第一章 2「ゾンビの足跡と別のゾンビ」
松明の光にあてられてエメラルドブルーの光が壁から奥の方へ続いている
光をよく見るとそこには何かの鉱石のようなものがはめられていた。
この鉱石が光を反射して美しい絶景を生み出していたのである。それを目にしたトシヤは思わず声をもらしていた。
美しいエメラルドブルーの光の道のおもむく方へ足を運ぶと、そこには大きな地図のような絵に足跡のように光の道が走っていた。
「これは何だろう。何かの地図みたいだけど。あっ!!」
トシヤこの絵について考えながらある事に気づいた。
光の終着点が大きな地図の右上にかかれた島のような場所に続いていた事だった。
「あそこに何かあるのかな?この地図について何か分かればいいんだけど、、、あ、そうだ!!」
なにか閃いたトシヤは壁の地図のような絵を見ながら考えた。
『この絵食べれるかな?』
ーーーブォーン
すると、あの音とともにこの絵の上に説明が出てきた。
ーーー名称 ゾンビの足跡
分類。 古代遺跡
この地図はある島からゾンビを世界中に送り出すために描かれたゾンビの歩くルートを記したもの。
(可食不可)
「やっぱり食べれるか考える事が発動条件なんだ!」
そう確信すると、書かれた説明を読みながらある事を気づいた。
「ゾンビが送られてきてるのか。つまりこの島に行けばゾンビ食べ放題ってこと!?」
やはりトシヤは的外れである。しかし、この島に行けば世界を危機に追いやっているゾンビの謎がわかるかもしれないのである。
「あれ、この石。」
そういうと、光の終着点にハマった鉱石が他の鉱石より大きい事に気づいた。
他の鉱石は割られたままの姿だったが、この鉱石は綺麗な球体に整えられて一際美しい光を放っていた。
トシヤは美しさのあまり、その石に触れた。
「あっ!!!!」
声を上げた瞬間。壁にはまったその鉱石が外れて床に落ちそうになったのである。
「おっと、おっと、おっと!!やっ!!、ふぅ〜」
慌てて掬い上げ、掬い上げ、何とか空中でキャッチする事ができた。
「あっぶな〜い。まさか落っこちるなんて。でもこれなんか綺麗だから持っていこ〜」
そういうとマントのポケットに忍ばせた。
「でもこの地図覚えられないな。どうしよう。」
壁の地図を見ながら考えるトシヤ。
「・・・・・うん。先へ進もう。」
何も思いつかなかったのである。
光の道は地図までしか続いていなかった。
そこからは代わり映えのしない石のタイルと散らばった砂の道を進んで出口を目指した。
「ここって一体何の建物なんだろう。」
トシヤは自分が蘇った場所が何なのか考えながら進んだ。
「天井の絵もそうだし、さっきの地図もそうだけど、何かゾンビに関わる建物なのかな〜」
う〜んと頭を悩ませていたが、答えは出なかった。
しかし、分かった事が一つある。この建物は思った以上に大きかったのだ。
かなり進んだが、まだ出口が見つかる気配はない。しかし、そんな中、上に続く階段を見つけた。トシヤは迷わず駆け上がった。
上の階に近づくにつれ、つい数時間前にも聞いたあのうめき声が聞こえてきた。
トシヤは高鳴る鼓動と溢れるヨダレを抑えてそいつらと対面した。
「さぁ!!かかってこーい!!」
対面するやいなや、わざとお引き寄せるように高らかに声を上げた。
迫り来るゾンビの大群を前にトシヤはワクワクしていた。
「こいつら焼いたらどんな味するんだろ〜!!絶対美味しいよね!!うん美味しいはず!!」
自問自答をしながら迫り来るゾンビを松明で吹き飛ばした。
ーーーバゴーン!!!!
