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マリヒューイ登場

第10章

 「マリヒューイ、あな、あな、あなた・・・どういう事?どうして・・・、まさか、魔法?」


 にっこり笑って、可憐にスカートを広げ挨拶するマリヒューイは、たった1年未満で、物凄く成長したように見え、静かに話し始めた。


 「危険が訪れると、なぜか・・、サルベーセンさん、あなたに引き寄せられる。広場でもそうでした」


 「・・・・・?」


 「それは、あなたなのか?彼女なのかはわかりませんが、この移動魔法は、あなた達の元に戻る事しか選択はないようです」


 「どういう事?」


 「そちらのドレスの女性は、いつも、気品に溢れていて、あなたの近くに存在していて、私が眠ると、サルベーセンさんは、彼女と会話を始めます。当然、兄上の身分も、お二人は、ご存じだと知っています」


 「最初に、出会った時に、イカルノが兄上に、あなたの事を報告しているのを聞いていました。あなたは、大人しい性格で、王都で暮らしていても、貴族学校にも通っていなくて、その存在を知っている人間は、限られている。と、だから、わたくしはあなた方に惹かれたのかも知れません」


 「私自身もそうでした。母は、ご自分の国の王室に、わたくしの事を預けたまま、会いに来ることもなく、亡くなってしまいました」


 「でも、サルベーセン様は、ご自分のお母様に感謝する事を探して立ち直りました。その理由は、ご自分を連れて行かなかった事だった。と、話された時に、私も母の愛が感じられました」


 「サルベーセンさん、兄上たちが、きっと又、迎えに来るまで、どうかここに置いて下さい」


 「ごめん、一度、整理させてくれる?もしかして、あなた、彼女の姿、・・・・リリアールが見えているの?」


 「はい、初めて会った時から、ずっと、見えていました」


 「だから、サルベーセンさんも、私の様に、不思議な力が使えると思い、あの時、あなたと寄り添って数時間すごしましたが、あなたkら魔力は感じられず、ただの優しいお方だったのです」


 「マリヒューイ、あなたに危険が迫ってここに来たと言っていたけど、王太子たちは、無事なの?」


 「はい、私たちは、あれから、ケンティの話を検証する旅に出て、一番、怪しかったサーシャ国を目指しました。調べると色々な事がわかり、財政難を装い、関税の引き下げを公国に要求しながら、他国からの支援を現金に換えていたことがわかり、当分の間は、我が国での活動は禁止にされ、他国も、それに従うでしょう。転売したサーシャ国は、しばらくは、酷い状況に陥る事になるでしょう」


 「困っているだろうからと、支援してもらった商品を、売っていたって事?ケンティの目は、正しかったの?」


 「はい、その通りです。兄上が暴露して、その騒動に巻き込まれ、王太子一行は、狙われて、私がご一緒では、足手まといになると思い、サルベーセンさんの所に、戻る事にしました」


 「その事・・・、王太子たちには、伝えて来たの?」


 「はい、わたくしの事は、あの5人は、知っています」


 「ねぇ、その他には、どんな能力があるの?」とリリアールが初めて尋ねる。


 「今は、まだ言えませんが、わたくしは、リリアールさんの意見に賛成していますし、応援もします」


 「???どういう事?」


 リリアールは、「ルイ王太子との仲を取り持つと、言っているのでしょう」


 「でも、私は、そのような大それた事を、望んでいません。本当です。大体、彼には婚約者が存在していて、その時点で、私は興味がありません」


 「しかし、兄上の婚約者は・・」


 「えーーと、今は、話せませんが、兄上もサルベーセンさんも、互いに好きになって下さる事を、祈っています」


 「はい、はい、とにかく寝ましょう。明日からは、大きな仕事がまっているの、大工さんも来るから、私の部屋を、マリヒューイの部屋に改造してもらいましょう」


 「それでは、ケンティとマルクさんのお部屋が・・・、それに、兄たちは、きっとまた、長期滞在すると思います。すいません」


 「・・・・・・」


 「実は、ケンティの家は、本当に、雨に弱くて、雨季には戻って来たの。仕方がないから、今度は、ここの敷地内に、新しい家を建設した。だから、二人は、ここに住んでいるのよ。ケンティは、馬に乗れるように練習して、馬で学校や市場に通っていて、マルクさんは、今も、私の使用人として、働いてもらっています」


