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不幸だった少年の見る夢

カイル君の性格が明るいのでそこまで暗くはないですが、キツめの内容です。飛ばしても大丈夫です。




 俺は昔から夢見が良くなかった。

 嫌な、悪い夢をよく見るんだ。







 おとなしくしているべきだったんだ。

 おれはよわいから。

 おとなしく████にまもられていれば────



 身に覚えのない後悔。

 身に覚えのない懺悔。

 身に覚えのない約束。



 おれは、やくそくをまもれなかった。どんななのかはわからない。



 暗転して、突き刺されて、何かが入り込む。



 いやだ! いたい! いたい!! いたいぃ!!!

 こわい! あつい! あつい!! あついぃ!!!

 やめて! たすけて!!! ごめんなさい!!!



 だけどからだはうごかないし、こえもでない。



 体が、心が、変形して歪んで膨らんで大きくなって大きくなっておおきくなってあやふやになって。

 あばれて、はきだして、こわして、はじけて。



 真っ白になって、真っ黒になった。







 嫌な夢の種類が増えた。


 あぁ、でもこれは分かりやすいんだ。単純に、嫌なお客さんのことを思い出してるだけ。


 終わった後、朝の手前辺りで寝るんだけどすぐに目が覚めて、口から大して中身のない液体を吐き出す。


「はぁ、はぁっ、ぅえッ……」


 無理矢理入れられて、出されて、生臭くて、気持ち悪い。



 汚い、汚い、汚い、汚い。



 同じものが自分からも出てくるようになったのは、そのせいなんだとすら思った。きっとあふれてしまったんだ。

 だから上手くやって、中には出されないように、飲み込まないようにしたのに。なのに勝手に熱くなって、固くなって、関係なしに俺からもそれは吐き出され続けた。



 あぁ、もう、俺、だめなんだ。


 もう、この汚れは落ちないんだ。







 俺の口には、何かが染みこませられた布が押し込まれている。嗅いだことのない匂いがする。

 身体に力が入らない。指と頭がちょっと動くだけ。


 俺を買い取った怖い男に連れられたその洞窟は、魔法の光で暗くはなかった。

 ……どうして魔法だって思ったんだろう。俺、そんなの見たことないのに。




 痛い、痛い、あの夢のようだ。洞窟だから地面は硬かったけど、力が入らないおかげで爪が剥がれたりはしなかった。

 指がぴくりと曲がって少し震えるだけだ。


 お腹がめくられてる。あぁ、俺の中が、見える。あれの色じゃない。てっきり俺の中はあれでいっぱいかと思ってたけど、全然違う変な色だ。でも気持ち悪い。


 熱い、寒い、痺れる。


 俺の中から、色んな物が取り出されていく。細長いのを巻き取ったり、大きめの塊を慎重に切り出したり。どんどん素早く手際良く抜き取っていく。


 寒い……


 あれ、なんなんだろう。ぶよぶよしてるけど。もしかしたらあのなかにつまってるのかも……俺のなか、きたないのに。いいのかな。


 おれの、きたないのをだすとこも、だいじそうに、きれいにきりとって、もっていく。


 きたないのに。へんなの。



 てがちかづく。




 あ。




 めがあつい。


 みえない。あついのに、すーすーする。




 からだがゆれる。めくってる……?



 さむい。



 まだなにか、とってる。おれのまんなかから、なにか。


 からだがかるい。




 もしかして、おれ、もう、きたなくないかな?





 そうだと、いいなあ。




 それなら、もう、よる、こわくないや。






 あ、しずかになった









(恥ずか死ぬ……いや、俺もう死んでるんだけど……)


 現世の俺(マール)と違って、前世の俺(カイル)はちゃんと色々教育を受けている。性教育だってそうだ。ちゃんと思い出したよ。勉強してたもん俺偉い。精通は……どうだったっけ……とにかく、汚い汚いって馬鹿みたいに言ってたけど、男なら普通に出るようになるんだよ。



 ……ああああ! でも気持ち悪い……………!!



