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船の中

第16章

 サルベーセンは、ハアハア言いながら、怒りを爆発させたが、既に、船は大海原の上で、朝日も随分と高く上がっていた。


 「グ~~~~! 」とお腹が鳴り、二人は大笑いして、「食事にしよう」と提案して来た。


 二手に分かれた逃走組は、海路線と川路線で、カオ国を目指している様で、サルベーセン達は、危険が多い、海路線で、進んでいた。


 「カオ国までは、どの位かかるのでしょうか?」


 「この船は蒸気船で、大体、7日くらいになるだろう。川組は、直ぐに出発したので、1日位は短縮されているはずだ」


 「へーーー、そうなんだ」とリリアールと顔を見合わせた。


 「食事はどうしますか?」

 「船内には、キッチンがあるし、食料も用意されいる。どうにかなるだろう」


 3人で、キッチンに降りると、確かに、水カメはいっぱいで、ジャガイモなどの保存食は用意されていて、小麦粉やバターなどもある。


 「でも、この船、大きな船で、設備も整っていて、立派だから、大人数用の鍋しかありませんね」


 サルベーセンが、そう話すと、ルイ王太子と、マルセンは、サルベーセンの頭の上を見て。


 「君は、本当に準備はいい。さすがだよ」と、サルベーセンを褒めたたえた。


 サルベーセンは、流石に真っ赤になって、恥ずかしがったが、


 「では、誰が、料理するのですか?」と、意地悪で聞いてみた。


 二人は、「鍋を被っている人! 」と、笑いをこらえて言い放ち、キッチンを出て行った。


 「畜生! おぼえてろ!! いつか、私の凄さをみせてやる」


 リリアールが、

 「その凄さ、わたくしも早く見てみたいわ!」と言った。


 その後、サルベーセンは、プリプリしながら、掃除を始めて、その後、7日間の献立をたてた。


 「海の上では、食料に制限がある。彼らが暇にしているのなら、魚でも釣ってもらわないと、3人では、限界が来る」


  自分の荷物も取り出し、点検すると、急いでいたとは言え、ロクな物が入っていない・・・。


「やっぱり、日本人なんだわ・・、重いのに米を持って来た。・・・後は、いつものクッキーと、蜂蜜、チーズ、着替え、スリッパ・・、脱いで入れたのかしら・・・?」


「お米があるから、リゾットでも作りましょう。この船が、色々な国に行っているのがわかる。トマト缶や、香辛料、干し肉や、見たことがない野菜も転がっている。これだけあれば、7日は、イケそうだ! 」


 お茶の葉と生姜シロップも持って来ていたので、食器をキレイに洗った後、お茶を入れて、ほっと、一息していると、丁度いい具合にマルセンが来て、王太子の分と自分用に2つのお茶と、麦クッキーを持って、立ち去った。


「ーーー絶対に、監視カメラがある。タイミングが良すぎる」


 その後、簡単なトマトリゾットを作って、二人を呼びに行こうとした時に、床に光が放たれ、マリヒューイが、降臨してきた。

 

 「マリヒューイ! 」


 「サルベーセンさん! 」


 二人は、抱き合って泣いた。「心配したよ。良かった。逃げられたんだね。エ~~~ン、本当に良かった。ケガは無い?」


 「大丈夫です」


 また、絶対に、監視カメラがあると思えるような絶妙なタイミングで、王太子とマルセンが来て、「兄上・・、どうしましょう・・・。ケンティが・・」


 「??????」


 「わたくしの代わりに、ケンティが川の船に乗りました」


 「え??」


 「ルイ王太子たちが、オトリで、先に出発した後、ケンティとマルクさんを連れて、青い屋根の村に急ごうとしていたら、追っ手に、追いつかれて、ケンティが、わたくしの上着を取り替えてくれて、川に向かってくれたのです。わたくし達は、後方支援で、ずっとついて行ったのですが、船に乗り込む寸前まで、追い詰められ、ケンティたちの船はそのまま、出航するしかなくなって・・」