 「明日の朝になれば、色々な変化に驚くわよ。私自身が、ここに、いたいの、曲りなりにも領主だから・・」



 次の朝、大勢の人が、サルベーセンの家の周りに集まった。その人達は、村の人々で、サルベーセンに感謝している人が多い。


 冬に市場が閉鎖された事は、村の人々にも影を落とし、収入が減って、生活困窮者が増えたのだ。


 ある日、サルベーセンは、教会に出向き、教室の授業を受ける前に、牧師さんに麦のクッキーを渡した。当然の事ながら、クッキーは教室の子供たちに配られ、「美味しい、美味しい、もっと食べたい」と言う声に嬉しくなって、クッキーの原料を牧師さんい教えた。


 最初は、誰もが驚いたが、ケンティが、毎日、食べて、お母さんも健康になったと説明すると、興味を持ち始める人が増えていった。


 それから、村の人たちが収穫を手伝ってくれて、そのままでも良かったのですが、粉にする作業もしてくれるようになり、作業場も増設して、穀物倉庫も建設した。


 山から取れるぶどうや柿、野イチゴや柑橘系のオレンジ等も、山に入って採って来てくれる人も現れ、その後は、洗って、干して、加工して貯蔵庫に入れる。


 炭や薪も貯蔵できる倉庫も建設して、子供達が遊ぶ広場もついでに作った。だから、毎日のように、大工さんはやって来て、何かしら作業をしている。


 朝、6時、外から、「おはようございます」と声がかかり、厨房部屋のドアが開き、マルクが入って来た。


 「マルクさん、おはようございます」とマリヒューイが、話しかける。


 「まぁ、マリヒューイさん、いつ、いらしたのですか?」


 「昨日の夜、遅くです。だから・・、」と、グッスリ眠るサルベーセンの方を見る。


 「大丈夫ですよ。サルベーセンさんは、朝ご飯が、出来上がった頃には起きます」


 サルベーセンが、起きる頃には、労働者がやって来て、仕事を始める。指定の出勤簿に指名を記入して、サルベーセンから労働者チケットを受け取る。


 その日にちが記入されたチケットを、役所に持って行くと、役所で賃金を受け取れる。賃金は、同一賃金で、誰もが同じお給金になっていた。


 「マルクさん、ケンティは、今日は学校かしら?」

 「はい、もうすでに出かけました」


 「そっか、では、私も外に出ます。マリヒューイも一緒にどう?」

 「行きたいです」


 サルベーセンはマリヒューイ連れて、みんなに紹介した。


 「王都から遊びに来ている従妹です。皆さん、よろしくお願いします」


 「それから、彼女の部屋をリフォームしたいので、大工の人は、後で、私の所に来てください」


 サルベーセンは、マリヒューイを連れて、敷地内を案内して、クッキーの山を見つけ、指をさす。


 「あ、あれ?ここでクッキーを大量に作って、町の市場で売っているのよ。その売り上げは、役所に収められて、販売員の人は、みんなと同じ賃金を受け取れるの」


 「お菓子工場のような物よ」

 「??????」


 「マリヒューイも、ケンティと一緒に学校に通ってくれる?ケンティに馬に乗せてもらって、平民の学校を体験して欲しい。この前は、王太子たちがいて、窮屈な毎日だったけど、今は、彼らもいない。いいチャンスだと思うけど・・?どう?」


 「行ってみたいです。でも、私も馬に乗りたいです。ケンティが乗れるのなら、私にも乗れます」


 「え?大丈夫?」

 「大丈夫です。乗馬は習った事があります」


 その後、2階の全面改装が始まり、ケンティは、バカにしながらマリヒューイに、乗馬を教えて、二人は、毎日、村の学校へ登校して行った。


 「あなた、一人の時間が欲しくて、マリヒューイを学校に行かせたのでしょう?」


 「当然です。あの冬から、静かな日常を取り戻す事だけを、生きがいにしてきたのに、また、人が増え、冬には、あいつらが、マリヒューイを迎えにくる。トホホホ・・・。静かに暮らしたいのに、何やっているのでしょう・・・」


 そんなサルベーセンを、嬉しそうに天井から見ているリリアールがいた。


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