幼馴染を連れ戻しに懐かしの異世界までやってきました
「リョウちゃん、なんで、ここに?」
煌びやかな部屋には、異国の雰囲気が漂う金髪、銀髪、茶髪の人が並んでいる。そして、玉座には愚王の風格がある人物が座っている。その愚王の前に、艶めく長い黒髪に見覚えのあるセーラー服の幼馴染のあいつが立ち尽くしていた。だが。俺に気付くと大きな瞳がさらに大きく見開き、そしてダイヤのような雫で涙を流す。
「そりゃ、お前を連れ戻しに来たに決まってる」
「でも、だってここは…異世界って」
「あぁ、そうだ異世界だ。だが、この異世界は俺を攫った異世界でもある。だから着地点が分かったから、ここまで迎えに来れた」
これだったら、俺が拐われた一年も無駄じゃなかったと思える。すぐに帰れれば時間軸もそこまで変動しない。
俺がユイと話しをしている間、目の前で王と俺をここまで連れてきてくれ騎士が何やら話している。
「おい、さっきっからこいつはなんだ!」
「誰も召喚の儀式をしていないにも関わらず、召喚の間から現れたんです」
「王様、これは召喚の言い伝えの…」
異世界から1人の少女を聖女として祭り上げる時、世界には安息が訪れるだろう。
だが、もしも異世界の少女を護る者が同時またはのちに現れた時、其の者に抗ってはいけない。召喚の儀式は失われ、その国は×××××××だろう
「伝説の勇者であるか…」
「はっ、そのようかと思われます」
「逆に良かろう。一緒に旅に出て貰えば」
そうすれば一石二鳥だ。王は一瞬、顔をニヤつかせるとそれでもまだ食い下がらない騎士に対して少しイラつく。
「しかし、言い伝えではこの者の願いを聞き入れなければ…」
「言うだけ言えばいい、どうせ私が話すのだから」
王は、ごほんと咳ばらいをする。
「そちらにお見受けするのは伝説の勇者の方かと思われる。どうか聖女と一緒に浄化の旅に出ていただけないだろうか」
王のニヤついた顔と、その頼りきった思考に思わず顔を顰める。
「浄化の旅なんかに行ったら時間かかるだろうが。大体、いつも困ったら召喚すればいいやで来てるから、この国は…」
「貴様、王に向かってその様な口を!」
騎士の言葉に思わずイラっと舌打ちをする。
「大体、浄化の旅に必要のは神への祈り。信仰心が足りないんじゃないか?なんなら、分かりやすいように信仰心が分かるメーターでも作ってやろうか?そしたら本気で信仰するやつも増えるだろうし。」
「信仰心⁉︎そんなもので、補えると言うのか」
「そんな考えだから、世の断りのバランスが崩れるんだ」
俺は目を瞑り、祈りのポーズをする
「ミスティリア様どうか、リョウの名の下に慈悲をお与えください。あなた様の信仰を深めるために、私に力を」
そうすると、エメラルドの瞳を持つ銀髪幼女が現れた。彼女はミスティリア。この世界の神、世界の調節者。
「すまない、リョウのエネルギーを感知して、もしやと思ったら。また助けに」
ミスティリアは申し訳なさそうな顔をする。
「あんたは、どうにも止められないのは知っているが、召喚の魔法を存在させたのは間違えだったな。あれは、俺が燃やす。いいか?」
「あぁ、もちろん」
「その代わり、この世界はミスティリアの信仰心が力に変わってこの世界の秩序が保たれる。だから、分かりやすいようにパラメーターを作ればいいんじゃないかと思って。ミスティリア様特製の信仰心数値表。そしたら、この世界は大丈夫じゃないか?」
「そうだな、そしたら異世界の者を連れてきてまでと言うことにはならない。それにこのレベルなら信仰心でどうにかなる。以前、リョウが来た時はこの世界の破滅する寸前だったからな」
ミスティリアとリョウは苦笑いをし、あの頃を思い出す。
「あぁお願いする。この前、来たときはよっぽどひどかった。まだ歪みもないし、平和に暮らせている。ということで、おれは大事な幼馴染と一緒に帰るからな。この世界に来たおかげで、魔力はたんまりあるから、帰れるしな。座標は大丈夫か?」
「もちろん、じゃなミスティリア。頑張れ。そして、お前ら。とりあえずミスティリアは神だ。崇めろ。そして、そのチャラい金髪王子。こいつは俺のだ。気安く触るな、惚れるな、クソが」
「世界を越えるため、いつもは描かない魔法陣も空中に書く。空中に文字を書くように指を動かすと、そこから虹色の光の文字が描かれる。虹色…!これは全属性の証の色」
「あ、ユイ。勝手なことしちまったけど、この世界で観光してから帰りたかったか?」
「いや、別に…。それよりも、早く帰ってリョウちゃんにはキッチリと説明してもらわないと!」
「あぁ、ソウデスヨネー。とりあえず、日本に戻るよ」
そして戻って来たのはリョウの部屋。
「リョウちゃんの部屋入ったの久しぶり。で、それであの世界との涼ちゃんの関係は?それとミスティリアっていう幼女っぽいけどあの美幼女との関係!んで、あとは…涼ちゃんは……いや、あの。それよりも私を連れ戻しに来てくれてありがと」
幼馴染を救うためなら、異世界にも行ってやる。ユイを連れ戻すためなら、俺はなんだってするよ。だから………
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こうして、リョウとユイはめでたく日本に戻れましたとさ。え、あの異世界?それは、この私、ミスティリア様がリョウに言われた通り信仰心数値表を作ったのよ!作ったけど王の間にいた人の数値が酷すぎて、思わずイタズラしちゃった!えへ、大丈夫だよ、た、多分!