 「う~ん、大丈夫だろう。川の船は、途中で食料を購入しながら、カオ国を目指す予定になっている。次の町で、ケンティが、下船しても問題ない」


 「そうか・・、そうですね」


 「わたくしは、ケンティの身代わりで、イカルノさんと村に入り、ジンさん達の部隊が、後始末をしている内に、こちらに向かいました。イカルノさんは、わたくしと王都に向かうと、ジンさん達には、話すようです」


 「うん、そうか、どちらにしても、マリヒューイが、無事で良かったよ」


 「マルクは?」


 「マルクさんは、当分、あの村で、ケンティが帰って来るのを待つようです。あそこなら、ジンさんの部隊も駐留していますし、キルトの服を作って、お金を貯めたいと言っていました」


 「そうか、良かった。これで安心だね。さぁ、食事にしましょう」


 「カオ国についたら、私は、のんびり旅行しながら、自分の家を目指します。ジンさん、私の家の鍵かけてくれたかな・・?」


 マリヒューイ達、3人は、返事もしなくて、暖かいリゾットをひたすら食べていた。


 「所で、この船には、客室がいくつかあって、我々は乗り慣れているので、既に部屋に入ったが、サルベーセン嬢は、客室を使うか?」


 「えーと、・・・・ここでいいです。やる事がいっぱいあるので、こちらにベットと、浴槽を運んでくださいますか?」


 「やはり、風呂に入るのか?」


 「はい、ここは、暖かくて、お湯も沸かせます。実は、シャンプーと石鹸も持参していました」


 「・・・・・・」


 「仕方がない。運ぶことにしよう。しかし、船は揺れる時もある。気をつける様に! 」


 「はい、ありがとうございます」


 船には、マリヒューイの部屋も完備されていて、着替えや小物も置かれていたので、マリヒューイを部屋に送りながら、部屋を見学させてもらった。


 「うっわ~~、豪華だね。本当に王女様の部屋だね。それなのに、田舎の家の部屋は、悲惨で、ごめんね。この美容液、少し分けて欲しい。駄目かな?リリアールが美容に関してはうるさくて・・」

 

 「いいですよ。わたくしは、使いません。お持ち下さい」

 「・・・子供は良いよね。肌が違うもん。それでも、このクリームの山、羨ましいよ」


 3人で、マリヒューイの美肌について話している内に、サルベーセンとマリヒューイは、マリヒューイのホカホカのベットで、眠りについてしまった。


 炭水化物をいっぱい食べて、暖かな日差しが当たり、船はいい具合に揺れていたので、何も考えずに、ぐっすりと、夕方まで、眠りについた。


 夢の中で、王太子は、ドアを開け、ふたりが眠っている姿をみて、フッと、素敵に笑って、ドアを閉めたのを見たような気がするが、気にせずに、マリヒューイを抱いたまま夢の世界にいると、リリアールが、

 

 「サルベーセン、あなたの寝姿、ちっとも美しくない・・、寝ている間も気を抜かないで! 」と話しかけていた。


 「イヤイヤ、それは無理だから・・・」と、思ってガバッと、目が覚める。


 「大変だ! やる事がある」


 サルベーセンは、キッチンに戻ると、サルベーセンの家の配置に近い形で、ベットと浴槽が配置されているのに感謝した。


 「ああ、何とかこの7日間をやり過ごして、自宅に帰ろう。途中で、リリアールの寄りたかった王都にも寄って、観光土産でも持って、自分の領土に帰ろう。エイ、エイ、オー!!・・・掛け声、古いか・・・、まぁ、良いわ。食卓までも配置されているのは、ここで食事を取るのかしら・・?」


 寝ている間に、違う食材も運び込まれ、よく見ると、色々な種類の豆や砂糖、塩もあった。


 「この世界に来て、初めて豆を見た。豆がこんなに・・・、これなら大丈夫そうだ。暇だから、なんでもできる。生きているだけでも感謝して、下働きの生活を始めましょう」


 「ルルルル~~~♪、楽しい~~船の旅~~~!! 」


 王太子と、マルセンは、「彼女のメンタルの強さを見習いたいですね」と話していた。




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