一振りで10体程のゾンビを倒していた。
トシヤは自分が強くなった事に気づいた。
明らかに前より力もスピードも強く速くなっていたのだ。
トシヤはこの感覚を確かめるために、そっと松明を部屋の隅にたてかけた。
「いっくぞーーー!!」
そういうと、ぴょんぴょんと何度か飛び跳ねた後、向かってくるゾンビの大群に突進した。
ーーーズドーーン
何か大きな岩でも落ちて来たような音が部屋中をこだました。
その一撃で正面にいたゾンビ約50体を吹き飛ばしていた。
残りのゾンビは40体程だろうか。
トシヤは力を試すように一体一体を殴ったり、蹴ったり、踏んでみたり色々試していた。
そうやって色々試している内にその階のゾンビは全滅していた。
「すげーーー!!なんか僕強くなってる。いっぱいゾンビ倒したからかな??何でだろ⁇わかんないや」
考えることが得意ではないトシヤは立てかけた松明を持ってきてゾンビを焼き始めた。
「生でもあんなに美味しかったから焼いたらどんな味になるのかな〜楽しみだな〜」
そうして、程なくしてこんがりと焼き色のついたゾンビにかじりついた。
「んんん〜〜うまぁぁあああ〜い!!このお肉の甘味が口の中にじゅわぁあ〜ってとろけだしてくる。」
生でもとてつもなく美味しかったゾンビは焼いたら更に美味しくなったのである。
よ〜しと弾みをつけて、トシヤは残りのゾンビを食べ尽くした。
食べながらやはり謎の光に体が包まれていた。
「この光なんなんだろ⁇んー、ゾンビをいっぱい食べると光るみたいだけど…」
ゾンビを食べると謎の光に包まれると分かったが、そこまでだった。
トシヤはある事に気づいた。
「あれ⁇下の階にもゾンビいたよね⁇って事は上の階にもまだまだいるんじゃない!?」
そう考えると、今食べたばかりなのに上の階へ続く階段を探し始めた。
身体能力が超人的に飛躍しているトシヤは驚きの速さで階段を探し当てた。
そして、階段を駆け上がり予感は的中していた。
そこには下の階より更に多くのゾンビがいたのである。
「やったぁぁあ!!こんなに沢山!!いただきまーす!!」
トシヤは倒す前から食べることばかり考えていた。
ばったばったと、ゾンビを倒していく中で、1匹だけ少し大きくて色が薄いゾンビがいる事に気づいた。
「なんだあのゾンビ?他のと違うみたいだけど、
食べれるのかな」
ーーーブォーン
そういうとそのゾンビに説明書きが出てきた。
ーーー名称グッドゾンビ 個体名なし。Lv5
分類。 ゾンビ目ゾンビ科
ゾンビの中で稀に出現するユニーク個体。
数百体のゾンビの中で1匹出るか出ないかのレアゾンビ。
他のゾンビより力が少し強い。
(可食可能とてもとても美味)
「グッドゾンビ!?他のやつより美味しいの!?」
そういうと、グッドゾンビの元に飛び込んだ。
他のゾンビより少し強いはずだったが、今のトシヤには関係のない話だった。
あっという間に全て片付けてグッドゾンビを焼き出した。
「まだかなぁ。もうちょっとかな。」
焼き目を確認しながらウズウズと体を揺らしながらその時を待っていた。この待ち時間が美味しさを倍増させる事をトシヤは感じていた。
「いい感じだね。それじゃあイッタダッキマーース!!んんんん〜うまぁぁぁあぁーい!!」
これまでで1番の声を上げていた。
「他のゾンビとは比べ物にならない程、旨味が凝縮されている気がする。噛めばホロホロとほどける肉がたまんなぁーい!!」
1人でテンションが上がりまくるトシヤはその後、難なく完食して次のフロアに向かった。
その道中、グッドゾンビや他のゾンビに想いを馳せていた。
「グッドゾンビ美味しかったなぁ〜、数百体に一体しかいないのか〜。
でも、もしかしたら他の種類のゾンビも居るかもしれないよね。一体どんな味がするんだろうなぁ〜」
そんな事を考えながらあっという間に次のフロアに着いたが、そこにもやはり大量のゾンビがいた。
「よーし。ここも食べるぞ〜」
そう言いながら楽しそうに腕をブンブン振り回していた。
あっという間に完食して、同じ要領で次のフロアもその次のフロアもどんどん進んでいった。
20階ほど駆け上がったぐらいだろうか、ようやく外の光が入り込んできたのである。
「やった!出口だ!!!これでやっと外に出られる!!!」
そう喜んだ瞬間、ずっと遠くからおよそ常人には聞き取れない囁くような声がトシヤには聞こえてきた。
「ッ!!!誰か、誰か助けて…」
その声を聞いた瞬間、出口を向いていた足を急転回かせて地面を思い切り踏み込んで天井にむかって突っ込んだ。