二匹の猫
二匹の猫がおりまして
いつもいつでも一緒でした。
二匹は姉妹だったので
二匹で一緒に生きていました。
あんまり仲が良いもので
なんでも二匹でおそろいでした。
服も、持ち物も、やることなすこと
二匹はいつでもおそろいでした。
二匹の猫がおりまして
いつもいつでも一緒でした。
二匹は姉妹だったので
二匹で一緒に暮らしていました。
あんまり仲が良いもので
なんでも二匹で半分に分けました。
食べ物も、寝起きの場所も、使うものも
二匹はいつでも平等でした。
二匹の猫がおりまして
いつもいつでも一緒でした。
二匹は姉妹だったので
二匹で一緒に恋をしました。
もちろん仲良し姉妹ですから
恋も一緒に分けることにしました。
なんでもかんでも二人で共有
すべて世はこともなし。
けれどお相手の男の方は
二匹を平等に愛せませんでした。
「わたしは姉の方が好きだ」
ある日とうとう耐えられなくなり
二匹に向かって言いました。
姉は失望した顔をして
可愛い妹に言いました。
「我が妹。この男は駄目です」
妹は無言でうなずきました。
二匹は男の両手を引っ張り
男は別れて死にました。
二匹の猫がおりまして
いつもいつでも一緒でした。
次の恋も姉妹ですから
二匹で同じ人を選びました。
もちろん仲良し姉妹ですから
殿方にも同じ事を望みました。
なんでもかんでも二人で共有
すべて世はこともなし。
けれど今度もお相手の男の方は
二匹を平等に愛せませんでした。
「わたしは妹の方が好きだ」
ある日とうとう耐えられなくなり
二匹に向かって言いました。
妹はちらりと姉の顔をうかがって
彼女の機嫌を読み取りました。
「我が姉。この男も駄目でしょうか」
姉は無言でうなずきました。
二匹は男の両足を引っ張り
男は別れて死にました。
二匹の猫がおりまして
いつもいつでも一緒でした。
何度も何度も恋をしては
お似合いの男を探しました。
けれどどの男の人も
二匹を共に満足はさせられませんでした。
何人もの男が二匹に選ばれては
失望されて殺されました。
二匹の猫がおりまして
いつもいつでも一緒でした。
ある日一人のみすぼらしい男がやってきて
姉妹二人に求婚しました。
「私は何にもないけれど、かわりにこの身をささげます」
男は名無しの旅人でしたが
本当に二匹を平等に愛しました。
二匹は浮浪者を試すため
様々な課題を課しましたが
賢く強い男はすべて
課題をこなして求婚し続けました。
男が何もかも、すべてのことを
二匹と一緒に二匹とぴったり
わけて 共有して 行ったので
二匹はようやく満足し
男を夫に迎えました。
夫になった男は言いました。
「私はさすらいの旅人です。どうか妻になったなら、私と一緒に旅に出てくれませんか」
妻たちは了承しました。
三人は国を出て
どこまでもどこまでも歩いて行きました。
めでたし
めでたし。
……ここまでが皆様の知っているお話。
ここから特別に続きのお話をしてあげましょう。
三人で旅をするようになったある日の真夜中
突然妹は起こされました。
「どうしたの? 今日は姉の番ではないの?」
眠たそうに目をこすり首をかしげる妹に優しく微笑んだ影は
寝室に彼女を導きました。
妹はびっくりしました。
彼女のよく知っている人がそこで死んでいたからです。
どうすればいいのか迷ってから
結局わからず傍らの頼れる人を見上げました。
「どうすればいいのかしら」
「簡単なこと。いつも通り、半分こしましょう」
影がまったく普通にニコニコ笑って言ってくれたので
それもそうかと彼女は気を取り直しました。
ぴったり二つ 二人で死体を切り分けて
そっと地面に残骸を埋めました。
全部終わって綺麗にしてから
妹は困惑してまた首をかしげました。
「これからどうすればいいのかしら」
「簡単なこと。元通り、二人で全部わけて生きていきましょう。心配することはありません」
「でも私、どうすればいいのか何もわからない。今まで全部、姉に任せて従って生きてきたのに」
「かわいい妹。私が導いてあげるから大丈夫」
しょんぼり耳を伏せた妹に向かって、優しく両頬を包み、顔を寄せ、慈愛の微笑みを浮かべながら
姉を殺したただ一人の夫は、言いました。
「君は一人では何も出来ない哀れな子。姉が君をそういう風に作り上げた。自分の心の均衡を保つために、あの女は君から徹底的に搾取した。でも君は彼女のことを愛していた? 嘘だ。愛していたらあんなことはできない。姉を愛していたのなら君は私を憎み、報復に殺すべきだった。ところが君は従順に私に従った。君は誰が相手でもいいんだ。自分を導いてくれるのなら。君は何もない、愚かで空っぽな子だ」
ぼんやり夫を見上げるままの妻を彼は優しく愛撫しながら続けました
「妹――いいや、ルルセラ。初めて会った時から、私はそんな君がほしかった。けれどララティヤがあったから、私はずっと機会を待った。あの狡猾な雌猫が私に気を許すほんの一瞬の隙を待った。あれが生きている間はあなたは私のものにならないから。でももうあいつはいない、いないんだ。姉がいなくなってもあなたは何も恐れることはない。かわりに私を、私だけを頼ればよろしい。姉にしていたのとまったく同じように、あなたは私の言うことをすべて聞くのです」
ルルセラは考えようとしましたが、うまくいきません。
だって今までは半分こといって、全部姉が決めていたのですから。
彼女自身で何かをしろと言われても、姉が与えるものを姉と分け合うことで生きてきたのです。
自分で何かするときも、いつも姉の顔色をうかがって、姉の考えそうなことを考えて、その通りに従って生きてきました。
ほかの事をしろと言われても、困ってしまうだけなのです。
ですから彼女は、素直に従うことにしました。
「ではあなたのことは何と呼べばいいの?」
「我が夫と。我らが夫ではなく、我が夫、と。私はあなたを我が妻と呼ぶ。なんと素晴らしい! もう妻たちと呼ばずに済む。あなたは私だけのもの」
彼は彼女を抱きしめ、彼女は目を閉じました。
確かに彼の言うとおり、何も問題はありません。
二人で一つ。その相手が、姉から夫に変わっただけ。
口づけを受け入れた彼女の顔からは、もうすっかり不安の色はなくなっていました。
これで本当に、めでたし、めでたし。
さて。
お客人、そう不安そうな顔をなさいますな。どうせ何も出来ません。もう身体が動かなくなっているでしょう?
豪華な食事に豪華な寝床、一晩かけてもてなしてあげたし、誰も知らないお話まで聞かせてあげた。門出は十分祝ってあげたはず。
ご安心なさい。我々は何の問題もない。
さあこちらにおいで、可愛い我が妻。
今日も二人で
半分こにしようか。