かれ、いい匂いのシャンプーと石鹸で大急ぎで洗われ、大量の布で拭かれ、着替えさせれ、化粧も施され、10分くらいで、王女の前に座らされた。


 目の前には、今までなかった豪華なテーブルや椅子、大量の食材が並び、飲み物も豊富に選べた。


 「何を召し上がりますか?」

 「では、オレンジジュースと、そちらのフルーツをお願いします」


 美味しいジュースで一息ついて、落ち着いた頃に王女は質問する。

 「どうして、温泉だと思いましたか?」


 「はい、この日差しにしては、水が温かくて、裸足で歩いた石の上も暖かかったので、石の下に温泉が流れているのかと、思いました。実は、私は夏に、、いつも家の近くの泉で、体を洗っていましたので、冷たい水には慣れています。だから、気温と水温の温度差が余りにも違うと感じました」


 「・・・・・・・」


 「ルイ王太子は、あなたがチョコの食べ方を知っていて、この国に役立つから連れて来たと、先程、申していましたが、本当でしょうか?」


 「チョコですか?・・・・・なんで、わたしに・・・。う~~ん、チョコの食べ方ですか?」


 サルベーセンは、板チョコを割って、食べると、やはり苦い。少し考えて、

 「ケンティ、私の鍋とカバンを持って来て! 」と呼んだ。


 ケンティは、遠くから、急いで、鍋とカバンを持って来て、どさくさに紛れて、サルベーセンの側に立っている。


 サルベーセンは、鍋に板チョコを割り、プールに浮かべ、溶かし始めた。チョコが溶けるまで、船で甘く煮た白くて大きな豆を、串に刺し始めた。


 チョコが温泉で、いい具合に溶けて来たので、豆にコーティングして、スイカなどに刺して飾り、周りの女性たちは、サルベーセンの一連の動作に驚き、黙ったまま見守った。


 彼らは、ここまで完成度の高いチョコを作りながら、食べ方を知らないのかしら・・・?と、心の中で思っていたが、命の危険を感じているので、無言を通し、せっせと作業を続けた。


 チョコが固まり始め、サルベーセンが、味見をすると、甘い豆と苦いチョコはいい具合にマッチして、ケンティに手渡して、試食させてみた。


 「先生、これ、初めて食べたけど、美味しいです。甘くて、美味しいです」


 「もしよろしかったら、サリーサリー王女も、皆さんも召し上がって下さい」


 最初に食べたのは、きっと毒見担当の女性だろう。「美味しいです」と王女に報告した。


 サリーサリー王女は、手を伸ばし、一口食べた。

 「・・・ええ、甘くて美味しいです。この豆はどうしたのですか?」


 「船に積んであったものです。沢山、煮たので、勿体ないと思い持って来ました」


 「あなたは、元貴族とお聞きしましたが・・・?」


 「はい、元貴族で、今は・・・、そうですね。マリヒューイの家庭教師でしょうか?だから、王女様と同じテーブルにつけるような身分ではありません。今日の様なご無礼を心よりお詫びいたします」


 リリアールが、「あなた、殺されないように、必死すぎるわ・・・」と呟いた。


 「ここに滞在している間、好きなように使っていいです。チョコの件は、ありがとうございました。チョコには甘味が必要だとわかりました」


 王女が立ち上がると、サルベーセンも急いで立ち上がり、平民のように深くお辞儀をして、お見送りをした。


 メイドは、チョコの刺さったスイカを持ち帰り、サルベーセンは、椅子に倒れ込む。


 「死ぬかと思った~~~~。だって、プールは、好きに使っていいって、最初に言ったよね」


 「あなたが呑気にプールで浮かんでいるのをメイドが報告して、王女はシメシメと思って来たのよ。わからないの、貴族間は、毎日が戦い。田舎ののんびり生活は、捨てなさい」


 「そんな・・、田舎ののんびり生活がしたいです」


 「ケンティ、とにかく食べましょう。明日は、ご飯があるかわかりません」


 ケンティは、初めて見る果物に夢中になっていて、サルベーセンは、すべての果物を丁寧に剥いて、味見をして、ケンティに、食べ方を教えて行った。


 「先生、この大きな物は、どうしますか?」


 「ああ、それ、多分、もうすぐ、物凄い臭いを放つ果物で、美味しいけど、食べる勇気がない。メイドさんに頼んで、片付けて頂きましょう」


 王女の豪華なテーブルの上は、生ごみときれいな花が残り、食べられそうな果物は、すべてチョコでコーティングして、手元に残した。


 「とにかく、疲れたので、寝ましょう」


 ケンティの部屋は、続き間のもう一つの部屋で、大きさは大して変わらなかった。

 「ええ、先生、僕も寝ます。先生に会えて、久しぶりの安心感です。おやすみなさい」


 サルベーセンとケンティは、まだ、4時くらいだったが、たらふく食べて、厳重に鍵をかけ、真っ暗な部屋にして、次の日まで、ぐっすりと眠った。


 「リリアール、実は、本当に体力の限界なの、でも、もしも、刺客がきたら、教えて、きっと起きるから・・・。おやすみなさい」



 次の朝、6時に目が覚め、無意識に、ドアを開け、飲み込まれるように、ブールにダイブして、目覚める。


 「あ~~~、本当にここは、楽園なのかも知れない。起きて、温泉のプールに入って、シャワーで、汗を流し、メイドが運んでくれたフレッシュジュースを飲む。極楽、本当の極楽だ」


 「先生、おはようございます」


 「おはよう。ケンティも入りなさい。泳ぎを教えるから・・・」


 ケンティは、ズボンのまま、飛び込み、思いっきり溺れているが、気持ちがいいのか泣き言は言わない。


 「私につかまって、足をバタバタして、そうそう、人間は、必ず浮くから、大丈夫」


 1時間くらいしたら、流石に疲れて、

 「食事にしましょう」


 二人は身支度をして、食事が運ばれて、ケンティと二人、


 「先生、今日は何をしましょうか?」


 「本でも借りて、この国について勉強しましょうか?幸い、公国は、同一言語で、助かるね」


 「はい、でも、骨格とかは違うのかと思いました。昨日のあの王女様、背がものすごく大きかったです」


 「ああ、それは、私も感じました。他のメイドの方々は、わたくしと同じくらいで、日にも焼けていて、しかし、王女様は、色白で、本当に美しい女性でしたね」


 「ライバル褒めてどうするの?」とリリアールは悪態をついている。


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