調子に乗って、散財する。
第12章
工事中の家がうるさくて、お互いに気を使うために、外に出て、領土を見回る事をはじめたが、結果は、良かったような・・、悪かったような状況になった。
ここの領土は、教会を中心に繁栄していて、教会の近くの住宅は、それなりの住宅地が整っていた。しかし、どの世界でも存在する、貧困の村がある。
「ここの人たちは、どうして、働きに来ないのかしら?」
「こんにちは、ここでは、何を育てているのですか?」
「私達は、綿花を育てています。昔からの伝統で、綿花を栽培していますが、最近では、交易が盛んになり、私たちの糸や布、綿の値段が下がって、日々の暮らしは厳しいです」
「そうか・・?」
「誰か、働きに出ている人はいますか?」
「ええ、息子は、市場に働きに出ていて、生活は苦しいですが、何とか暮らして行けます」
リリアールは、空の上から、この村の惨状を気にしている。
「この村は、この冬を越せるのかしら?屋根がボロボロで、みんな凍死しそうだよね」
「酷い状況だね。大体、下水の臭いが、この村を包んでいる」
「村の代表はいますか?」
「今は、いません。王都から来た貴族様の家に、働きに行っています」
「へーーー、そうなんだ。わかりました。ありがとうございます」
その後、詳しくその村を調べて、重い足取りで、家に戻る事にした。
「見なければ、気にならないけど、雪が降った後は、寝る前に、必ず、後悔するよね」
「ええ、今年の冬が厳しかったら、あの村は、全滅するのではないでしょうか?」
重い足取りで、家に帰り、外のガーデンテーブルの椅子に座り、村の代表者を探してもらう。
「サルベーセンさん、僕に何か御用でしょうか?」
目の前に立つ若い男は、凛々しいイケメンで、まさしくガテン系の男子だった。
「今日、あなたの村に行ってきました。あなたはあの村の人々は、この冬を越せると考えていますか?」
「・・・難しい問題ですが、今、ここで働いてお給金を頂いているので、どうにかします」
「あの村には、あなたのような若者はいますか?その・・・体力がありそうな・・?」
「はい、10人程、みんな、市場やここで働いていますが・・・、何か不都合でも・・・」
「私は、最近、色々な村を訪ね歩いている事は、知っていますか?」
「いいえ、」
「村を歩いて、ランキングをつけています。あなたの村は最下位でした。酷すぎます。あれでは、雪が降り始めたら、心配で眠れません。すぐに村の人たちと村に戻って、整備を始めて下さい」
「賃金は、今まで通りで、材料費は、支給します。とりあえず、材料が揃うまでは、下水の整備を始めましょう。村のみんなで、村の中心の井戸から、川まで下水を流す溝を掘り始めて下さい」
「わかりますか?人間は、衛生が、何よりも大切です! 」
そのジンと言うガタイのいい男性は、膝を折り、サルベーセンに、感謝した。
「サルベーセンさん、ありがとうございます。村を代表して、感謝します」
「では、明日から、初めて下さい。私はこれから少し考えます」
ジンが膝を折って、サルベーセンに謝っている姿が、印象的だったのか、サルベーセンが、家に入った瞬間、みんながジンに駆け寄り、話を聞いて、歓声をあげた。
マルクが、サルベーセンにお茶を入れながら
「外はどうしたのでしょうか?騒がしいですね」
「本当にどうしたのでしょう・・私は、又、個人資産を減らしてしまった」
「??????」
「マルクさん、山から取って来た柿を焼いてくれる?暖かい物に癒されたい・・トホホ・・」
サルベーセンが、ジンの村を支援する話は、一斉に広まり、牧師さんからも感謝を手紙を頂いた。
2階のリノベーションが終わった頃に、ジンは、馬車を借りて、サルベーセンを迎えに来た。
その村に到着すると、臭いは消えていて、溝が整備され、道には石やレンガが敷き詰められ、子供たちも安全に走り回っていた。
サルベーセンは、到着すると、すべての村人に歓迎され、感謝された。
