あがつま
*
吾が夫君やいざこなたへと
下り給いて告げ給え
天に乱るる我が魂の
かなしみ癒すことごとを
汝は常に慕わしく
さらに求むることもなし
我の心をとどめませ
さわに吉事を告げ給え
*
吾が妹君いざこなたへと
下り給いて告げ給え
あくがれわびる我が魂の
かなしみ癒すことごとを
汝は常に望ましく
絶えず心を誘い出す
我の心を結びとめ
とどめ置かましとこしえに
*
吾がつまやいざこなたへと
天降り給いて告げ給え
四方に乱るる我が魂の
癒しを我に告げ給え
恋愛風な詩。妻や恋人のことを妹と言うのは古語の用法で、今でも和歌なんかでは使われる使い方のようです。夫のことは「せ」と言います。「な」を付けた「なせ」や「なにも」は親しみを込めた言い方らしいです。
「つま」は今では女性の配偶者のことを言いますが、古語では男女問わず使われます。また三人称の「かれ(彼)」も、今では男性のことを指しますが、古語では男女問わず使われます。