 やだやだやだ! こんな感触忘れたいのに!! 尻も胸も、どこもかしこも、ずっとずっと舐められてつままれて、ひねられてしごかれて入れてきて広げてきて出してきて!! なんでだよ!??


 なんかうっかり父さんの……舐めそうになったし!! うわぁぁあああ!! 俺、マールの言う通り身体が汚れちゃってるよぉぉお!!




 父さんの指が、あの指みたいに俺の全身をゆっくりと撫でる。傷が大丈夫か確かめてるだけだって分かってるのに、変な気分になって、父さんの前なのに……固くなっていって……


「カイルは……もう精通しているのか?」


 ははは、してるよ父さん。この身体はしてるんだ。うん。毎日毎日……言いたく、ない……なあ。


 俺は黙って頷くしかなかった。


「俺はこの後この小屋の外で少し作業するから、その間に……確かめてくれるか……?」


 あ、ああ。か、顔に、出さないようにしなきゃ……でも、ひとりじゃ、俺、無理かも……でも父さんにそんなの、知られたく……は……



「……あの男に、何かされていたのか……?」



 うあ、だめだ、父さんの、顔、わかっててきいてる……



 結局全部話して父さんに泣きついたら、なんかすごいキスされたし、すごい……気持ちよかったし……全然嫌じゃなかったし…………優しいのに激しいって……か、母さんはこんなのを何度も……

 うぅ、な、なんとか、一人でできるようにならないと……こんなの、俺だめになるよ……







 拝啓、お母様。お元気ですか。

 カイルです。



 実は謝りたいことがあります。

 あ、殺されちゃったことじゃないです。でもそれもごめんなさい。父さんは悪くないから、どうか怒らないであげてください。


 謝りたいことっていうのは、えーと、悪夢の種類が変わりました。それは、その……実は俺、夢の中で……



 父さんと……セッ……と、父さんを責めないで、俺が、悪いんだ。



 すごく、気持ちいい夢で、なのに胸が苦しくて。



 それで、起きると枕と股間がびちゃびちゃでしかもまだ固いんです。すごく死にたくなります。もう死んでるんですけどね、えへへ。



 こんな不甲斐ない息子でごめんなさい……あ、母さん以外の女の人はいなさそうでした。変な女が寄ってこないよう見張りがんばります。




 お、俺と父さんのは、浮気とかじゃ、ないよ……ね?




「ああああッ!!! こんなの母さんに会ったとき渡したら、俺が殺されるよぉぉぉおおおお!!!!」


 もう死んでるけどッッ!!


 俺は手紙というか勉強用に父さんから貰った紙束の一枚をビリビリに破いて、小さな火球出す。短剣の効果でその紙片だけに的確に当たり、灰すら残さない。


「はぁぁー……」


 でも分かってきたんだ。寝る前に出しておけば、びっちょびちょになりにくくなるって。




 このあと、空腹との関係性に気付いて父さんと喧嘩した。いや、でも父さんのあの反応絶対最初から気付いてたよ! 言ってくれれば……どうしようもない気がするけど……


 そして俺は何を思ったのか、


「俺だけ恥ずかしいの……ずるい」


などと口走った挙句、父さんと夜やって寝落ちして、朝起きてそのまままた父さんとやってお風呂入ってさらにやってご飯食べるという、マール時代でもやらなかった愚行に及んで、俺と父さんは家を出発するのが遅くなった。



 き、消えたい……………………







 初めての野宿だと思う。もしかしたらもうよく覚えてないだけで現世でやってたかもだけど。


 父さんから渡されたのは、ぱっと見ぺらぺらの布だった。


 くるまってみるとすごく暖かくてびっくりしたし、そのままいつの間にか眠っちゃった。




 なんだか、心地よくて、ふわふわしてて……


 おれ、ひさしぶりに、いいゆめがみれそうなきがするんだ。








仮に、成人向けでアクセルふかすとして、ミッドナイトとノクターン、どっちなんでしょう?

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