「随分と頑張りましたね。工事が早くて驚きました」
「はい、村中の人間が手伝ってくれました。あっ! でも、賃金は10人分で結構です。それでも僕たちには有難い臨時の収入です」
「そう、では、次は、屋根と外壁の工事に取り掛かって下さい」
「??????」
「市場で、この村の為に材料を購入してあります。一番安い売れない物を一括購入して、さらに単価を下げさせました。だから、この村すべての家は、同じ屋根と同じ外壁になります。よろしいでしょうか?」
村人たちは、涙を流しながら、サルベーセンに感謝した。
「サルベーセンさん、全部の家となると、僕たちだけでは・・・・」
「ええ、仕事が無くなった人達にも声をかけたあげて下さい。後、井戸の上に東屋を建てて、コミュニティーの場所もつくりましょう。大体、このような感じでお願いします」とイメージ図を渡した。
サルベーセンの提案に、村人は一斉に喜び、希望を見たようにサルベーセンの元へ駆け寄ってきた。
そして、帰る時には、馬車いっぱいに綿をもらって、暖かい布団を作るように勧められた。
馬車いっぱいの綿に押しつぶされそうになりながら、リリアールに聞く。
「あの村の人達・・・私がお裁縫が出来ると思っているのかしら?家で着ている上下のスエットも、いつの間にか、マルクによって手直しされていて、ほころびとか無くなっている状況なのに・・」
「寒い冬が近づくから、綿は必要だと考えたのか、お礼の品は、売れ残りの綿しかないのかもね」
「ーーーリリアール、あなたが良い人に見えた」
家に到着して、ジンは、大量の綿をサロンに運び入れてくれた。
「ありがとう。気をつけて帰ってね」
その後、サルベーセンは、綿って、場所を取るな~~などと考えていると、マリヒューイがやって来た。マリヒューイのレースで出来ているドレスは、町で購入した一流品で、欲しい物は、マルクが購入して来てくれる。
それでも、手に入らなくて、足りない物は、すべてマルクが作ってくれていた。
「マリヒューイ、そのようなドレスで、寒くないの?」
「女性は、寒さを我慢するものですよ。サルベーセンさん、でも、馬に乗る為にズボンを穿くと、男性の暖かさを実感します」
「うん、そうだね。ーーーそうだ! キルトにしよう! マリヒューイ!こ の前、町で、大量に布を購入して来たよね」
「はい、あります」
「それ! 少し分けてくれる?」
「はい、持って来ます」
布が到着すると、布と布の間に綿を挟んで、チクチク縫い始めた。
「この綿があれば、きっと、暖かいわ~~~」
サルベーセンが、針を持って、チクチク縫い始めたのを見て、マリヒューイは、急いで、マルクを呼びに行った。
急いで駆け付けたマルクに、サルベーセンが、説明すると、マルクは、
「サルベーセンさん、この仕事・・・、私に頂けませんでしょうか?今はまだ、貴族の方々も到着していませんので、比較的、時間があります。先生方のご要望がございましたら、きっと、応えられると思います」
不思議な事で、マルクは、どうしてもその布を放さない。
「ええ、良いけど、布と布の間に綿を挟んで、ドレスやズボンを作りたいの?わかる?マリヒューイの普段着や私の作業着、マルクのスカートとか、ケンティのベストとか・・きっと、暖かいと思って・・。出来る?」
「出来ます。必ず、出来ますから、わたくしにその仕事を下さい」
マルクの非常に固い決意が伝わり、仕方がなくサルベーセンは、布と綿を手渡した。
その後、トボトボと、厨房部屋に戻ると、リリアアールが、
「マルク、どうしてもあの布を、ゴミにしたくなかったようね」
「そうなの?」
「そうよ。アレ、シルクで、最高級にいい布なのよ。マリヒューイが王太子の為に、特別に王都から取り寄せた布で、男性用にも使用できる優れものなのよ。それは、焦るよね」
「・・、もしかして、みんな、私の不器用を知っているのかしら・・・?」
「・・・・・・」